第4話 期待大
――ダンジョン突き当り。
「やっぱ10じゃレベルは上がらないか」
ダンジョンの突き当りまでに、10匹のスライムを倒して来た。
レベルは3に上がり、手に入れたステータスポイントで幸運を8から10に上げている。
キリの良い数字でスキルレベルが上がってくれる事を願っていたのだが、残念ながらそうはいかなかった様だ。
「まあでも……クリティカルの確率は悪くない」
幸運8から10の状態なら、クリティカル発生率は3%前後だと思って貰えばいいだろう。
なので、だいたいスライム33匹程中一回出ればって感じな訳だが……
実は10匹中、もう既にクリティカルが2発も出てたりする。
確率で言うなら20%。
つまり……【幸運】の効果は6倍以上!
だったらいいなぁ、とか思ったり。
うん、ほぼ願望だ。
因みに、幸運は感覚で出たってのが分かるので、気づかずカウント漏れなんかは起きない。
「まあ試行回数が少ないから、上振れただけの可能性の方が高いよな」
確率を確定させるのには、相当数の試行回数が必要になる物だ。
取りあえず、俺はレベル5まで上げていく。
「これは……期待してもいいんじゃないか?」
スライムを叩き続ける事3時間。
50匹ほど倒したところで俺のレベルが5に上がる。
魔物から経験値を得られるのは4レベル上までなので、レベル0のスライムからはもうこれ以上経験値を得る事は出来ない。
なのでこのダンジョンは卒業である。
因みに、スライムからは何もドロップしていない。
こいつらは何も落とさないのだから当然だ。
それはアイテムを盗むスティールでも同じで、何も盗めない様になっている。
因みに、シーフがスティールを覚えるのはレベル10だ。
「幸運の効果に」
スライムを50匹狩って、その間に出たクリティカルの回数は8回だった。
50分の8。
つまり、その発生確率は16%。
俺の幸運だと本来は3%程のクリティカル率なので、約5倍以上の確率で発生している事になる。
「まあ試行回数の少なさから上振れてたとしても、結果が5倍以上ってなると期待してしまうよな」
もしレベル1の効果が5倍で、レベル5で10倍とかになるのなら、夢が広がりまくる。
なにせ幸運を30程度振るだけでクリティカル率90%に、60%の確率でダメージ大幅カットだぜ?
そうなりゃ、一流シーカーに名を連ねるのも夢じゃない。
「とりあえず……今日は帰って、明日は次のダンジョンでレベル上げだ」
敵が弱かったのでたいして疲れていないが、初心者のステップアップ用の次のダンジョンは結構遠くにある。
なので今日はここで切り上げて、明日朝早く出発する事にしよう。
「そうだ。父さん達の墓でも寄ってくか」
俺の両親は2年前に亡くなってる。
交通事故で。
で、その後1年ほど高校卒業まで伯父の家に世話になり、今は一人暮らしだ。
「結局、二人にも話せずじまいだったからな……俺のユニークスキルの事」
両親にも話してなかったのか?
ああ、話してない。
親ってのは子供の自慢をしたがる物だから、親にも話してはいけないとアルマイヤさんに忠告されてたからな。
まさか俺も、覚醒前に二人が死んでしまうなんて夢にも思わなかったし。
「父さんと母さんに報告しないとな。俺のユニークスキルが、スッゴク期待できるものだって」
因みに、伯父に連絡を入れるつもりはなかった。
1年間世話になった相手ではあるけど、伯父にはよほどの事が無い限り連絡してくるなって言われてるからな。
ま、いわゆる迷惑な居候だった訳だ。
俺は。
当然目に見えた冷遇もされてた。
でもまあ、それも仕方ないと事ではある。
急にでっかい甥っ子が転がり込んで来たら、そりゃ迷惑だもんな。
だから伯父が冷たいとかの理由で、恨んだりする気はない。
「財産を取られなかっただけよしとしないとな」
両親は、多額の保険金を残してくれていた。
結構な額なので、あくどい奴ならそれを少しでも奪おうとしてただろうけど、伯父はそんな事一切しなかったからな。
そういう点では、良識のある人ではあったのだ。
「さーて、明日もバンバンクリティカルだすぞ!」
ホントに出まくったらいいなぁ。
そんな事を考えながら、俺はダンジョンを後にするのだった。
拙作をお読みいただきありがとうございます。
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