第133話 てへぺろ
スキル【器用】。
俺の持つ【幸運】や、天魔の持つ【魔力】。
それにアレックスの【敏捷】と同じ系列のスキルだ。
ステータスの器用には、効果が二つある。
一つは、肉体の挙動を円滑にするという物だ。
要は挙動の最適化だな。
例えば、剣を振るという行動一つとっても、器用さの高低で結構な差が生まれて来る。
不器用だと剣筋がぶれ、そうなると、当然速度と攻撃力が下がってしまうからだ。
防御にしてもそう。
動きが最適化されていれば無駄がなくなって回避しやすくなり、盾で防ぐ際も理想的な受け流しが出来る様になる。
つまり器用さは筋力であり、敏捷であり、防御力でもある訳だ。
それだけ聞けば優秀なステータスに聞こえるだろう?
けど実は結構最近まで、器用のステータスの評価はあまり高くなかった。
剣筋のブレ?
そんな物は、素振りを繰り返せばなくなる。
回避や防御の最適化も同じ。
まあ要は、訓練次第でどうにでもなる。
そう思われていたため、評価が低かったという訳だ。
じゃあ何で評価が上がったのか?
一般的な考え方の前提が、間違っていると浸透してきたからだ。
要は、訓練次第でどうこうという考えが浅い物だと周知されたからである。
何年か訓練すれば、剣筋をブレず振る事は出来るようになる。
それは間違いない。
だが問題は、その剣を振るシチュエーションだ。
激しい戦いの中、常に正しい姿勢で剣を振るい続けられるか?
答えはノーである。
魔物が止まって、こちらが剣を振るまで動かない?
そんな訳ないよな。
相手は動き回って攻撃を躱したり、逆に此方へ攻撃して来たりするのだ。
剣を振る際の態勢だって万全とは限らない。
そんな条件下で剣筋を全くぶれさせずに、剣を完璧に振るえるのは数十年研鑽を積んだ達人位の物である。
つまり……素人が数年訓練したぐらいじゃ、器用さの恩恵を感じられなくなるほどの技量は決して身に付けられないという訳だ。
まあごく一部の天才なら話は変わって来るだろうけど。
そう、勇気や竜崎みたいな。
後、天魔輪廻もそこに含めてもいいだろう。
あいつ何気に近接戦闘の動き、滅茶苦茶良いんだよな。
器用さなんて1ミリも振ってないのに。
まあなので、実質パワー、スピード、防御力が上昇するに等しい器用さは、今ではそこそこ有効なステータスと認識されていた。
もちろん最重要ではないが、俺みたいに一点極振りしてる人間以外は、多少は振っておくのがセオリーだ。
で、器用のもう一つの効果。
それは追尾機能だ。
そう、器用が上がると、攻撃が敵を追尾してくれるようになる。
まあ近接は殆ど影響がないっぽいが、遠距離攻撃はかなり顕著だ。
器用が高いと、回避した敵に直角に追いかけてヒットする動画とか見た事あるし。
なので、遠距離攻撃主体の後衛にとっては、かなり重要なステータスになって来る。
遠距離攻撃ってのは、近接攻撃に比べて基本的に当てづらいからな。
動きが遅くてデカい敵なら兎も角、小さい敵や、素早い敵に遠くから攻撃を当てるってのはかなり難易度が高い。
そんな時に効いて来るのが器用って訳だ。
因みに……パーティーを組む際、器用を抑えた火力至上主義みたいな奴は弾かれる傾向にある。
何故か?
理由はいたって単純だ。
誤射による味方撃ちのリスクが高まるから。
前に出て敵を抱えてる前衛が、ケツに高火力の味方の魔法を誤ってぶちかまされる。
これは結構シャレにならない。
下手したら、パーティーの壊滅にすら繋がるからな。
だから器用にステータスを振ってない様な奴は、パーティーから弾かれる訳である。
さて、ここからが本題だ。
器用さは高ければ高い程、敵に確実に攻撃を当て。
更に味方への誤射を無くす。
だが広範囲魔法を味方の側でわざとぶちかましたりしたら、流石に器用さでそれをカバーする様な事は出来ない。
但し……通常の範囲の器用さならば、ではあるが。
シヴァティはユニークスキル【器用】によって馬鹿みたいに器用の数値が上がっている。
彼女は器用極振りしてるからな。
そしてその度を越えた器用さは、味方の目の前で爆発した爆弾の爆風すら完璧にコントロールし、いやもうコントロールの域を越えて、味方をすり抜けていくレベルになっている。
だから、彼女がバンバン爆弾を投げ込んでも俺は無傷って訳だ。
因みに、ボンバーキングの扱う爆弾は器用さと魔力で威力が上がる仕様だ。
普通のクラスなら器用極振りは流石に微妙になるが、彼女の場合は超火力爆弾の元になっていた。
相性抜群って奴である。
あ、天魔は魔力極振りで器用にステータスを一切振ってないけど、フレンドリーファイヤーの心配は一切ない。
ヒーロークラスなので器用さの初期値が高めなのと、まあぶっちゃけ……彼女が天才だからだ。
敵と味方の動きを正確に読んで確実に魔法を当てていく様は、見事としか言いようがない。
流石天才。
さすてん。
たまにボス戦でカードを誤って竜崎にぶつけ、睨まれてる俺とは大違いである。
拙作をお読みいただきありがとうございます。
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