第125話 G違い
ヒーロークラスは2タイプに分かれる。
一つの能力を極めるタイプと。
複数クラスの力を持つタイプだ。
前者の代表は、竜崎守の究極素体が当て嵌まる。
攻撃スキルは一切なく。
ただただ高い基礎能力に加え。
強力なパッシブスキルのみで戦う単純明快な強さ。
そこに、強ユニークスキルである【竜人化】の基礎能力向上。
更には勇気並みの、天才的戦闘技術。
現在、グーベルバトルにおける文句なしの最強王者だ。
シンプルだから全く隙が無くて、マジでタイマン勝負でこいつに勝てる奴は想像できないんだよなぁ……
で、後者は天魔輪廻の暗黒姫が当て嵌まる。
彼女は普段は闇魔法で遠距離戦に徹してるが、ダークプリンセスは実は近接戦闘でも高いパフォーマンスを発揮する。
そう、黒魔法と近接戦闘のハイブリッドクラスとなっているのだ。
だから盾であるダークナイトを倒せたからって、倒せるわけじゃないんだよな。
グーベルバトルだと。
むしろダークナイトのコントロールにリソースを割いてる分、いなくなってからの方が動きが鋭くなるぐらいだし(敗北者談)。
因みに、天魔輪廻の戦闘技術やセンスは滅茶苦茶高い
流石に勇気や竜崎ほどじゃないけど、俺よりずっと先を行っていると言っていいレベルだ。
ま、回帰も併せて考えるとシーカー歴は結構な物な訳だからな。
その強さも頷けるというもの。
で、シヴァティさんの爆弾魔は前者である。
爆弾による圧倒的広範囲攻撃。
その一点に特化したクラスとの事。
もちろん、彼女の扱う爆弾は普通のものじゃないぞ。
魔物には魔力の籠っていない攻撃は効かないからな。
なので彼女の扱う爆弾は、スキルで生み出されたものとなっている。
「偉大なる母鼠には、範囲高火力が必要だからね。シヴァティには、あたしと並ぶメインアタッカーになって貰う感じね」
偉大なる母鼠。
それが今度討伐する、レベル97のSランクボスだ。
話を聞く限り、相当特殊な奴っぽい。
ボス自体は小型犬サイズのネズミで、戦闘力は皆無だとの事。
その戦闘方法は、大量の子ネズミ――サイズはカバぐらい。どうやって生んでるのとかは気にしてはいけない――をポンポンと生み出し、その子供達を使って数に物を言わせて攻撃してくる感じだそうな。
それだけ聞くと、いかに子ネズミ共を捌きつつ母ネズミを撃破するか。
みたいなボスに聞こえるが、このボス、実は無敵でダメージが一切通らないそうだ。
じゃあどうやって倒すのかって話だが、どうやら子ネズミ母ネズミのHPと連動しているらしい。
母ネズミは合計で100匹の子供を産み。
その1匹1匹が、母ネズミの1%相当のHPに相当するらしい。
なので、100匹倒すとHPを100%削った扱いになって勝利って訳だ。
因みに、取り巻きの子ネズミの強さはレベル90のSランクボス相当だそうな。
Sランクボス100体相手とか、マジで次元の違う強さである。
そりゃセイファーギルドも全滅するわ。
「そしてこの戦いにおけるキーマンは……Gっちだからね。ラスト50体のスポットライトによる敵纏めお願いね」
天魔が俺に頼んでくる。
ラストのタゲ取りを。
「ああ、任せて貰おう」
97レベルボスは、子ネズミを大量に相手する戦いになる。
ある程度までは大城光——ヒーロークラスになった事でタンク能力を獲得——が抱えつつ、漏れが出たら竜崎守を中心とした超火力で始末するという形で回せるだろう。
だがラストの50匹同時は、とてもじゃないが大城光一人では抱えきれない。
だから最後はメインタンク役を後退し、俺と勇気のスポットライトでタゲを集め、ミステリアスの無敵や転移を駆使して子ネズミ達のターゲットを受け持つ必要がある訳だ。
最初からお前らがタンクをすればいい?
MPとSPが持たねーよ。
ミステリアスとか消費えぐいんだから。
まあ勇気がいればできなくもないんだろうが……余程の事が無い限り、自分には頼らない様にって言われてるからな。
「もしヤバそうだったらスカンクバスターも遠慮なく使ってね。ザ、切り札って感じで」
「……ああ」
スカンクバスターは、広範囲にくっさいオナラをまき散らすスキルだ。
通常の魔物にはそれ程でもないが、鼻の良い動物タイプの魔物なんかには効果てきめんで、Sランクボスの取り巻きであるラット共にも、数秒間動きを止める効果が適用される。
50体もの数を数秒間行動不能にする訳だから、正に切り札と言えなくもないが……
人前で使いたくもないし。
出来れば秘めたまま終わらせたい所である。
あ、もちろん、俺のこのスキルをばらしたのは勇気だ。
まったく、ペラペラしゃべりおってからに。
「ただいきなり使われるとちょっと困るから――」
スカンクバスターには欠点があった。
それは、超広範囲にもかかわらず敵味方識別機能がない点である。
当然くらえば仲間達にもデバフ効果が行く事に。
「なんで、使う時は『G行きまーす』って大声で声掛けお願いね。そしたら私達鼻を摘まむから」
いや、そんなどこぞの機動戦士っぽい掛け声上げたくないんだが?
拙作をお読みいただきありがとうございます。
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