第55話 召喚
「ちっ!」
ジャンプしたラーテルに囲まれた状態。
宜しくない状況を脱するため、俺はワイヤーをそのうち一体に飛ばし、ゼログラヴィティからの引き寄せで自ら突っ込んだ。
そして相手と接触する直前に、ミステリアスで物理干渉を0にしてそのままラーテルの体をすり抜け包囲を抜ける。
『『『『『『キシャアアアア!』』』』』
奴らは尻尾を天井に叩きつけ、即座に俺を追って来る。
再びスカンクバスターをかましてやりたい所だが――
「くそ、スカンクバスターは思ったより再使用時間が長いな」
相手の動きを止める効果。
それに火を放つことで起きる大爆発のダメージ。
攻防一体と言ってもいいスキルではあるが、その再使用までの時間は長めであるため連発は行かない。
まあ仮にクールタイムが短くても、消費SPが重めだから気軽に連発は出来なかったろうが。
つまり、逃げ回りつつ、オナラからの爆破だけで戦うのは無理があるという事だ。
「お前だ!」
壁を蹴り、ワイヤーを使って地面に着地。
それを追って、ラーテルの群れが襲い掛かって来る。
その中の一体。
明らかに動きが優れているラーテルに、俺はラッキースケベをかけた。
動きがいいのは、デバフを受けていないからだ。
コイツにデバフをかけつつ、俺自身を強化する。
「アイテムも頂くぞ!」
ラッキースケベからのスティールを決める。
そんな事をしている余裕があるのか?
ない。
が、だからこそするのだ。
有効なスキルブックが出るかもしれないし、ハズレでもグレートジャーキーが手に入るから。
長期戦確定な時点で、回復アイテムは重要だからな。
『キシャアアア!』
「クイックステップ!」
更に短剣で切りつけた所でカウンターが飛んで来たので、それをクイックステップで躱して間合いを開ける。
「ちっ!マジかよ!」
ラーテルが追いかけて来る。
但し、3匹だけだ。
残りの7匹は、俺を追わずに周りに広がって行く。
―—逃げ回る俺を、捕らえる為の布陣。
小学生のサッカーのみたいに獲物を全員で追えよ!
くそが!
魔物が頭を使ってんじゃねぇ!
「最悪だ!」
全てが一直線に追いかけて来るなら、最小限の消費で逃げつつ攻撃も出来た。
だが、包囲されれば回避に多くのSPとMPを裂かざるえない。
バフでかなり強化されているとはいえ、囲んでくるラーテルの攻撃を立ち回りだけで捌くのは無理ゲーだから。
「お前らそんなに俺が嫌いかよ!」
『『『『『『『『『『キシャアアアアアア!!』』』』』』』』』』
同時に返って来る返事。
どうやら俺が大っ嫌いな様だ。
俺もお前らが大っ嫌いだ。
「くそっ!」
可能な限り囲まれないよう、俺はワイヤーアクションをフル活用して立ち回った。
能力が上がってるのもあって、回避に専念すれば対処できる。
だが今のままではじり貧だ。
攻撃チャンスが少なすぎる。
「ラッキースケベも当てにできなくなっちまった」
ラッキースケベを使った、ラーテルの攻撃をラーテルで防ぐ防御方法。
肉壁。
それに問題が出てしまう。
初回こそ戸惑ったラーテル達だったが、2回目以降はそれに対応して即座に攻撃してくるようになってしまったのだ。
なのでこの手はもう使えない。
「あれを使うしかねぇ」
出来れば使いたくはなかった。
だが仕方ない。
生きるか死ぬかの瀬戸際で、うだうだ迷ってる暇などないのだ。
「スカンクバスター!」
俺はスカンクバスターでラーテル達を怯ませ、その隙にスキルを発動させる。
レベル60で習得したスキル。
―—【八咫烏召喚】を。
このスキルは下僕となる八咫烏を召喚するスキルだ。
召喚された八咫烏は俺の半分のレベルであり、戦闘補助をメインにする存在となっている。
レベルが低いので、戦闘力はそれ程期待はできないだろう。
だが今は猫の手も欲しい状況である。
ほんの僅かでも敵をかく乱してくれれば十分だ。
「くっ……」
召喚を発動させた瞬間、体の中から何かが抜けていく感覚に襲われる。
これは命が削られる感覚だ。
何故なら、サモンサーバントに必要なコストはSPでもMPでもなく――寿命だからだ。
十年分の寿命。
それが八咫烏を召喚するために必要となるコストだ。
だから俺は習得しても使わなかったのである。
……10年も寿命を削ってまで、サポート役なんかを誰が呼び出すってんだよ。
こんな状況でもなければ、俺は一生このスキルを使う事もなかっただろう。
「呼ばれて飛び出てじゃじゃじゃじゃーん!」
魔法陣から三本足のカラスが飛び出てきて、状況にそぐわぬ気の抜けそうな声で叫ぶ。
こんな頼りなさそうな奴を呼ぶために寿命を十年払ったのかと思うと、めまいがしてくる。
頼むから、しっかり仕事をしてくれよ……
拙作をお読みいただきありがとうございます。
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