第76話 脚光を浴びる
「よし!レベル80!」
Aランクダンジョンで魔物を狩り、レベルが80に到達する。
「おめでとうございます」
「おう、ありがとう」
Aランクと言えば、シーカーの中ではかなりの上澄みに分類される。
日本だと確か、全体の5%もいなかったはず。
世間一般的にいうなら、Aランクは一流と評される訳で……
つまり……俺の夢だった一流達成である!
とはならんが。
俺的一流はSランクだからな。
流石に、ユニークスキルがあると分かってたんだから、Aランクを目標にする訳もない。
「さて、スキルはどうかな……」
ステータスを確認する。
「お、なんか新しいのが増えてるな。テレパシーか」
【テレパシー】
対象と自在に通信可能になる。
電波の代わりとする事も可能。
「対象と自在に通信ってのは、勇気の使ってるのと同じだよな?まあそれは言いとして、電波の代わりってなんだ?」
「WiFi変わりが出来るって事ですよ。ほら、ダンジョンって電波が届かないでしょ?でもマスターの【テレパシー】を使えば、スキルで外から無理やり電波を引き込めるようになるんです」
ダンジョンはゲートを通って中に入る形で、電波類はそのゲートを越える事が出来ない。
そのため、中から外へ連絡する手段は直接出入する以外なかった。
だからライブ配信なんかは出来なかった訳だが……どうやら、俺の新スキルを使えば電話や動画配信できるようになる様だな。
因みに、ダンジョン内同士でなら、無線などでのやり取りは普通に可能となっている。
ゲートさえ越えなければ、電波は遮断されないから。
ボス狩りなんかだと、ダンジョン内で通信できるの生かして、行動を効率化してたりする。
巡回組がボス湧きを確認したらマジックアイテムで信号を送り、それをホールに待機している人間が受けて外に知らせ、メンバーを集めてボス討伐に向かうって感じで。
討伐人員全員で確認しに行ったり、湧き待ちしたりするのは効率が悪いからな。
「やりましたねマスター!これで人類初のダンジョン内ライブ配信が出来ますよ!」
「いやしねーよ。する訳ねーだろ」
怪盗として無駄に露出する気は皆無だ。
勇気だってその事を分かってるくせに……まったく、ふざけた奴である。
「おやそうですか」
「まあこれは使い道なしだな。ダンジョン内から連絡とりたい相手とかいないし」
【テレパシー】はハズレ一言に尽きる。
出来ればもっと戦闘向きのスキルが良かった。
それも火力アップ系の。
怪盗って翻弄するタイプのスキルが多くていいんだけど、火力は今一なんだよな。
まあシーフの進化系じゃ、仕方ないっちゃ仕方ないのかもしれないけど。
「怪盗化の方はどうだ?」
怪盗化もレベルが上がっていたので確認する。
敏捷、器用、魔力の補正がそれぞれ30にあがっており、そして――
「お、効果が増えてる。けど……【スポットライト】ってなんだよ?」
闇に潜む怪盗なのに、脚光を浴びるとかイミフ……いや、案外目立ちたがり屋も多いか。
漫画とかだと大概だし。
「効果は……天から光が降り注ぎ、周囲の注目を集める。まんまの効果だな」
流石に目立つだけのゴミ効果ではないだろう。
そう思い、鑑定で効果を詳細に確認する。
「敵からの敵意を強烈に引き寄せ、引き寄せた数だけ全能力が強化される……か。消費も少ないし悪くないな」
「敵に囲まれたときにラッキースケベと合わせて強化すれば、無双も夢じゃありませんね」
「そうだな」
大量の魔物に囲まれる状況自体そうそうないとは思うが、上手く嵌れば、勇気の言う通り無双できるかもしれない。
まあなんにせよ、少ない消費で強化を得られるだけでもありがたい。
「まあでもこれ……グーベルバトルでは使えんよな」
「なぜです?」
「対戦中、ずっと俺にスポットライトが当たるんだぞ?そんな馬鹿っぽいスキル、使いたくねーよ」
「我儘ですねぇ」
「これは羞恥心の問題だ」
きっとフルチンの勇気には分かるまい。
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