第35話 怪盗?
「……」
怪盗姿は、鏡が無くても、何となくどういう物か自分でも正確に把握出来た。
スキルによる変身だからだろうと思う。
で、姿なんだが――
黒の燕尾服に、黒のシルクっぽい手袋と同じく黒のブーツ。
更につばの広い黒のシルクハット。
そして……カラスの顔みたいなマスクである。
マスクは、中世の医者が被ってたような奴だと思って貰えばいいだろう。
「これ……怪盗っていうより怪人じゃね?」
いやまあ、怪人と怪盗に大きな違いがあるのかと言われれば、正確な定義を知らないから何とも言えないけど。
ただ、俺のイメージしてた怪盗の10倍ぐらい怪しい見た目である事には違いない。
「つうか、声も変わるんだな」
マスクをしているから籠っているという感じではなく、声自体が別人の物へと変わっている。
この見た目と声なら、俺の正体がばれる様な心配はないだろう。
「しかし……この姿で狩りしてて誰かに見られたら普通に協会とかに通報されそうだな」
まあ人気狩場でもなければ、そうそう人に姿を見られる心配はないだろうけど。
後、別に悪い事をする訳ではないので、通報されても特に困らな……いや、職質みたいなのされたらちょっと困るか。
正体がばれたら不味い訳だし。
「まあ、出来る限り人気のない所で狩りをするか。もしくは……ダンジョンの奥の方に行ってから、変身して狩りをするかだな」
ダンジョンは、ランクが上がる毎にどんどんと広くなっていく。
なので人気のある様な場所でも、奥の方まで進めばそうそう人と出会う事はなくなるのだ。
「まあいいや。取り敢えず、スキルの確認をするか」
まずはカードを生成する。
やり方は簡単で、単に念じるだけだ。
「生み出したカードは専用インベントリの方に出るのか」
感覚で、生成したカードが特殊な空間に収納された事が認識できた。
取り出しも念じるだけで行けそうだ。
「トランプ位のサイズだな」
取り出した縦長の四角いカードの表面には、炎っぽいマークが刻印されていた。
生成する際、炎属性を込めたためだろうと思われる。
「どれ……」
カードを人差し指と中指の間に挟み、試しにカードスローで投げてみた。
「おお、すげぇな」
投げたカードはかなり遠くまで飛んで行く。
更に、念じると、その瞬間直角に曲がって地面に突き刺さった。
「速度もあって、地面に突き刺さる威力にこのコントロールならかなりのもんだ」
頑張れば、わざと外して背後からヒットとかも出来そう。
面白いスキルだ。
「魔法効果の方はどんなもんだ」
こちらも念じるだけで出来そうだったので念じてみる。
「おお」
カードから火が噴き出す。
人間を丸のみ出来そうなレベルの炎だ。
「こっちも結構威力がありそうだな」
まあ流石に、魔法使いほどの威力はないだろうが。
補正が大きいとはいえ、魔法使いほどの魔力もないしな。
「いっちょ試しにカエルを……いやまあ、カエルはいいか」
もうクリティカル確定してるし、試すまでもなく確殺だ。
「次の狩場に行くか」
次はストーンゴーレム狩りだ。
天魔輪廻とであったあそこである。
「属性攻撃もあるし、今ならゴーストも狩れるな」
短剣には火属性。
そしてカードには任意の属性を仕込む事が出来る。
なので、今回は聖水を使ってゴースト避けは必要ないだろう。
まあ聖水は買っていくけど。
一応、使えばストーンゴーレムの弱点つけるし。
くっそ高いなら兎も角、5,000円ぐらいなら十分元は取れる。
こちとらドロップ率大幅増のシーフ様な訳だからな。
という訳で、ゴーレムダンジョンへゴー。
あ、もちろん変身は解除するぞ。
このままの姿で電車乗ったりとか、正気の沙汰じゃないからな。
――ダンジョンについた俺は、再度変身して狩りを始める。
奥に行かずに変身したら、人に見られて通報されてしまう?
大丈夫大丈夫。
ブーストポーションさえあれば、クラスアップによる必要経験値10倍込みでも成長速度は10倍だ。
こんな狩場、2時間もあれば卒業する。
通報されて協会の人間がここに来る頃には、俺はもう次の狩場って寸法よ。
「はっ!」
突っ込んでくるストーンゴーレムにカードを投げつける。
そして奴のダッシュパンチを躱しざまにスティール。
そこからそのまま素早く間合いを離し、俺はカードを発火させる。
「ふ」
魔法に弱いストーンゴーレムは、そのまま炎に包まれ消滅する。
自分で言うのもなんだが、正に怪盗って感じの華麗な戦いだった。
見た目が悪の怪人である事を除けば。
後、普通にスティール失敗した。
まあレベル差あったししょうがない。
どんまいどんまい。
「さて、またレベル20位までここで上げるとしようか」
サクサク行こう。
サクサクと。
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