第71話 リターン
Aランクで狩りを始める事1週間。
既にレベルは77まで上がっており、レベル上げのリアルタイムアタックがあったら世界記録待ったなし状態となっていた。
いやまあ、もしかしたらもっと高速で成長してるやつがいる可能性もあるけど……
「グオオオオオ!」
赤色をした巨体のオーガが大剣を振り上げ、俺に向かって振り下ろしてくる。
コイツの名はオーガバトラーレッド。
レベル75のボス、オーガ三兄弟こと、信号機どもの1体だ。
「グオウ!」
こん棒を避けた俺に、黄色いオーガが槍を突き込んでくる。
こいつはボスその2。
オーガバトラーイエロー。
こいつに加え、青色のオーガ3体を同時に相手取るのがオーガ三兄弟のボス戦である。
特徴的には巨体の赤がパワー。
少し小柄な黄色がバランス。
そして、大男サイズの青がスピードタイプとなっている。
信号機呼ばわりされてるのは、まあ説明はいらないよな。
因みに、青は勇気が相手している状態だ。
「ふっ!」
槍を躱しつつ、間合いを詰めてダガーを叩き込み。
そしてそこらに生えている石柱にワイヤーを飛ばして間合いを離しながら、黄色の体にカードを打ち込んでやる。
相手は2体だが、こいつらの強さはラーテルを3体同時に相手した時の比ではない。
単純に強さが上なのもあるが、バフの差も大きい。
あの時は11重にかかってたからな。
だが現在はオーガ3体と、勇気への4重だけだ。
なので、俺の能力は、ラーテルと戦った時とは比べ物にならないくらい低い。
ボス前に、事前に雑魚に掛けて放置しておけばバフかけ放題出来るんじゃ?
残念ながらそれは出来ない。
対象との距離がある程度開いてしまうと、俺にかかっているバフ効果だけ消える仕様だからだ。
何故かデバフはそのままに。
これは某戦闘民族宜しく、『皆の元気をおらに分けてくれ!』を出来ない様にするためだそうだ。
by勇気談。
因みに、ラーテルの時は、あいつら消えてはいたけど祭壇にいた扱いだから呼びなおしなんかで消えることが無かった。
「ああくそ、やっぱ無理か」
マップに表示されている、近づく青い点を見て、俺はオーガ共と戦いながらそう吐き捨てる。
青い点はシーカーの表示だ。
真っすぐボスに向かっている事から、ボス確認のためのギルドの巡回あたりだろうと思われる。
討伐開始時点で、向かって来てるっぽいシーカーがいるのには気づいていた。
だが2時間も――進行速度から、到着にはそれ以上かかると予想していた――あれば倒せると考えていたので安心していたのだが、オーガ共の生命力が想像以上だっため、結局それまでに倒す事が出来なかった。
シーカーが来たら何かまずいのか?
ボス戦に関しては、ぶっちゃけ早い者勝ちだ。
占有権の主張なんて物は通らない。
が、自分達の狙っているボスを横取りされて、それを喜ぶギルドがあるはずもなく……当然、討伐を見られれば睨まれる事になる。
まあ睨まれるのは100歩譲って構わない。
問題は、そう、問題は――怪盗ダブルGの名が世に再び浮上するリスクだ。
せっかくもうネットで見無くなってってのに、こんな所でボスのソロ――いや、勇気もいるから召喚だって知らない人から見たらペアか。
何にせよ、少人数でボス狩りしてる姿を見られたらそうなる可能性は高い。
「さっさと死ねよ!くそがっ!」
ボスオーガの討伐は、この後1時間程かかった。
そして当然の様に、怪盗ダブルGの名がネットに上がる事になる。
あー、火力ほっしいなぁ。
火力さえあれば人に見られず処理できたってのに。
まあ無い物ねだりか。
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