第59話 秘密
『バーサカー・ラーテルの、特殊討伐報酬が確定しました。三つの中からお選びください』
少し待ったところでアナウンスが流れ、俺の目の前に青いパネルが浮かぶ。
その中には3つの選択肢が提示されていた。
「これ……タッチパネルみたいに触って選べばいいのか?」
「ええ。好みの選択を、もうこれでもかってぐらい突っついてやってください」
八咫烏に聞くと、なんかいかがわしく聞こえる返答が返って来た。
その辺りはスルーして、俺はどれを選択するか考える。
「ふむ……」
選択肢1。
大量の経験値。
選択肢2。
ランダムアイテムボックス(プラチナ)。
選択肢3.
経験値とランダムアイテムボックス(ゴールド)。
「経験値は自分で稼げばいいだけだからな。まあプラチナのランダムアイテムボックス一択か」
ブーストポーションが無ければ迷うところだが、あれがある以上、経験値よりアイテムを優先した方が良いに決まっている。
という訳で、俺は2番目を選んだ。
「いい物が出るといいですね」
選択肢を選ぶとパネルが消え、目の前に白く光る宝箱が出現した。
「さて、何が出る……いや、その前に鑑定だ」
「お、慎重ですねぇ」
そのまま宝箱を開けようとしたが、罠の存在が脳裏を過ったので、俺は手を止め鑑定を先にした。
まあ報酬で出てきた宝箱が人食い箱やトラップって事はないとは思うけど……念のためな。
「何々……ランダムで通常では手に入らないアイテムが手に入る。で、開封5秒後に……超爆発……って!罠あんのかよ!」
クエスト(?)報酬の宝箱を開けたら大爆発とか、どんだけ油断ならねぇんだよ。
これがゲームなら完全にクソゲー待ったなしだぞ。
念のために確認しておいてよかったわ。
「安心してください。爆発するって言っても、この特殊空間を消滅させるための爆発みたいですから」
「いや、全然安心できないんだが?」
50メートル四方の空間を消滅させるとか、中にいる俺達も確実に死ぬじゃねぇか。
「あくまでも空間だけを破壊する特殊な物で、私達には影響はありませんよ。だいたいここは転移も効かない牢獄みたいな場所なんですから、壊して貰わないと私達も出れないじゃないですか」
「中にいる人間に影響しない、空間だけを破壊する爆発ってそんな無茶苦茶な……いや、出来るのか」
誰がどうやってるのかは知らないが、急に俺を閉鎖空間に飛ばしたり、魔物を大量に出したりできる様な相手だ。
確かにそういう物理法則ガン無視っぽい事をしてきても、おかしくはないのかもしれない。
そもそも、シーカー自体既存の枠からはみ出したデタラメな存在って言われてるしな。
「しかし……お前、本当に良く知ってるな。何者なんだ?」
「私ですか?私はただの召喚された八咫烏ですよ。それ以上でもそれ以下でもありません」
八咫烏が鳥の姿に戻り、小首を傾げた。
どうもその辺りの質問には、一切答えてくれる気はない様だ。
「あ、因みに……私は足が三本ありますが、実はこの足――」
八咫烏には足が三つある。
その内、真ん中の足を勇気が動かす。
「男性器です」
「は?」
「あ、女体化はカラスに戻った時点で解けてますよ。だから残念ながらふたなりって訳ではないんですよ。そしてこれは――」
勇気が誇らしげに羽根を広げ、見せつけるかのように真ん中の足を動かす。
「ちんこです!」
「そ、そうか……」
足の内一本が性器とか……タコかよお前は。
「開けよう」
俺は勇気の果てしなくどうでもいいカミングアウトを流し、宝箱に手をかけた。
さて、どんなアイテムが出るのか。
クラスアップポーションとかだと激熱なんだが……
だって怪盗辞められるし。
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