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第138話 懺悔(S)

神が世界(ゲーム)を想像してから、3,000年以上の時が経った。

だがゲームはクリアどころか、その殆どがラストダンジョンの第1層すら突破できない始末。

稀に2層に至る事はあっても、そこ止まりだ。

第3層に進む気配もない。


繰り返す残念な結果に落胆するG達。

だが99回目にして大きな変化が起きた。


それまでは攻略の影すら見えなかった2層を越え、3層すら突破されたのだ。


その中核となった人物は2人。

一人は天魔勇気。

ヒーロークラスの錬金術師であり、快進撃を続けたパーティーのリーダーを務めた男だ。


錬金術師はヒーロークラスではあったが、製作系であるためその戦闘能力自体はそれほど高くなかった。

だが、彼には人類の限界点ともいえるレベルの戦闘センスが備わっていた。

更にユニークスキルとして持っていた【魔眼】は、彼の戦闘スタイルと抜群の相性を見せ。


タンカーとして。

アタッカーとして。

そして司令塔として。


彼はその圧倒的才覚をいかんなく発揮し、パーティーを勝利へと導いたのだ。

正に、パーティーの要と呼ぶにふさわしい存在と言えるだろう。


もう一人は、天魔輪廻。

天魔勇気の双子の姉である。


クラスはレアのダークウィザード。

ヒーロークラスではなかったが、彼女は神が強スキルとして創造したユニークスキル、【魔力】を所持していた。


その凄まじい火力は人類最高峰を誇り。

また、弟の勇気ほどではなかったが、彼女にも戦闘に関する天賦の才があった。


この2人。

天才兄弟の活躍により、パーティーは前代未聞の第4層へ到達する事に。


だが、そんな2人の天才の力を以てしても第4層の攻略は敵わなかった。

その最大の要因は――それ以外のメンバーの力不足である。


足手纏いという程ではなかったが、他の5人の力量は明らかに2人に比べて低かった。

もし、もう少し力のあるメンバーが彼女達のパーティーにいたなら、4層は疎か、5層までの突破も夢ではなかっただろう。


だが、それは叶わぬ話。


この世界はいくつもの国に分かれている。

そして、国が分かれている事によって発生する帰属問題。

世界の危機だと分かっていても、人類は力を一つに纏める事は出来無かった。


コピー元となった、地球人の性質がそうさせたのだ。


そのため、各国には天魔姉弟以外にも優れたシーカーがいたが、決して彼らが手を取り合うことはなかった。

それぞれがそれぞれに国を代表する形でパーティーを組み、そして散って行ってしまう。


そして通例通り、リセットされる99回目の世界。

だが、それに白い獣――Gが干渉する。


Gには、ゲームマスターとしての裁量権が与えられていた。


神の創造した(ゲーム)に、Gは手を加える様な真似はしたくないと考えてはいたが、『このままでは、無限に繰り返しても決して攻略される事はないのでは?』という思い。

そして成功とまでは呼べないが、今までにない程の結果を残した天魔姉弟の存在が、彼に決断させる。


完全なリセットではなく。

優秀な者を残した状態でのやり直しの形での、リセットへと変更する決断を。


だが、2人同時にやり直しさせる事はなかった。

Gを生み出した神が、なんの対価もなしに恩寵を与える事を嫌う神だったからだ。


やり直しはGの都合だが、やり直せる側にとっては間違いなく福音となる。


だから代償を求めた。

戻れるのは片方だけ。

そして、生贄となったもう片方は存在そのものが消えるという。


そしてその結果、天魔輪廻が回帰する。


回帰という名のリセット。

彼女の存在は大きく状況を変化させていった。


本来は試練が始まる前に死ぬはずだった、最強スキルの【幸運】を持つシーフを生存させ。

更に、とある出来事がきっかけでシーカーをやめ、25年近く引き篭もり生活を続けていた竜崎守の復帰。


この二つの要素は、Gに大きな期待を持たせるだけの物があった。


更にそこに加え、一度手を加えた事によってタガの外れたGは全体の底上げのために、報酬つきのゲームまで実装する。

これにより、確実に世界全体のシーカーのレベルは引き上げられる事に。


だが、天魔輪廻は早々にレベル97のSランクボスに手を出してしまう。

そして、現状で考えうる最強クラスの編成でボスを討伐してしまった。


絶対に変える事の出来ない根幹部分のルールを知らなかったため、仕方がない事ではある。

だが、結果、世界は想定よりも早い段階で最終段階へと進むことに。


「君は……このまま彼らが試練に挑んで、クリアできる確率はどれくらいだと思う?」


Gが、ゲームの根幹部分のシステムを管理するアドミニスターへと問いかける。


「無論0だ。常識的に考えて、奴らが試練を攻略する事は不可能と言える」


「だよねぇ。高ランク帯のボスは後回しにして、地道に準備を進めていけば……1や2%位には出来たかもしれなかった。本当に惜しい話だ。こんな事なら、八咫烏の禁制をもう少し緩めていた方が良かったかな」


余計な情報を、禁制によって勇気は発信できない様になっている。

なので、97以上のボスを倒してはいけないというアドバイスを、彼は主である光達に出来なかったのだ。


「お前は本質を見失っている様だな?」


「僕がかい?」


アドミニスターの言葉に、Gが可愛らしく小首を傾げる。


「あのお方は、愚かで矮小な生物達が起こす奇跡を望んでおられる。0をひっくり返し、無から有を生み出す事こそ奇跡だ。可能性がわずかにでもあったなら、それは奇跡とは言えまい?」


「……そうだね。君の言う通りだ。僕としたことが……」


ゲーム管理は、その気になればGだけでも出来ただろう。

だが神は自身にサポート役を付けた。

その意味を、この状況になって初めてGは理解する。


単独の運営では、自らを神と勘違いしてしまう可能性があった。

その本質を見失い、神の意図を無視する暴走。

それを御する存在が必要だったという訳だ。


「アドミニスター、礼を言うよ。そして神よ……どうか愚かな僕をお許しください」


Gは天を仰ぎ、神への懺悔を口にする。

そして成否など関係なく、これからも、神から与えられた使命を全うする事を心に誓うのだった。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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