第27話 あ、出た
「し、死ぬかと思った」
アイアンスライムはストーンスライムとウッドスライムのいいところ取りした様な魔物だ。
要は攻撃力と防御力が高く、しかも素早い訳である。
で、試しにそいつと戦ってみたら……うん、結構な激闘になった。
お陰で全身痣だらけである。
ちょっともったいないけど、ポーションを飲んで回復しておこう。
「ったく、ストーンスライムとレベルが1個しか変わらないのに強さが別次元過ぎるだろ」
レベル上げは素直にストーンスライムで……ああでも、ウッドスライムの方が楽に狩れて、しかも金銭期待値は高いんだよな。
「経験値のストーンに、金銭効率のウッド。そしてその二つを併せ持つアイアンって感じか。さて、木と石、どっちを狩るか……」
アイアン狩りはとてもじゃないが継続できないので、候補外だ。
ポーションがぶ飲みなら話は変わって来るが、20万もする様な物を大量消費出来る様な甲斐性など俺にはないからな。
「ま、半々でいいか。」
1日中ストーンスライムの相手は疲れるし、だからといってウッドスライムだとほぼノーダメージで緊張感が薄れてしまう。
なのでまあ、ハーフ&ハーフ的な感じでつまんでいく事にする。
これなら経験値と金銭のバランスも良くなるし、また過労で熱を出す心配もなくなるってもんだ。
「さーて……じゃあレベル33目指して頑張るぞ!」
スライム狩りでレベルは直ぐに30まで上がり、新しくスキルが増えた。
それと、短剣マスタリーのレベルが2に。
「マスタリーのレベルアップは今の狩場じゃ関係ないけど、上がって損はない。で、新しいスキルは――」
―新スキル、シャドーステルス。
これは影を纏う事で姿を見えづらくするスキルで、使用中は敵に発見されにくくなる。
ま、あくまでも発見されにくくなるだけだが。
完全に姿が消える訳じゃないからな。
用途は広い場所などで敵を避ける。
もしくは、遠距離持ちの敵に好き放題先制されない距離まで間合いを詰めるよう。
って所である。
接敵状況コントロール用のスキルなので戦闘能力は全く上がらないけど、まあないよりはあった方がいい程度のスキルだ。
「まあストーンスライムの先制攻撃は防げるし、一応使っとこう」
SPの消費も少ないので、気軽に使っていけるのは良い点だ。
「ん?」
ストーンスライムを探してたら、俺は青い光沢をしたスライムを発見する。
「あの色……ミスリルスライムか」
めったに出会わないとデータベースには会ったが、どうやら運よく遭遇したらしい。
「これもスキル【幸運】のお陰……な訳ねーか。そんな効果ないし。うーん、何とかしてあいつを倒せんもんだろうか?」
普通ならまず無理だ。
とんでもなく硬くて、しかもすごいスピードで逃げる。
低レベルのシーフでどうにかなる相手ではない。
が、俺にはダブルクリティカルがある。
あれさえ連続で出れば、逃げ出す前に倒せる可能性も十分あるはず。
「シャドーステルスで気づかれない様にギリギリまで近づいて、先制からの連続攻撃を叩き込む。そうすりゃワンチャンあるか。上手く倒せれば大金星だ。ただ――」
懸念点が一つあった。
それは――
まれに、逃げずに襲ってくる事があるとデータベースに書かれていた点だ。
基本逃げるそうだが、本当に極稀に、好戦的に襲ってくる事があるらしい。
狩れる人間からすればとんでもなく美味しいシチュエーションなんだろうが、俺の場合は最悪命取りになりかねない。
なにせミスリルスライムレベルは49だ。
そのスピードもパワーも、10以上レベルが下のアイアンスライムの比ではない。
アイアンスライム相手に激闘した俺が、そんな相手と普通に戦って勝てる訳もなく。
「ああ極稀な訳だし、そこは考慮しなくてもいいか。僅かなリスクを恐れてしり込みするなんて、一流のシーカーへ駆け上ろうってやつがする姿勢じゃないしな」
コイツを狩ってうまうまする。
俺は短剣を構え、ミスリルスライムへとゆっくり近づくのだった。
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