第51話 奴はとんでもない物を盗んでいきました
「ギュアアア!」
おっぱい揉んでスティールしたら、怒ったのかラーテルが雄叫びを上げて攻撃してきた。
うんまあ、そりゃ怒るよな。
「ぐっ!?つうっ!?」
ラーテルの前足の一撃は超高速だった。
通常の回避ではとても間に合わない速度である。
だが、ミステリアスやクイックステップを使えば一応回避可能な範囲ではあった。
だけど俺はそれ選ばす、その一撃を敢えて交差した両腕でガードする。
「いってぇぇ……」
ラーテルの一撃はとんでもなく重い。
受け止めきれずに、その衝撃で俺の体は軽く十メートルは吹き飛ばされてしまった。
ダメージ99%カットにもかかわらず、受け止めた両腕がへし折れそうなほど痛い。
「ラーテルは火力が高いって書いてたけど、ここまでかよ。こりゃタンカーじゃないと絶対攻撃は受けれんわ」
腕で受けてこれなのだ。
胴体に受けたら悶絶。
頭部に受けたら、下手したら気絶だってあり得る。
「こりゃまあ勝てんな」
基本の速度が此方より早いとはいえ、奴の攻撃はスキルを駆使すれば躱せなくもないレベルだ。
なら戦えるんじゃないか?
無理。
ボスって基本くっそ高HPだからな。
たぶん、俺の火力だと余裕で1時間はかかる。
スキルで回避しまくったらSPMPはとても持たんし、それがどうにかなっても、この火力とスピードの相手にミスせず1時間も戦える自信がない。
という訳で、ここはトンズラ一択だ。
ま、最初っから分かってはいたけどな……
ラーテル討伐の推奨人数は、ノーマルクラスユニークスキルなしで30人って所だ。
レアクラスやユニークスキル持ちが混ざってくれば人数はぐっと減らせるだろうが、こいつとタイマンは頭のおかしい奴か、ヒーロークラスかつユニークスキルを持ってる奴。
もしくは、とんでもなく強力な装備を身に着けてるとかだけである。
怪盗も相当強いとは思うが、純粋な戦闘職って訳じゃないからな。
所詮はシーフの上位クラス。
【幸運】があるとは言え、ラーテル相手にソロ討伐は現実的ではない。
「キシャアアアア!」
少し動きの止まっていたラーテルが突っ込んで来た。
動きが止まっていたのは、トリプル以上の幸運ガード時に発生した反射ダメージのせいだろうと思われる。
「ごめんなさい!貴方とはお付き合いできません!」
突っ込んで来たラーテルちゃんの愛の告白を華麗に断り、俺は神出鬼没で安全圏へと高跳びする。
アデュー。
君にはもっとお似合いのシーカー君がいるだろうから、ド付き合いはそっちでお願いね。
「さて……」
俺はくすねたスキルブックを、ミステリアスホールことインベントリさんから取り出し鑑定する。
さーて、どんなスキルかな?
「スカンクバスター……」
効果。
周囲に悪臭を放ち、嫌な気分にさせる。
「こんなもの……いるっっっっっっっっっっっっっっっっっっかーーーーーーーーーーーーー!!!」
は!
余りの糞効果についつい叫んでしまった!
いやまじなんだよ、このゴミスキルは。
それでなくとも世間様に俺は変態ゴキブリ野郎呼ばわりされてるんだぞ。
この上悪臭まで放ちだしたら完全に汚物じゃねーか。
ぜってー覚えねーからな。
「はー、つっかえねぇ。ま、所詮は低ランクのスキルブックか……」
ボスなどから手に入るスキルブックだが、どういった物を落とすかはランダムだと言われている。
だから未鑑定品は安いのだ。
因みに、ランダムとはいっても、完全なランダムでないと言うのがシーカー協会の見解だ。
高ランク帯程良い物が出る傾向が強く、低ランク程ゴミスキルである可能性が高いから。
あと、ボスドロップなんかは、関連している物が出やすいってのもある。
今回も獣系のバーサーカー・ラーテルから、スカンクバスター、要は獣系のスカンク関連を手に入れているしな。
「こんなんでも、未鑑定品として売りに出したらそこそこの値段はつく訳だが……」
いい物が当たる可能性に賭けて、ギャンブルするシーカーは普通にいるからな。
「とは言え、だ」
ゴミとわかってる物をそこそこの値段で販売するのは流石に良心が痛むというもの。
まあひょっとしたら、『やったー!くっさいオナラするスキルだ!これが欲しかったんだよ!これが!』的な相手の手に渡る……まあ、そんな訳ないよな。
「しょうがない。捨てるのもあれだし、とりあえず仕舞っとくか」
死蔵!
そう、まさに死蔵である!
「あ、結界が消えた」
どうやら結界内部に人がいなくなると、全滅扱いになる様だ。
これで色々なボスからアイテムを盗めるよ!
やったね!
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