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第137話 リセット(S)

「苦情なら聞かんぞ」


宇宙空間に浮かぶ、神殿のような建物。

その中央には石碑のような物があり。

その前に立ち、石碑に触れていた大柄な女性——アドミニスター・G・サーヴァントが振り返る。


その視線の先には、小さな白い動物がいた。

但しただの動物ではない。

上下2対になって並ぶ、赤い4つの目を持つ事からもそれが良く分かる


「レベル97以上のボスは、通常状態での討伐は想定されていない。あれは試練の第一層でそれ相応の力を身につけた者が、一層の攻略ないし二層に上がる前の準備として倒すよう設計されている物だ。それを倒されてしまったからには、裁量どうこうで見逃せる範囲を越えている」


「分かってるさ。世界のリセットへの改編や、シーカー用のゲームの事で君は十分譲歩してくれているからね」


世界のリセット。

天魔輪廻は、時間が回帰していると考えていた。

だが実際は違う。

そう、時間は決して巻き戻ってなどいないのだ。


―—ドムロド。


それが、王道光達が暮らす星の本当の名である。

かつてこの星は、巨大な泥の塊の様な生き物だけが暮らす泥しかない世界だった。

そしてそれを管理する神もまた、泥の塊のような姿をしていた。


そこに暮らす生物も神も穏やかな気質をしており、それゆえドムロドに争いはなく、とても穏やかで平穏な時間だけが流れ続ける。

泥まみれではあったが、そこに暮らす者達にとってこの星は楽園と言っても過言ではなかった。


だがそんな世界に、ある日、突如異空間より神が飛来する。


赤い全身。

ひび割れた皮膚に、肘の辺りから長い複椀をはやし。

上下2対になる真っ赤な瞳を持った、人型の神。


その神は、元々いた神を、そしてそこに住まう泥の生物達を、圧倒的力で瞬く間に消滅させてしまう。

そしてその星を作り変え、新しい世界を生み出す。


―—それは地球によく似た世界だった。


地球に似ているのは、その神が元地球人であり、自身の記憶を元に21世紀初頭辺りの地球を再現する様にドムロドを改造したためだ。


神の目的はゲームの創造だった。

そしてそれをプレイするのは、その為に生み出された地球人に限りなく近しい人々である。


なので知らない。

ドムロド――現地宮で暮らす人々は。

彼らはある日突然ダンジョンが姿を現したと思っているが、実は自分達がダンジョンと同時に生み出された存在である事を。


そして神の作ったゲームのクリア条件は――試練(ラストダンジョン)の完全制覇。


但しその難易度は、クリアさせる気がないと言わざるえないレベルとなっていた。

だから神は、世界をリセットするシステムをゲームに組み込んだ。

ゲームが失敗するたび初期化(リセット)され、その度に覚醒する者や、どういったクラス、ユニークスキルを得るかをランダムで割り振られるシステムを。


―—試行回数を増やす事で、いつかゴールにたどり着く事を期待して。


クリアを期待してはいても、神は難易度を下げる事はしない。

奇跡を起こし、不可能を可能にする姿こそ、彼が求めるゲームの終焉だから。


そしてシステムを構築し終わった神は、ゲームの総合運営を獣の姿をしたGに。

更にシステム管理者として、アドミニスターを生み出し。

世界を後にする。


―—更なる世界(ゲーム)を生み出すために。

拙作をお読みいただきありがとうございます。


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