第49話 卒業
刃の下に心と書いて忍び。
忍者漫画で見た言葉だ。
良い言葉である。
怪盗も忍者みたいなものなので、厳しい現実に耐え忍び、俺は無心で狩りを続けた。
人の噂も七十五日って言葉もあるし、しばらくすれば人々の心から怪盗ダブルGも消えてなくなる筈。
そう信じて。
そうして狩りを続ける事1か月。
おれはレベル70へ到達する。
「ブーストポーションなしだと8年程の計算か。いやマジでポーション様様だ」
スライムさん愛してる!
「さて、もうこのアニマルダンジョンからは卒業だな」
Cランクのダンジョンはシーカー人口が最も多い場所ではあるが、このアニマルダンジョンは人気がない方だった。
経験値効率が高く、その反面、金銭効率が余り宜しくないからだ。
Cランクダンジョンに来るシーカーの大半がお金が目的である以上、経験値効率ダンジョンが過疎るのも無理からぬ話だろう。
それでもここでそこそこシーカーを見かけるのは、俺の様に上を目指す若者がいる為である。
「さて、このダンジョンで最後にするのは……」
そう、お待ちかねボススティールだ!
ここのボスはスキルブックを盗めるのはもうわかってるので、例のせこ技を使って美味しく頂かせて貰う。
え?
出て来たボスはどうするのか?
もちろん倒すさ。
出来れば。
だけどな。
まあやってみて勝てそうなら倒す。
無理そうなら諦めて放置だ。
マナーがなってない?
Gカップ巨乳好きの変態ゴキブリ野郎にマナーも糞もあるか!
というのは冗談で。
うん、半分冗談で。
ぶっちゃけ、ここのボスは人気がない。
一月半程狩りをしていて、ボスが狩られたのは一度っきりだ。
俺はマップでダンジョンの様子や魔物の分布が分かるので、誰かがボスを沸かしたらその時点で分かる。
そんなペースのボスが潰れたからって、たいして不満は出ないだろう。
と思う事にして、やってやる事にしました。
「まずは装備を買いに行くか」
一応倒せそうなら倒す。
そういう予定なので、先に装備を更新しに行くことにする。
特に防具は重要だ。
思ったより強いダメージを受けて、万一気絶とかした日にはあの世行きだからな。
ちゃんとした物を身に着けないと。
高い装備を買う金はあるのか?
余裕。
アニマルダンジョンは金銭効率が悪いといわれているが、それはあくまでも、一般シーカーのお話である。
こちとら、【幸運】の効果でレア含めたドロップ率が20倍以上になってる訳だからな。
更に確変によるレア確定も。
なので、金銭効率は他の追随を許さないレベルだ。
「さーて、買い物に行くかぁ」
購入予定はミスリル装備だ。
それらの上級装備を身に着けた自分の姿を思い浮かべる。
そしてそれを強制的に変質者に変える怪盗化。
「うん、まあカッコよくはなれんわな」
どこまで行っても不審者。
それが俺だ。
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