第78話 ID
「……おい」
ヘッドギアを外し、勇気を睨む。
「どうやらアップデートが入ったみたいですね。変身系はステータスが変わるんで、変化なしで判断を難しくするのは公平じゃないと協会は判断したみたいですよ」
勇気が他人事のようにそう言う。
確かに、ステータスが変わるのに、それが不明なままなのは変身側に有利な仕様だというのは分かる。
シーカー協会がそれを問題と考え、修正したのも。
問題は……なんでそれを知ってる勇気が先に俺に伝えなかったのか?
である。
「その目、人のせいにするのはよくないですよ。アップデート情報にはしっかり載ってましたからね。なのでこれは、確認しなかったマスターの落ち度です」
……く、正論パンチ。
確かに、アップデート情報が出てるならそれを確認しなかった俺の落ち度ではある。
けど――
「俺に召喚されてるんだから、その辺り、もう少し気を利かせてくれてもいいんじゃないか?」
嫌がってるの分かってるんだから、もう少し気を使って欲しい物である。
「やだなぁ。それで死ぬわけでも無し。ゲームを続けてたらいずればれる可能性自体高かったですし、そんな時間の問題の事に一々気なんて使いませんよぉ。私みたいな鳥如きに期待しすぎですって」
「鳥如きって……自分の事、天才って豪語してなかったか?」
「それは戦闘の話です。それ以外は私、ただの可愛い鳥ちゃんなので」
「よくいうな」
なにが可愛らしいだ。
お前を可愛らしく感じた事は一度も無いっての。
「まあやらかしてしまった物は仕方ない」
「そうそう、これからは怪盗である事を前面に押し出していきましょう」
「する訳ねーだろ」
「でも、もうばれちゃいましたよ?」
「期待する!」
「何にです?」
「あの光ってシーカーが俺の事を言いふらさず、かつ、あの試合を誰も見ていない事に!」
試合は大量に行われているのだ。
視聴されていた可能性の方が低いはず。
たぶん。
きっと。
そうであって欲しい。
後は、あの光って子が周りに吹聴さえしなければ……
「ユメカラサメナサーイ!」
勇気が、なんか外国人っぽい片言になる。
「まったく、往生際が悪いんですから。言っときますけど、あの試合、100人ぐらい視聴者がいましたよ」
「……マジか?」
そんなに視聴者がいたのか?
あの短い時間で?
他にも、常に大量に試合があるってのに?
「当たり前じゃないですか。80以上は全体の数%しかいないんですから。高ランク帯の試合を見たいって層は、結構多いんですよ。むしろ、100人ぐらいならかなり少ない方です。なにせ、ワールドワイドなゲームな訳ですから。あ、因みに、視聴者の8割は日本人ですよ。日本人同士、かつ高ランクの対戦ですし飛びついたんでしょうね」
「く……」
おのれ暇人共め。
日本なんて狭い所に縛られず、もっと広い目で世界を見渡せよな。
つか――
「お前って、そんな所までわかるんだな」
ビュー数は兎も角、視聴者の地域まで特定できるって、もう完全に運営サイドですって言ってる様な物なんだが?
まあ突っ込んでも、適当にはぐらかされるだけだろうからしないけど。
「天才ですから!」
さっき戦闘以外は何もできないって言ったばかりなんだが?
舌の根の乾かぬうちにとは正にこの事である。
「まぁ……バレちまったものはしょうがないか」
いっそ大人しい振りは辞めて、もう暴れ倒すか?
いや、流石にそれはなぁ。
「そうですよ!ここは開き直って行きましょう!なんだったら、名前も怪盗Gに変えてしまいましょう!」
「いや、流石にそれは……ん?ちょっと待て?そうだ!名前を変えればいいんじゃないか!!」
このゲーム。
名前の変更は自由だ。
名前さえ変えてしまえば……
そう、名前がシャドーでさえなければ……
怪盗Gである事が露見した事はチャラだ!
「これでセーフだ!」
「あ、それは無理ですよ。だって、名前とは別にID振り分けられてますんで。IDの方で検索されたら、一発で見つかっちゃいますよ。試合履歴も見れますしね」
駄目だった。
くそが。
拙作をお読みいただきありがとうございます。
『面白い。悪くない』と思われましたら、是非ともブックマークと評価の方をよろしくお願いします。
評価は少し下にスクロールした先にある星マークからになります。




