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スキル【幸運】無双~そのシーフ、ユニークスキルを信じて微妙ステータス幸運に一点張りする~  作者: まんじ(榊与一)


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第23話 シーフじゃ……

「君は……ここにいるって事は、もうあそこは卒業したって事か?」


「うん、そうだよ。なにせ、天才ですから」


「そうか……まあ、そういうもんか」


レベル1だった子が、昨日の今日でレベル29の狩場に来るなんてありえないは話である。

本来ならそんな馬鹿なとなるところだが……彼女は規格外と言うべき存在だ。

まあそういう事も可能なのだろう。


「そういうものそういうもの」


ホント羨ましい話である。

けど――


「でもここって、魔法使いのソロ向けじゃないと思うんだけど?」


そう、ここは魔法使い向けではなかった。

パーティーならともかく、ソロで来て狩をする様な場所ではない。

理由としては、ケトラの耐久力がずば抜けて高いからだ。


あいつは物理だけじゃなく、魔法に対する防御性能も高いからな……


魔法使いのソロは、最低でも、敵に近付かれる前に勝敗の大半を決するぐらいダメージを与えるのがセオリーだ。

なにせ近接戦は基本不得意だからな、魔法系は。

近接戦しながらだと、魔法の詠唱が難しくなるってのも大きい。

だから大火力で、一気に押し切るのが魔法使いの基本戦術となっている訳だ。


ああでも……よくよく考えたら彼女は【魔力】スキルに加えて、色々スキル持ってたから問題ないのか。


「あはは。大丈夫大丈夫、なにせ、おねーさんは天才だからね」


「おねーさん?」


どう考えても君の方が年下な訳だが?

年下に対する口癖がうっかり出たとかかな?


「ああいや……おにーさん、ファイヤーウォールって魔法知ってる?」


「えーっと、確か炎の壁を目の前に出す魔法だっけか?」


ウォールと言っても物理的な障壁効果はないが、迂闊に突っ込めば炎のダメージが発生するので、ダメージかそれを嫌っての足止めを狙える魔法だ。


「そう、その魔法を使うのよ!」


「ファイヤーウォールで倒す?」


協会のデータベースを見る限り、そんなダメージが大きな魔法とは思えないんだが?

ケトラは別に炎が弱点って訳でもないし。


「まあ普通にファイヤーウォールを張っただけじゃ難しいね。けど、ほら、私って天才だから。目の前に広げるだけじゃなくて、こう……炎の壁を縦に出したりもできるんだよねぇ」


「へぇ、そんな器用な真似が事が出来るのか」


そういや、魔法コントロールなるスキルを持ってたっけか。

彼女。

名前からしてそれが関係してそうだ。

まあ全然関係なくて、才能だけでやってるって可能性もあるが。


「縦に展開したファイヤーウォールは、実質、炎の道な訳よ。で、ケトラは絶対一直線に突っ込んでくるでしょ?つまりはそういうこと」


「なるほど……灼熱の道を自分から踏み抜いて貰えば、楽に狩れるって訳か」


「まあねぇ」


「羨ましいこった」


こっちは1時間の激闘を制してやっと1匹だってのに、炎の壁で軽く焼き殺そうとしている訳だからな。

羨ましくない訳が無い。

まあだからってそれで腐る気は更々ないけど。


「にひひひ」


「ああ、そうそう……君には礼を言っておくよ」


「お礼?急にどうして?」


「昨日、ダンジョンでシーカーの大量殺人が合っただろ?」


「大量殺人?あ、あー……そういや、そんな事件あったわね。昔の事だったからすっかり頭から抜け落ちてたわ」


「ん?」


昔の事?

彼女は何の話をしてるんだ?


「あっと……昨日は夜遅くまで狩りしてたから、ニュースは見てないんだよねー。それで?それが何であたしへのお礼へと繋がるわけ?」


知ってそうな口ぶりだったのに、結局知らなかったのか?

まあその辺りは別にどうでもいいか。

天才の考えてる事なんて、所詮凡人である俺に分かる訳もないし。


「ああ、実は昨日、あの後そのダンジョンへ行く予定だったんだよ。俺」


「そりゃまた……行かなくてよかったね」


「ああ。で、行かなかった理由が君だったから……一応礼を言っておこうかなと」


もし天魔輪廻に出会い、彼女の能力を鑑定して軽くへこんでなかったら、俺はあのまま次のダンジョンへと向かっていた事だろう。

幸運の女神と崇めるつもりはないけど、彼女のお陰で助かった事には違いない。

だから一応礼を言ったのである。


「ははーん。さてはあたしの能力を見て、へこんじゃったって感じ?」


「否定はしないさ。けた違いだったしな」


「落ち込む必要はないよ。私が特別過ぎるだけだから。それにおにーさんだって、死の運命を回避した幸運があるんだから。きっといいシーカーになれるって。運も実力だよ」


年下の子供から上から目線でこういう事言われたら、普通は腹が立つところだが……


「そうか?まあ社交辞令だったとしても、天才から良いシーカーになれるって言われたら、悪い気はしないな」


「うん、お兄さんには運があるし。きっとなれるよ……所で、おにーさんのクラス、聞いてもいいかな?」


「俺のクラス?」


「うん」


「俺はシーフだよ」


まあ隠すほどでもないし、そもそもこっちは相手の情報を見てしまってるからな。

聞かれたので素直に答えておく。


「あー、シーフかぁ……」


俺のクラスを聞き、天魔輪廻があからさまに残念そうな反応を見せる。


まあノーマルクラスな上に、純粋な戦闘職でもないからな。

強さって意味じゃ、あまり期待できないのは自分でも理解しているし………って、それでも腹が立つんだが?

その反応は。


「あっと、ごめんごめん。まああれだよ。努力は決して裏切らないから、運もいいんだし頑張ればきっと大成するって」


取り繕い感が凄い。

まあだがいいさ。

俺にはユニークスキル【幸運】があるからな。


「ま、頑張るさ」


「じゃ、私は狩りに行くから。まったねー」


「ああ」


微妙な空気から逃げる様に、天魔輪廻が狩りへと向かう。


「あ、そういや……名前名乗ってなかったな、俺。まあ別にいいか。ちょっと話しただけの相手だし、そうそう絡む事もないだろうからな」


もうなんなら、ここから先、一生接触しない事だって十分あり得る事だ。

そんな相手の名前なんか、天魔も一々気にしないだろう。


俺は休憩をしっかりとってから、狩りを再開する。


◇◆◇


「ファイヤーウォール!続いて……ダークニードル!」


ケトラを発見した私は、まず最初にファイヤーウォールを張る。

これだけで倒せるとは思うんだけど、念のためダークニードルも打ち込んでおいた。


「レベルアップね」


ケトラを1体倒してレベルアップ。


《《クラスアップ》》した影響で、レベルアップに必要な経験値が10倍になってるけど、まだこの辺りならガンガン上がってくれる。


「時間はまだあるけど、さっさと上げちゃわないと。私はレベルさえ上げればいいって訳じゃないから……」


レアアイテムの為の大型ボス狩り。

それに、来るべき日に備えてのスカウトも。

時間が十分にあるとはいえ、呑気にやっていける程の余裕はない。

だからさっさとレベル上げを終わらせないと。


「そういやさっきの人、たぶんユニークスキル持ちよね?」


シーフと聞かされそこで話を打ち切ってしまったけど、まず間違いないだろう。

昨日の今日でここに来ているぐらいなのだから、優秀なユニークスキルでも持っていないと説明がつかない。


「運もいいみたいだったし、シーフじゃなかったらスカウトしてたんだけど」


いくら優秀なスキルを持っていても、流石にシーフでは、最後の戦いでたいして役に立たないものね。


「クラスアップポーションがあれば……って、あれがもう一本手に入るなら、レアクラスで優秀なユニークスキル持ちをランクアップさせるわよね」


仮に手に入ったとしても、純粋な戦闘職でもないシーフをランクアップさせるなど、選択としてはありえない事である。


けど、そんな考えが一瞬でも過ったのは……


「何か気になるのよね。あの人……」


別に好みのタイプだとか、そういった俗的な意味ではない。

こう、何というか……なんだか期待できる。

そんな感じが感じられたのだ。

あの人から。


私が特に用もなく彼に声をかけたのも、そんな感覚があったからに他ならない。


「ま、なんにせよ、シーフじゃね」


そう、シーフでは駄目だ。

だからきっと気のせい。

私はそう結論付ける。


「待っててね、勇気。必ず貴方を取り戻すから」


今はもう、この世に存在しない弟に私は誓う。

最後まで生き残り、消えてしまった弟を必ず取り戻すと。


そう。

ゲームマスターであるGの仕掛けたラストダンジョンを、私は必ず攻略してみせる。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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FW縦置きしてファイアーボルトでレベル上げはマジシャンの基本
この女、タイムリープしてるっぽいな なら名乗らなくて正解か 名乗ってたら更に絡まれてそう
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