第1話 覚醒
俺の名は王道光。
19歳。
「覚醒した……」
俺の夢は探索者になって、その名を馳せる事だった。
だがシーカーになるには覚醒が前提条件である。
そのため、俺は体を鍛えながらバイト暮らしをして、その時を待ち望み続けてきた。
そしてその日がついにやってきたのだ。
「ぎりぎりだったな。まあ鑑定があったから、心配はしてなかったけど……」
覚醒は20歳を超えると、途端にし辛くなると言われている。
ゼロではないがその確率は相当厳しいものなので、大抵の人間は20を越えたら事実上シーカーへの道を断たれると言っていい。
「クラスは……と」
ステータス閲覧を念じると、俺の目の前に半透明のパネルが表示される。
「シーフか……ちょっと微妙だな」
覚醒すると、自身の適性に合わせたクラスになる。
ステータス画面でそれを確認してみると、俺のクラスはシーフとなっていた。
――クラスは大まかに分けて三種類に分別されていた。
戦士や魔法使いといったノーマルクラス。
騎士や属性ウィザードなどのレアクラス。
そして、賢者や剣聖なんかのヒーロークラス。
呼称からも分かる通り、ノーマルよりレア。
そしてレアよりヒーローの方がランクは上だ。
当然、ランク差は能力に直結する。
俺のシーフはノーマルクラス。
まあノーマルクラスの中じゃ人気は高い方だけど、結局ノーマルクラスである事に変わりない。
「まあだが俺にはユニークスキルがある」
ユニークスキルとは、クラススキルやスキルブックによって習得できるスキルとは別の、資質によって覚醒時に発現するスキルの事を指す。
その発現確率は相当低く、更に優秀な効果である事が多いため、あるかないかでシーカーとしての格が一つ違ってくると言われる程だ。
まだ確認していないが、間違いなくある。
何故なら、ユニークスキル所持を覚醒前から確約されていたからだ。
10年前、世界的に有名なシーカーの鑑定によって。
そのシーカーの名は、アルマイヤ・クワンガ。
アメリカのシーカーであり、世界トップクラスのギルドに所属している女性である。
10年前。
アルマイヤは日本へとやって来た。
その目的は親善で、その際、彼女はあるサービスを行う。
それは未覚醒者への鑑定だ。
その鑑定は抽選され、数万人以上の応募が殺到。
そんな高倍率のなかその幸運を掴み取った100名の中に、そう、俺がいたのだ。
当時9歳の俺が。
鑑定して貰った100人の大半は、覚醒自体見込みなしだった様だ――鑑定は個室内で戸別に行われたので結果は他人には分からなかったが、俺の鑑定の際、アルマイヤが教えてくれた。
だが俺は間違いなく覚醒すると太鼓判を押され、同時にユニークスキル持ちであることまで伝えられる。
そこからだ。
俺が一流のシーカーになる夢を持ったのは。
まああなたには才能が有りますって、世界的な人物に言われた訳だからな。
元々憧れていたのもあったから、もうまっしぐらよ。
ただ、その事は誰にも話してないが……
アルマイヤさんに言われたからな。
ユニークスキルが約束されたシーカーである事が周囲に知られたら、危険な目に合うかもしれないから周囲には黙っていなさいって。
ガキの俺からすりゃ、彼女の鑑定は予言みたいなもんだったからな。
その予言者が黙ってろって脅すんだから、そりゃお口にチャックよ。
まあ隠しておいて、覚醒してからババーンとお披露目するのもかっこいいって思ってたってのもあった手のも大きい。
まあなんにせよ、アルマイヤさんがアドバイスしてくれたお陰で、俺は難を逃れる事が出来ている。
「あのアドバイスが無かったら、今頃俺も……」
アルマイヤさんは日本の後にもいろんな国を回っていて、同じようなサービスをしていた。
各国を回っていた訳だから、その中から何名かユニークスキルを鑑定される人物が出てくる訳で……けど、そいつらは彼女のアドバイスを無視してしまった。
周囲に喧伝した結果、そいつらは行方不明に……
恐ろしい話である。
で、事件があってからは、アルマイヤさんは各国を回って鑑定する事を辞めたそうだ。
当時ネットでも相当叩かれてたし、実際事件が起こった訳だからな。
しょうがないっちゃしょうがない。
「さて、どんなスキルかな」
アルマイヤさんの鑑定は、基本的に能力やアイテムの詳細を知るものだ。
潜在能力も鑑定できるがそちらの効果は弱いらしく、覚醒時のクラスやどういったスキルまでかは分からなかった。
俺はステータスにある、スキルの項目に意識を集中させる。
ステータス画面の操作方法はタッチパネル形式ではなく、念じるだけで勝手に反応してくれる仕様だ。
そして開かれるスキル画面。
そこに表示されていたのは――
「【幸運】……聞いた事のないスキルだな」
――【幸運】というスキルだった。