第72話 謎
ダンジョンとは一体何なのか?
そして、同時期に始まった人類の覚醒。
この2つを偶然の一致と考える者はいない。
『ダンジョンやシーカーはまるでゲームの様だ』
『これがゲームなら、それを生み出した存在がいるはず』
自然発生ではありえない不自然過ぎる現象に、人々が神に等しき存在の介在を疑うのは当たり前の事である。
そして世界中の知識人や研究者は、それを証明、もしくは否定しようと動き出す。
だが、30年以上経った今に至っても、それに関して核心に迫るものを未だ得られていなかった。
不自然と言えば、シーカー協会もおかしな部分が多い。
シーカー協会は、世界各国に多大な影響力を持つ組織だ。
その立ち上げ人は、アドミニスター・G・サーヴァント。
赤髪赤目の、国籍不明の美しい女性となっている。
彼女の経歴は完全に不明。
協会を立ち上げる際の膨大なコストが、どこから出資されたかも不明。
更に、世界中の政府との交渉経緯不明。
そう、何もかも不明のままシーカー協会は設立されているのだ。
当然そんなアドミニスターと、シーカー協会の謎を追う物も多かったが、その解明に成功した者はいない。
◇◆◇
今日はブーストポーションの待機日。
つまり休日である。
「シーカー協会から公式発表があるんだっけか。例のゲームの」
協会が製作した『グーベルバトル』の発売は来週だ。
今日は記事に載ってた物より詰めた内容が、動画で発表される。
俺はそれを見るため、アップされている動画を再生させた。
因みに、俺はこのゲームを買うつもりはなかった。
下手に登録してしまうと、スキルから怪盗Gの正体がばれてしまう恐れがあるためだ。
報酬は魅力的だけど、スキルを失うリスクは冒せない。
ランクアップポーションは死ぬほど欲しいけど、そもそも手に入れられるだけの結果を残せるかどうかも怪しいので諦めるしかないだろう。
「随分と綺麗な人だな」
動画の中には、シーカー協会発足人であるアドミニスター・G・サーヴァントの姿があった。
29年前に協会を立ち上げた人物なので、年齢はどれだけ若く見ても50近くの筈。
だが画面内に映る彼女の姿は非常に若々しい。
でかいな……
どこがとは言わないが。
マーベラスとだけ言っておく。
『シーカーの諸君!我々協会は諸君らに新たなステージを用意した!!』
マイクを手渡された協会長アドミニスターが大仰に手を振り、そう宣言する。
そのさい胸元がぶるんと揺れたが、俺はそんな事が気にならない程の衝撃を受けた。
何故なら、初めて聞いたアドミニスターのその声は――
俺は横にいる勇気へと視線を向ける。
すると彼は俺の視線に、笑顔でこう答えた。
「禁則事項です」
と。
「……」
俺が勇気の方を見たのは、アドミニスターの声が瓜二つだったらだ。
バーサーカー・ラーテルの祭壇で聞いた女性の声と。
……そういや、勇気は身分証なしでシーカー証を作って来てたな。
てっきり勇気の能力だとばかり思っていたが、どうやら……
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