第21話 挑戦
「ふむ、ダンジョンはどうしようか……」
昨日事件があったので、向かう予定だったダンジョンは封鎖されてしまっている。
何せ大量殺人な訳だからな。
まあ仮に封鎖されてなくても、気分的にそんな事があった場所に行く気にはなれないけど。
「格上狩りってなると、かなり限られて来るんだよなぁ」
敵の数が多い様な場所はダメ。
殲滅力不足で囲まれる未来しか見えない。
攻撃力が高いやつも避けたい所だ。
一発デカいのかまされたら、ソロじゃリカバリーするのが難しいからな。
幸運ガードがある?
常時じゃない以上、過信は禁物である。
あと、物理攻撃が通用しづらい奴もNGだな。
ゴーストみたいなやつ。
防御半減しても、そもそも物理攻撃が効きづらいタイプには意味ないからな。
更に付け加えるなら、家から近いのが望ましい訳だが……まあ、それはいいか。
最悪、現地のホテルで寝泊まりすれば良いだけだし。
多少出費はかさんでしまうが。
「理想は硬くて遅くて、単独かつ、他に厄介な敵のいないダンジョンな訳だが……」
まあ、そんな厚かましい要望に応えてくれるダンジョンがそうそう転がっている訳もなく……
今思うと、近所のダンジョン、メチャクチャ都合良かったんだよな。
ほんっと、迷惑な事してくれたもんだ。
「まあ色々妥協するなら、このケトラのいる場所だな」
候補は、サイぐらいのサイズの、恐竜のトリケラトプスに似たレベル29の魔物が出るダンジョンだ。
「けど……流石にちょーっとリスクが高すぎるか?」
ケトラは突進力が凄く、それを喰らうと低レベルや装備に難がある場合は一発で大怪我ものらしい。
その最初の突進さえ躱せば、硬いだけでその後の攻撃は大した事はないらしいのだか……問題はそれをくらった場合なんだよな。
因みに、シーカーはレベルが上がると防御力的な物が上がっていく。
これはステ振りによらない強化だ。
それ以外にも、基礎能力も僅かずつだがレベルアップで上がると言われている。
1%あるかないかぐらいらしいが、塵も積もれば何とやらで、10レベルも違えば体感できるぐらいの差にはなる。
俺もまあ、20近く上がってるから結構実感できてはいる。
動きのキレとかが、覚醒したての頃より確実に上がってるし。
「うーむ……躱すのはそれほど難しくはないっぽいけど、最悪、喰らうイコール死の可能性もあるからなぁ。もうちょいレベルを上げてからの方がいいか」
レベルが20になれば、新しくスキルが増える。
その中に敏捷性が上がるものがあるので、いくならそれを習得してからの方が無難だ。
「……完全にこの思考、日和ってるよな。ダンジョン探索のリスクを考えるなら、大事な感覚なんだろうけど……」
大半のシーカーは、Cランク程度で止まると言われている。
何故か?
敵がどんどん強くなっていくからだ。
同ランク帯の魔物を狩る場合、低レベル帯より高レベル帯の方が遥かにきつくなる。
分かりやすく言うなら、レベルアップによる強化が、人間側より魔物側の方が大きいのだ。
まあ魔物はレベルアップして成長している訳ではないだろうから、正確な言い方ではないが。
なんにせよ、敵のレベルが上がればあがる程、シーカー側がきつくなっていく。
それに加えて、Cランクレベルなら、そこそこいい生活が出来るぐらいの収入を得る事が出来ると言うのも大きい。
問題なく生活が出来、敵はどんどん手ごわくなっていく。
そうなった時、多くのシーカーが現状維持でいいと思い出す妥協点が、まあCランクな訳である。
だからシーカーの数は、Cランクが最も多いのだ。
「安全安心。そんな妥協に近い思考じゃ、俺も同じ穴の狢になりかねない……か」
石橋を叩かなければ渡れないような奴が、果たして高みを目指せるのか?
例え強力なユニークスキルを持ってたとしても、そんな心根じゃたかが知れてるはず。
本当に上を目指すなら、常に死ぬ覚悟で挑戦すべきだ。
「よし!」
俺は自分の両頬を手で張り、気合を入れる。
「いくぞ!ケトラ狩り!」
俺は早速、ケトラの出るダンジョンへと向かう。
拙作をお読みいただきありがとうございます。
『面白い。悪くない』と思われましたら、是非ともブックマークと評価の方をよろしくお願いします。
評価は少し下にスクロールした先にある星マークからになります。




