第130話 死なない様に死ぬ気で頑張る
「はぁ、なんとか切り抜けたぁ……」
20匹の、2色の子ネズミ共を何とか討伐。
1色の時より段違いに耐久力と強さ、特に耐久力が増していたので処理に結構時間がかかってしまった。
大城光は何とかしのぎ切ったが、かなりギリギリと言える結果だ。
神崎エデンの切り札である祈りが無かったら、このスタイルで第3フェーズを乗り切るのは難しかっただろう。
あ、祈りってのは、以前ボスを呼び出したスキルだ。
あれは3種類から効果を選べるスキルになっていて、その効果の一つに、瞬間的なパーティーメンバーのHP全回復があった。
一瞬で発動するので、回復が間に合わない様な状況下でもなんとか出来てしまう強力な効果である。
「ここからはGっち大舞台。期待してるからねぇ」
数が倍以上の50に増える第4フェーズは、更に強力な個体が混ざる事もあって難易度が一気に跳ね上がる。
第3フェーズでギリギリだった大城光では、その数を抱えるのはまず無理だ。
第3フェーズを切り抜ける為に、彼女は強力なスキルをもう吐き出してしまってるし。
なので、第4フェーズのタンクは俺が務める事になる。
いわゆる回避タンクって奴だ。
「ああ、死ぬ気で引き付けよう」
天魔のあの極大魔法3連打と、竜崎の切り札。
それ以外のメンツも切り札を残しているとはいえ、子ネズミ50匹を瞬殺する事は不可能だ。
なので気合を入れて引き付けんと。
「頼んだ!じゃあ!【魔力無消費化】!【二重詠唱】!【三重化】!【マジックブースト】!」
マジックアイテムで素早くMP回復を済ませた天魔がスキルを発動させる。
まあ効果は名前から何となく察せられるとは思うが、説明するなら――
【魔力無消費化】
魔法使用時の消費魔力を一定時間消費ゼロにする。
ユニークスキル【魔力】の付随効果。
【二重詠唱】
発動させる魔法の数を倍に増やす効果となっている。
【三重化】
【魔力無消費化】と同じ【魔力】の付随効果だ。
ダブルキャストの強化版で、魔法を三つに増やす効果を持っている。
【マジックブースト】は俺の持ってるのと同じだ。
消費MPを引き上げる事で発動させる魔法の威力を上げられ、最大2倍まで強化可能。
「黒き六連太陽!!」
天魔の必殺魔法が発動する。
元々は単発魔法だが、ダブルキャストとトリニティで6発になってる感じだ。
相変わらず魔法から受ける圧が凄い。
「【闇の再臨】!」
天魔がさらに、装備している暗黒のロッドの固有スキルを発動させる。
直前に使った闇属性の魔法を再度発動させる効果を持ち、実は最初に発動させた魔法が残っていてもそのまま使えたりする。
なので、天魔の頭上には合計12個の黒い太陽が浮かんでいた。
「もういっちょ!【闇の再臨】!」
更に別の暗黒のロッドに持ち替え、スキルを発動させる。
これで頭上に18個。
強大な黒いエネルギーが大量に並ぶさまは正に壮観と言えるだろう。
「ふひひひ……ネズミの丸焼きよぉ」
シヴァティは不気味に笑いながら、両手にデカくて黒い、いかにもって感じの爆弾を掲げた。
今まで使っていた物とは毛色が違うので、こちらも切り札的な何かだろうと思われる。
「子ネズミが出て来たよ!」
グレートマザーラットが子ネズミ達を召喚する。
2色が20匹。
3色が20匹。
そして透明なスケルトンで、羽根の生えた空を飛んでる奴が10匹。
ここからは――
まずはこの二人の広範囲超火力で削り、俺が敵を抱えたら大城光の誘引ビーム――鞭みたいに敵に絡んで引き寄せる謎のビーム――で各個撃破していくって戦法だ。
完全に俺がキーマンなので、討伐の成否は俺にかかっていると言っても過言ではない。
腕の勇気が震えたので、モニターに目をやると――
『一回死んでも大丈夫なんで、文字通り死ぬ気で頑張ってくださいね』
いやまあ確かに蘇生スキルはあるけども……
出来れば死にたくはないので、死なない様に死ぬ気で頑張る所存だ。
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