第135話 2年程
絶対領域。
それは安全地帯を生み出すスキルだ。
スキルの説明にはこうあった。
神聖な尊い領域故侵す事なかれ、と。
抽象過ぎてあれな説明である。
まあ名前からある程度推察は出来たが、これだけだと分かり辛かったので、一応鑑定して出た効果は――
半径5メートルに敵の侵入できない結界を発生させ。
その際、範囲にいる敵は外にはじき出し――ノーダメージかつ、相手が位置固定されているような場合は結界は不発に終わる。
効果時間は2時間で。
攻撃を受けた場合、10万発まで耐える。
って感じだ。
要は、耐久力ありの安全エリア形成スキルって事だ。
耐久力に関してはダメージは関係なく、攻撃された回数のみでカウントされる。
なので、天魔輪廻のブラックサン18連打を受けてもびくともしない仕様となっていた。
「まあとは言え、この状況じゃ長くは持たないけど……」
俺を狙う魔物の数は22——いや、クリティカルブロウで透明を一匹倒したから、後21匹だな。
この21匹が10万回結界を攻撃するのにかかる時間は、恐らく1分ほどだ。
こいつら手数が尋常じゃないからな。
結界に取り付いて、ガジガジしてる噛みつき攻撃とかえぐい速度だし。
なので10万発ぐらいあっという間だろうと思われる。
因みに、このスキルはボスにとんでもなく弱い。
ボスの攻撃は1発一万回扱いになる様で、10発殴られただけで潰されてしまう。
つまり、ボス戦ではそこまで役に立たないって事だ。
え?
だったらこの状況、1分も持たないんじゃないか?
それは大丈夫。
あくまでも弱点は、ボス自身の攻撃だ。
子ネズミはボスの取り巻きであって、ボスじゃないからな。
そういう意味で、ボスが一切攻撃してこないこのグレートマザーラット戦とはすこぶる相性のいいスキルとなっている。
それでもまあ、1分ぐらいしか持たない訳だけど。
けど、それだけあれば十分だ。
「さっさと回復しよう」
俺はミステリアスホールから、事前に用意してあった回復系のポーションを勢いよくがぶ飲みする。
飲み過ぎてお腹がちゃぷちゃぷするのが欠点だが、これで全回復である。
因みに、全回復するアイテムであるエリクサーも持ってるが、これは最後の最後まで大事にとっておく。
超絶貴重だし。
エリクサー症候群万歳!
因みに絶対領域は、ダンジョンの隠し通路で手に入れたアイテムである。
どうやらリポップは2年ほどらしく、既にE級とC級の宝箱は回収済みだ。
それ以外は期間的にまだ少し先になる。
で、だ。
手に入ったアイテムは一週目とは別の物だった。
勇気の発言からどうもランダムっぽい―—設置時点で決まるタイプ。
まあトラップは一緒だったけど。
「っと、もう結界が解けたか」
バリーンと、乾いた音と共に結界が砕け散る。
「こっちは元気いっぱいだ。ここからまた死ぬほど時間稼ぎしてやるぜ!」
まあ、幸運ブーストは残り5分ほどしかないんだけどな。
数が順調に減っているとはいえ、流石にこれが切れたら抱えるのはきついので、そこからが本当の勝負って感じになる。
まあやばそうだったら、|『先生お願いします』する《ゆうきよぶ》けど。
「「「「「「ぢゅああああああああ!!」」」」」」
ネズミが一斉に襲い掛かって来る。
さあ、鬼ごっこ再開だ。
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