第148話 リフレッシュ
日常は変わらない。
この世界が終わるかもしれない状況でも、それは淡々と続く。
―—喫茶店。
出されたコーヒーを口に運び、俺はそんな事を考える。
「社会的に問題が起きないってのが、ちょっと不思議なんだよな」
試練——ラストダンジョンは全人類が知る所だ。
なにせ、人類すべてに脳内放送された訳だからな。
そしてその内容が、嘘偽りない物だという事は、皆確信している。
まあそこも不思議ではあるんだよな。
何て言うか、強制的に信じさせられているって言うか。
まあそんな感じ。
そのため、ラストダンジョンをクリアできなければ人間が滅びるってのは、人類全体の共通認識と化している。
「うーん、確かに言われてみればそうだね」
「滅びるかもしれないってなったら、普通、ちょっとしたパニックぐらい起きそうなもんだろ?でも、そういう話は一切聞かないし」
ラストダンジョン登場から、既に三か月経つ。
ニュースやネットなんかじゃ、今でもその話題で持ちきりな訳だが……こういう状況だと、やけっぱちになったり、宗教とか暴動とかで世情が不安になりしそうなものだけど、そういうのは一切起きていない。
「まあ、あれじゃない?クリアできなければ滅ぶってのはさ、逆に言うとクリアさえ出来れば滅ばないって事だから」
「誰かが何とかしてくれるって、そう楽観的に社会全体が考えてる訳か」
だとしたら、呑気極まりない。
まあ、問題が頻発するよりかはずっといいっちゃいいけど。
「ギスギスするよりかはいいさ。まあ天魔さん達が本命な訳だけど、僕達も頑張らないとね。合流する可能性が高いわけだし」
「まあな」
聖の言う通りだ。
勇気は理由を明確に語ってはくれないけど、わざわざパーティーを分けた方が良いって理由は二つしか考えられない。
誰かが欠けた際の補充か――同じ階層に進んでいる者同士でしか補充は利かない。
パーティーの合流。
要は、連合を組んで戦うって事だ。
補充に関しては、結局とられた側は先に進むのが辛くなる事を考えると、可能性はあまり高くない気がする。
なので俺達は、後者がその理由なんじゃないかと考えていた。
「天魔の情報も4階層までだし、5階層以降はどうなるか分かってないからな」
「そうなると、ユニオンスキルも生きて来るね」
「ああ、そうだな」
ユニオンスキルはかなり……と言うか滅茶苦茶強力なスキルだが、単独パーティーで挑むラストダンジョンでは何の役にも立たない。
だが天魔のパーティーと合流し、連合を組めるのなら、強力なバフ効果が生きる事になる。
「ま、なんにせよまだまだ先の事だ。今はとにかく、レベル上げを急がんとな」
「頑張らないとね。光は100倍な訳だし」
呪いのペンダントのレベル上げは、ちょうど昨日終わっている。
なのでもうランクアップ済みだ。
速攻でレベル上げに行かないのは、ブーストポーションの切れ間だってのと、追い込みで狩りを頑張って少し疲れているからである。
なので今日1日はお休み。
リフレッシュ休暇。
明日から頑張る!
って事で、丁度オフだった聖を誘って会ってるって訳だ。
「時間制限なしならゆっくりできるんだけど、そういう訳には行かないからなぁ。気合入れんと」
まあポーションありなら相殺して等倍にはなるんだが、10倍状態に慣れた身としては、いかんともしがたい所である。
あ、因みに怪盗からランクアップした新クラスは――
義賊だ。
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