第32話 新クラス
「これがクラスアップか」
――全身から力が抜けていく。
普通、クラスが上位になるなら体から力が溢れてきそうな物だが、実際はその真逆である。
体から思いっきり力が抜けていく感じだ。
まあでも、それもその筈である。
なにせレベルが70以上下がるんだからな。
レベルアップによる補正がなくなれば、そりゃ体から力が抜けていくってもんである。
たぶん。
「さて、シーフの上位互換レアクラスは何かな?」
自分のステータスを確認する。
「怪盗か。協会のデータベースにはこんなクラスないよな」
以前一通り見た中には、怪盗なるクラスはなかった。
が、見たのは結構前だし、ひょっとしたらその間に誰かが登録して新しく増えてるかも?
そう思ってスマホで確認してみたが、まあやっぱりなかった。
「俺が世界初?まあ登録してないだけって可能性もあるかな」
ステータスはシーフの初期値と比べて、敏捷、器用、魔力が5ずつ上がっている。
あと、MPとSPも倍ぐらいになっていた。
それ以外の筋力、体力、幸運はシーフの初期値とまったく一緒である。
「ステータス15上昇。これだけで、レベル15個のボーナスポイント分のアドバンテージだ」
ノーマルクラスよりレアクラス。
そしてレアクラスよりヒーロークラスの方がステータスは高くなる。
ここに更にスキルの差が出て来る訳だからな。
クラスランクが一段階違うだけで、結構な差になるのも仕方ない話だ。
「しかし……器用敏捷は分かる。シーフ系ってそういうイメージだしな。問題は魔力だ。なんでこのステータスが上がってるんだ?」
通常、クラスにとって必要なステータスが高くなり、不要なステータスは低めに抑えられるのが常だ。
なので、クラスアップで魔力が上がったと言う事は……
「魔法が使えるって事か?考えて見りゃMPも倍増してるし」
うん、ありそうだ。
普通のシーフなら魔法なんて全然関係なさそうだが、なにせ怪盗だもんな。
そりゃ魔法くらい使えるさ。
きっとトリック的な感じで、特殊な魔法を使うに違いない。
「さて、じゃあスライム狩りに行くか」
【幸運】がレベル5でステータスの方の効果が25倍になってるが、所詮俺はレベル1である。
怪盗としてのスキルも、レベル10にならないと手に入らない。
なら、スライムからやり直すのが作法という物。
例のレアスティールで手に入るアイテムも欲しいしな。
「ま、しばらくは石橋を叩いて行くとしよう」
ミスリルスライムで、とんでもない目にあってしまったばかりだからな。
スリルはもうお腹いっぱいなので、暫くはスローライフ的レベル上げに努めさせてもらうさ。
あんなピンチの連続みたいな生活してたら、ストレスで禿散らかしてしまうからな。
禿げた怪盗とか、嫌だろ?
そういう事である。
まあ何事も、休養は必要だ。
「あ、そういや……ま、過ぎた事だしいいか」
レベル72まで上がっていたんだから、Dランク以下のダンジョンを巡って先に隠し通路を探ればよかった。
そんな事に今更気づいたが、もう後の祭りである。
まあ、もっかいレベル上げてそれから行けばいいだけだ。
どんまいどんまい。
「そういや……今の俺の状態を考えると、天廻魔輪もクラスアップポーションを飲んだって事だよな?」
スキルを複数持ちながらも、レベルは1。
これは完全にあの少女と一緒の状態だ。
なら、彼女もクラスアップポーションを服用していたと考えるのが自然である。
「何が天才だよ。単にアイテムの力じゃねーか。ああいやでも、それだけって訳でもないか」
スキルや魔法の量を考えると、彼女は間違いなくレベル70以上まで上げていたはずである。
レアクラスはレベル90までスキルを習得できると聞くので、下手したら、いや、なんか凄そうなスキルがちょこちょこあったし、90まで上げてる可能性が高い。
そう考えると――
「あの歳でレベルを90まで上げて、しかもクラスアップポーションまで手に入れてるとか……強化前がレアクラスで超強力なユニークスキル持ちだった点を考慮しても、まあ色んな意味で化け物だよな」
どんな人生を送っていたらそんな状況になるのか?
天魔輪廻。
恐ろしい子である。
「ま、俺も今やちょっとしたもんだからな。気後れする必要はないな」
ささっとレベルを上げて、俺も一流シーカーとして華々しく躍り出て見せる!
「まあ必要経験値10倍ってのが若干あれだけど……そこは怪盗パワーに期待するしかないな」
俺は早速スライムのいるダンジョンへと向かう。
「ごきげんよう!元気にしてたか!今日はレアアイテムを頂きに来ました!」
スライムダンジョンにやって来て、第一スライムを発見。
これから誰も手に入れた事のないであろう、超レアが手に入ると思うと、自然とテンションが上がる。
「ひゃっはー!もう我慢できねぇ!確変!スティール!」
という訳でスティールからのレアゲット。
盗んだ後のスライムには用がないので、蹴り飛ばして軽く処理だ。
ご苦労様でした。
貴方の尊き犠牲は無駄にしません。
そしてようこそ、レアアイテムさん。
「ついに念願のブーストポーションを手に入れたぞ!!」
まあ念願って程の年月の積もりはないけど。
ハイテンションゆえの雄叫びなので、お許し願いたい。
「さーて、その効果のほどは……」
幸運鑑定を発動させる。
失敗。
うんまあ、幸運が8に戻ってしまってるからな。
そりゃ失敗もするさ。
「ならば鑑定連打だ!」
三回目にして鑑定成功。
「お、おおおおおおおお!!」
その効果は――
「取得経験100倍かよ!」
72時間、入手経験値100倍。
再使用無効化96時間。
――であった。
「俺の!勝ちだ!!」
必要経験値が10倍になったかと思ったら、逆に10分の1になったで御座る。
やったね!
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