第43話 大失態
「さて、レベルはいくつ上がったかな?」
ボスではないとは言え、相手はレベル80の魔物だ。
かなりの経験値が貰えたはずなので、きっと10レベル以上上がってるはず。
そう思って自分のレベルを確認すると――
「し、しまった!やっちまった!」
頭を両手で押さえ、俺は絶叫する。
―—そこで自分の失態に気づく。
「やらかしたやらかしたやらかした!」
やらかした!
そのあまりの愚かさに悶絶し、俺は地面に倒れてゴロゴロと転がる。
まさかこんな愚かなミスを俺が犯すとは……
「くっそー、テンション上がり過ぎて完全に見落としてた。俺はなんて愚かなんだ」
昨日はクールタイムだった。そして今日は、特殊なモンスターからアイテムを盗んでから狩りに行くつもりだった。
そう、キルウォールを倒す気はなかったのだ。
だから俺は――
ブーストポーションを使ってなかった。
「必要経験値10倍状態で3レベル……ブーストポーションさえ飲んでたら、20個近く上がってた可能性も……ああ、俺のバカバカバカ!」
痛恨のミス。
その悔しさがぶり返し、俺はまた発狂する。
「はぁ……はぁ……まあいい。もう済んだ事だ。れ……レベル何て別に普通に上げればいいだけなんだからね!」
ツンデレ風に強がってみた。
「うん、気持ち悪いな」
黒衣の怪人姿でツンデレごっことか、他の人間が見たら不気味以外何物でもないだろう。
「まあ今はスキルブック2冊と……」
インベントリから本を取り出す。
「この本を手に入れた事を喜ぼう」
俺の勘が、この本はスキルレベルアップの書だと呟いている。
だって表紙のマークがこの前手に入れた奴と同じだから。
「鑑定、と」
取りあえず鑑定して確認。
「よし!予想通り!」
宝箱から手に入れた本は、やはりスキルレベルアップの書だった。
これで【幸運】をもう一レベル上げられる。
「ばれたら消滅って条件がないんなら、【怪盗化】に使うって手もあったんだけどな」
ちょっとしたミスで全ロストしかねないスキルに使うには、あまりにもリスキーだ。
その点【幸運】なら、正体がばれて消える様な心配もない。
「スキルブックはどうだ。当たりだと良いんだけど」
次いで、キルウォールから手に入れた2冊を鑑定する。
「一個は当たりかな?もう一個も当たりっぽくはあるけど……自分では使えないな。いや、効果はあるのか?」
一冊は、【マジックブースト】のスキルブックだった。
効果は、魔法の消費MPを%単位で増やし、その増やした消費の半分(%計算)のダメージが増えるという物だ。
なので消費MPを100%アップすると、威力が50%アップする感じになる。
因みに上限は消費200%アップなので、威力上昇の上限も100%アップまでだ。
「消費が上がるけど威力も上がる。しかも倍率も悪くない。最大の問題は、上昇するのが魔法威力なんだよな」
MPを消費する物全般を魔法と考えるなら、カードクリエイトなんかの威力も上がる事になる訳だが……
どうなんだろうな。
あれって魔法か?
まあ何にもない所からカード生み出すのは確かに魔法っぽいんだが、覚えて使ったらカードの威力とか上がんのかね?
ミスティックワイヤーもMP消費だが、威力が上がるとか言われてもピンとこない。
「まあ保留だな」
使うか使わないかは保留。
使わない場合は売りに出す訳だけど、仮に売るにしてもしばらく先の話になるだろう。
なにせいま売りに出しても、不明なスキルブックとして買い叩かれるだけだからな。
なぜ不明スキルになるのか?
そりゃもちろん、俺が【幸運】の能力を伏せているからだ。
【幸運】を伏せるって事は、その効果の一部である鑑定も秘匿するって事である。
なので、このスキルブックを売りに出す時は不明品って事になってしまうのだ。
まあ【幸運】は、いずれ公開する予定で――
「ああでも……【幸運】の公開ってどうしよう。そこから辿られて、怪盗の正体に繋がるって可能性も……」
かなり低いとは思うけど、気を付けるに越した事はない。
バレたら笑えないからな。
「もうこの際いっそ、怪盗として【幸運】のスキル効果を公開してしまうか?」
王道光こと俺は、ユニークスキルなしの雑魚シーカーとして日の光に当たる事無くやっていく感じで。
いやでも税金関係とかがあるか。
雑魚シーカーが、ガンガン高額品売りに出したら普通に目立つもんな。
そこから辿られて……
「うーん、難しい所だ。まあとりあえず、もう一つの当たりは使っとくか」
片方は純粋に当たりスキルなので、俺はそれをさっそく使用した。
拙作をお読みいただきありがとうございます。
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