第50話 優先権
「ふ……」
買い物終了後、一旦家に帰り、俺はおにゅうの装備を身に着け姿見で確認する。
新しく買ったのはミスリルブレストと、ミスリルダガーだ。
―—ミスリルブレスト。
魔法金属であるミスリルで作られた胸当て。
魔法効果によって、全身の防御力が上がる。
超お高い。
―—ミスリルダガー。
ミスリルで作られた短剣。
魔法短剣と同じく、属性魔石を嵌めると属性攻撃が可能。
2点合わせたそのお値段は、税込み一億一千万円である。
え?
金銭効率が悪いダンジョンで、よくそんなに金が稼げたな?
アニマルダンジョン最強の魔物、獅子丸のレアスティールが一個800万で売れるからな。
確変10回分をそっちに回すだけで8千万。
ドロップ20倍も含めて考えれば、その程度は余裕で稼げてる。
因みに、ライオンタイプの魔物である獅子丸のレアスティールの確率は0,1%程しかない。
金銭期待値にすると、一匹たった8千円ぽっちだ。
まあ魔石やレアドロップもあるから実際はもっと高いが、それでもCランク最高峰と考えると、その金銭効率はしょぼしょぼである。
「いかにも腕利きって感じだな」
一旦家に戻って、俺はミスリル装備を身に着けた。
そしてその姿を、姿見で確認する。
鍛え抜かれた身体つきと合わさって、ミスリル装備の俺は超カッコイイ。
「この雄姿を誰にも披露出来ないのが残念で仕方ない」
戦う時は不審者に変身して戦ってるからな。
「じゃ、行くか」
名残惜しいが怪盗へと変身。
そして神出鬼没を使い、事前にボス前に移しておいたマーカーへと転移する。
「よし、周りに人はいないな」
マップ鑑定で周囲に人がいない事を確認してから、俺は草原のど真ん中にある遺跡あとの祭壇の前に立つ。
ダンジョンボスは大まかに分けて2タイプいる。
時間湧きと、条件を満たす事で召喚して戦える様になるタイプだ。
時間湧きは倒してから一定時間が経つと自然と湧いてくるタイプで、ボス部屋などに姿の見える形で陣取っている。
で、条件を満たして召喚するタイプは、当然だが召喚するまで姿を見せない。
このアニマルダンジョンのボスがそのタイプだ。
アニマルダンジョンのボスの召喚方法は、条件を満たして祭壇に手を置くだけでいい。
そしてその召喚条件は――アニマルダンジョンの魔物を1,000匹狩る。
である。
1日50匹なら20日。
1日100匹なら、条件を満たすのに10日かかる感じだな。
パーティーで狩りをしている場合は、狩りカウントは頭数で割られるそうなので要注意である。
因みに、カウントの確認方法はない。
自分でふわっと数えておこう。
それと一度呼び出すと、呼び出した人間と、討伐に参加した人間のカウントはリセットされるみたいなので、複数人で回して連続討伐ってのは出来ない。
こいつに人気がないのは、まあこの辺りも関わってるだろうな。
「さて、呼び出すか」
俺は祭壇に手を置く。
千匹狩りとか余裕で達成済みなので、手を置いた瞬間祭壇が輝き――
『きゅああああああああ!』
と、甲高い声が響いた。
「鳴き声うっせぇな」
周囲に結界が張られ、そして頭上から黒く毛むくじゃらな獣が落ちてきて、祭壇の向こう側に着地する。
アニマルダンジョンボス。
バーサーカー・ラーテルの登場である。
サイズは象くらい。
一応念のため幸運鑑定で確認してみたが、協会の情報ページに乗っているものと大差なかった。
「やらせねぇよ!」
ラーテルが後ろ脚二本で立ち上がり、息を大きく吸い込んだ。
それに合わせて、俺はラッキースケベを発動させる。
コイツは最初、咆哮ってスキルを使ってくるからな。
方向は全方位デバフで回避不能。
喰らうとステータスが下がるいやらしい攻撃である。
なので俺はこのスキルを、ラッキースケベでキャンセルしたって訳だ。
そう!
スケベは全てに優先されるのである!
「スティール!」
更に確率変動からスティール。
スキルブックゲットだぜ!
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