第36話 マジック
「よし、20になった。まあ今日の狩りはここまでだな」
10倍速なので、数時間程でレベルは20まで上がる。
このままの勢いでとい言いたい所だが、さすがに疲れてしまった。
また無理して熱を出すのも馬鹿らしいので、今日はこの辺りにしておく。
「ま、焦る必要はないさ。さて、新しく増えたスキルはミスティックワイヤーと……怪人化のレベルも上がってるな」
まずはミスティックワイヤーを鑑定する。
どうやらこのスキルは魔力で出来た不可視の糸を飛ばし、物にくっつける事が出きるスキルみたいだ。
魔力の糸は自在に伸縮が出来るみたいなので、遠くにある物とかを引き寄せたり――あれ、これって……
ちょっと思いついた事があり、試しに使ってみる。
目標は手近な壁面だ。
魔力の色が壁にくっつく。
俺はその糸を、勢いよく縮める。
すると――
「む……負荷が強いと剥がれてしまうみたいだな」
――壁から糸が外れてしまう。
「だめかぁ」
残念ながら、体を引っ張る力に耐えられる程の接着力はない様だ。
なので某アメコミヒーローの様に、糸を使って自由自在に飛び回るといったような真似は出来そうになかった。
残念。
「そうなると……ちょっとハズレスキルかな」
この程度だと、カードスローで敵を倒して、出て来たドロップアイテムを拾いに行かず回収できるとかぐらいしか使い道がない。
ちょっとがっかりだが、まあ仕方ない事だ。
「怪人化の方は……」
スキルを鑑定し、今度はレベルの上がった怪盗化を確認する。
「ステータス補正が上がって。それと、新しいスキル効果が増えてるな」
敏捷器用魔力の補正が10から15に上がっている。
そして追加のスキルはゼログラヴィティという、カッコイイ名前のスキルだった。
――ゼログラヴィティ。
効果のオンオフ可能なトグルスキル。
効果発動時は自身や装備品、抱えてる物などの重量を限りなく0に近づける。
「重量が限りなくゼロに近い状態?」
カッコイイ名前に反し、効果は良く分からんものだった。
軽くなったからなんだってんだ?
「これをどこでつか……ああ、そういう事か!」
俺はミスティックワイヤーを飛ばし、遠くの壁に引っ付ける。
そしてゼログラヴィティを発動させてから、糸を勢いよく縮めた。
「おお!」
体が勢いよく引き寄せられ、俺は高速で移動。
そしてワイヤーの終点である壁面へと足から着地する。
「ゼログラヴィティ状態だと、移動だけじゃなくてこうやって壁に張り付くのも簡単だな」
気分は例の蜘蛛男である
そういやあれもヒーローに区分されてるけど、普通に考えて怪人だよな。
完全に。
「まあそんな事はどうでもいいか」
ワイヤーを解除し、地面に着地する。
限りなく0に近いだけあって、落下はゆっくりで着地の際の音もほぼ無しだ。
「これは便利だな。ちょっと、他人に見られたらビジュアル的にあれな気はするが……」
怪人姿の不審人物が、高速移動からの壁くっつきだからな。
下手したら新種の魔物と間違われかねない。
「ま、気にしてもしょうがないか。攻撃されそうになったら話しかければいいだけだしな」
魔物は言葉なんて話さないからな。
誤解を解くのは難しくないだろう。
「これで移動が快適に……いや、普段の移動ではあんまり使えんか」
ワイヤーはMPを。
そしてグラヴィティの方は持続的にSPを消費する。
スティールやカード攻撃などでも使う事を考えると、移動での垂れ流しは控えた方がいいだろう。
まあレベルが上がれば、ある程度気軽に使っていけるんだろうけど。
「そういや、このワイヤーって俺が片方絶対手にしてなきゃならんのかな?」
試しに壁に放ち。
手にある方を別の壁へと飛ばしてみた。
「あ、くっついた」
どうやら、普通にワイヤーの様に張る事も出来る様だ。
「よっと」
張ったワイヤーの上に、重量0状態で乗ってみる。
「魔力のワイヤーは目には見えないから、これだと他の人間には俺が空中に浮いてる様に見えるだろうな」
空中浮遊マジック!
まあ誰かに見せる気はないけど。
そういう事もやろうと思えばできるって事で。
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