第54話 爆炎!
死ぬ。
俺はここで。
せっかく順調に行ってたのに、無駄に欲張ったせいで。
『7』
魔物になぶり殺しにされるぐらいなら、いっそ自害した方が……
「って、何を考えてるんだ俺は!」
両頬を両手で強く叩く。
弱気から生まれるバカな考えを追い出すために。
「まだ死ぬと決まったわけじゃねぇ!」
幸い、バフの重複で能力は大幅に上がっている。
10対同時だろうと……いやどう考えても無茶だよなぁ。
けど、やるしかないんだ。
できなきゃ死ぬだけだ。
『6』
死へのカウントは無情に進んでいく。
いや、逆に考えろ。
いきなり襲われていたなら、なす術もなかった。
覚悟を決め、少しでも考える時間があってラッキーだっと。
考えるんだ。
勝つために頭を使え。
『5』
まずは雄叫びを何とかしないと……
ラーテルの初動は決まっている。
弱化付きの雄叫びだ。
喰らえば勝利が遠ざかってしまうし、最悪……効果が重複したら、それだけで死亡が確定しかねない。
なのでこれを喰らう訳にはいかなかった。
『4』
じゃあどうする?
このそれほど広くない空間では、範囲の外に逃げるのは無理だ。
ミステリアスは物理、魔法攻撃に無敵になれるが、雄叫びのような範囲でデバフまで無効に出来るかは未知数。
試したことが無い。
この状況でこれだけに頼るのは、いくらなんでも一か八か過ぎる。
もう一手何かが欲しい。
『3』
相手の行動を阻害する方法があれば良いんだが、単体スキルのラッキースケベでは良くて数匹だ。
何かいい手は……
『2』
そうだ!
アレを使えばひょっとしたら!
思い立った俺は、ミステリアスホールからスキルブックを取り出した。
―—スカンクバスターだ。
これには周囲に悪臭を放ち、敵を嫌な気分にさせる効果がある。
獣系は総じて鼻がいいので、上手くいけばこれで雄叫びを妨害できるかもしれない。
「こんなんでも!」
スキルブックを使う。
駄目元だ。
上手く行けば大儲け。
『1』
「これでも喰らえ!」
カウント終了間際、俺はスカンクバスターを発動させる。
と同時にミステリアも使う。
効かない可能性もるので、保険として。
『0』
7重クリティカル!
『『『『『『『『『『ギャアアアアアアアオウ!!』』』』』』』』』』
雄叫びを上げようと息を大きく吸い込んだバーサーカー・ラーテル達が、鼻を前足で押さえて苦悶の声を上げる。
おなら作戦大成功だ。
つか、オナラにもクリティカルのるのかよ。
ひょっとした、上手く妨害できたのはクリティカルのお陰なのかもしれない。
「ふっ!」
消費の大きいミステリアスを即座に解除し、ワイヤーアクションで俺は天井に逆さになって着地。
そして下方に向けてカードを投げた。
属性付き。
火の。
オナラにはガスが含まれている可能性がある。
それなら引火して一気に燃え上がるず。
まあスキルで生み出した物だから駄目な可能性はあるが、ダメ元だ。
「燃えろ!」
俺はカードに籠った火属性の効果を発動させた。
その火が俺のオナラに引火し、爆音とともに大爆発する。
7重クリティカル!
「思ったより盛大だな。正にガス大爆発だぜ」
上手く行った。
しかも予想以上の破壊力である。
『『『『『『『『『『キシャアアアアア!』』』』』』』』』』
爆発の中から、ラーテル共がジャンプして一斉に飛び出してくる。
全身は焦げており、その顔は怒りに歪んでいた。
何とか初動は潰せたけど……勝負はここからだ。
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