第19話 遭遇
ゴーレム狩りを初めて二日。
レベルは17まで上がっていた。
かなりハイペースのレベルアップと言っていいだろう。
ただ――
「聖水の消費が激しいぜ」
短剣に聖水を塗って戦うと、どうしても消費が激しくなってしまう。
そのため、ここでの狩りは普通に赤字垂れ流しだった。
「レベルが上がってスティールもほぼ成功する様になってきたし、大赤字って訳でもないけど……やっぱ赤字は気分がよくないよな。レアとか引けると熱いんだが」
ストーンゴーレムのレアは、ドロップスティール共に黒鋼のインゴッドだ。
地球上にはない鉱物で、鉄どころか鋼よりも強くて軽い。
なのでその売価はなんと100万円近くもする。
「ま、無理か」
【幸運】の効果でドロップやスティールのレア確率が上がっているとはいえ、物凄い低確率らしいからな。
ゴーレムのレアは。
多少倍率をかけた位じゃ、早々ではしないだろう。
「あとはダブルクリティカルか。ダブルクリティカルがもっとバンバン出てくれれば聖水なしでも問題なくなるんだが」
レベル16、つまり幸運を23にしてから、ダブルクリティカルが稀に出る様になっている。
クリティカル率が100%を超えたためだ。
とは言え確率は30発に1発とかだから、まだあまり期待できない。
因みに、発生時のダメージはかなり強力な物で、ゴーレムの腕とか余裕で斬り飛ばす事が出来るレベルだ。
カッタいゴーレムをサクット切れるんだから、もう感動もんよ。
「レベル上げて行けば発生率は増えるけど、そもそも満足に出る様になる前にここは卒業するしな。仕方ない。赤字狩りで後、2、3レベル頑張ろう」
で、それから5日。
俺はゴーレム狩りでレベルを19にまで上げた所で、このダンジョンを卒業する。
最初は20まで上げようと思ってたんだけど、やっぱ赤字狩りは精神衛生上宜しくないので早めに切り上げた。
これが漫画やラノベとかだと、最後の最後でレアアイテムが!なんて事もあるんだろうけど、現実は厳しい物である。
当然だが、1週間籠ってレアドロップは無しだ。
「さて、引き上げるか……」
「お兄さん、ここで狩りしてたの?」
ホールから出ようとすると、そこにいた女の子が急に声をかけて来た。
年齢は14,5歳ぐらいで、オレンジ色の髪をしたツインテールの可愛らしい顔立ちの女の子だ。
「ああ、そうだけど?」
「お兄さんって、魔法使いっぽくないよね?ここ、魔法使いしか来ないって聞いてたんだけど……何か面白いユニークスキルでも持ってたりして?」
いきなり人の詮索をしてくるとか、不快極まりないガキである。
しかし……そうか、魔法使いの狩場で前衛っぽい人間がいたら、それを疑われるのも無理はないよな。
取りあえずここはそれっぽい嘘で凌いで、次からは気を付けるとしよう。
「いや、単に暇だったから近場で小遣い稼ぎしてただけさ。今日はパーティーでのダンジョン探索が無かったからね」
「ふーん……そうなんだ?ま、そういう事にしといて上げる。あ、そうそう……私の名は輪廻。天魔輪廻よ。いずれ世界最高のシーカーになる名前だから覚えといて」
「世界最高か。随分と大きな夢だな」
俺が目指したのは一流シーカーで。
この子は世界最高のシーカー。
なんか目標で大差を付けられた気分になってしまうが、俺の方が現実を見てるだけとも言えるので気にしない事にしよう。
「あ、今無理って思ったでしょ?でも叶っちゃうんだなぁ、これが。実は私、ヒーロークラスなんだよ」
「ヒーロークラス?」
覚醒時に就くクラスは、三段階に分けられる。
程々の強さのノーマルクラス。
そしてノーマルクラスより優れているレアクラス。
更に、レアクラスすらも大きく凌駕するヒーロークラスだ。
シーカーの大半はノーマルクラスな訳だが、レアクラスはそこそこな数がいる。
だが、ヒーロークラスになれる者は極々限られていた。
日本だけでいうなら、ヒーロークラスはたったの二人しかいない。
じゃあ彼女が、日本三人目のヒーロークラス?
それはないだろう。
どうせ適当な事を言っているだけだ。
こんな所で偶然ヒーロークラスの少女と遭遇しましたとか、ある訳がないからな。
「その目、信じてなさそー。まあでも……あたしの言葉が嘘じゃないって事は、じきに分かると思うよ。すーぐ有名になっちゃうからね」
天魔輪廻が、得意げな顔をする。
じきに分かるどころか、今すぐにだって確認できるっての。
なにせ俺は鑑定持ちな訳だからな。
「——っ!?」
くだらないほらだと思いながら、俺は目の前の天魔輪廻を鑑定する。
そして絶句した。
彼女を鑑定して出た結果に。
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