第119話 聖女
キャッスルギルドのごたごたから、1年半ほど経つ。
あの後、天魔のSランクボス討伐に参加したり。
キャッスルギルドの生配信や、これまたSランクボスに参加したり。
それと、グーベルバトルの大会が開催されたり。
まあ忙しくも充実した日々を送っていた。
「もしもし」
休日だったので部屋でゴロゴロしていたら、聖から電話がかかってきた。
「光は休みなんだろ。買い物に出かけようと思ってるんだけど、もしよかったら一緒にどう?」
「ああ、いいぞ」
という訳で今日は聖と買い物だ。
待ち合わせの場所で待っていると――
「お待たせ」
帽子を深くかぶり、グラサンにマスクまでした怪しげな人物に声を掛けられた。
「人気者は大変だな」
「まあね」
その不審人物こそ、聖である。
彼は今、こうやって顔を隠さなければいけない程の知名度を得ていた。
聖女として。
え?
クラスは聖騎士なのに、なにがどうなったら聖女になるのか?
ああ、クラスは関係ない。
勿論ランクアップした訳でもないぞ。
じゃあ何が聖女なのかというと――
聖の女性化。
略して聖女。
である。
一時期キャッスルギルドは叩かれまくっていたが、ギルドのマスターとサブマスターが責任を取って辞任した訳だが……もちろんそれ位で悪評が消える訳もない。
そんな折、颯爽と彗星の如く現れ、キャッスルギルドのイメージを払拭した人物がいた。
それこそ女性化した聖。
そう、聖女だ。
男の姿も中性的なイケメンだった聖だが、女性化すると超美女へと変化する。
その姿を生配信でピックアップして配信する事で、それまでは女性にだけ人気のあった聖は一躍、男すらも魅了する魔性の女へと生まれ変わったのだ。
俺からすれば気持ち悪い事この上なしな感覚だが――『元が男でも気にしない。むしろ男だからいい』——とか言う気持ち悪い層が結構多いらしく、一気に男女ともに人気の高いアイドルみたいなスターダムを聖がのし上がった結果、キャッスルギルドの悪評は完全に沈静した感じである。
あ、因みに、これ、大城恵の作戦な。
全く、恐ろしい女だよ。
彼女は。
「ギルドが持ち直してくれたのは嬉しいんだけど……有名になり過ぎて、何をするにも気にしなくちゃならないのが辛いよ」
「贅沢な悩みだな。評判が地の底どころか、地中深くまで潜りに潜ってる俺からしたら羨ましい……いやまあ、別に羨ましくはないか」
男からかけられる、アイドルに向けた様な声望とか気持ち悪いだけだしな。
俺の方の、怪盗Gの評判は酷い感じだ。
人の口に戸は建てられぬってことわざもある様に、俺の能力の秘密がばれてしまったからだ。
そう、俺の秘中の秘——ラッキースケベの秘密が世に知れ渡ってしまったのだ。
他人を女性化した挙句胸を揉む能力とか、そりゃ評判下がりまくりですわ。
ネットで『聖女様の胸揉みやがって死ね』的な書き込みが結構あるんだが……
そもそも、俺が胸を揉まなきゃ女性化しないんだから、せめてそこは許容しろよ。
とか思うのは贅沢か?
拙作をお読みいただきありがとうございます。
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