第113話 たーまやー
「これで2本目ゲット!」
暗黒の杖を渡すと、天魔輪廻が嬉しそうに杖を片手で掲げて可愛らしくジャンプする。
どうやら彼女は既に1本持っている様だ。
一万分一の確率で出る装備なんて、良く手に入れられたもんだ。
まあ買ったのかな?
……それより、二本目が何で嬉しいんだ?
Sランク以降、装備にはオプションが付いている。
が、両手を使って二つの武器を装備しても、効果を発揮するオプションは一つだけだ。
【二刀流】マスタリーや、勇気とリンクして手に入れた【武器装備】は例外だが。
なので、輪廻が二本目の杖を手に入れても意味はないのだ。
ひょっとして神崎エデンも闇魔法の使い手なのか?
それならまあ説明は付くが。
「それじゃ、せっかくここまで来たんだからボス狩りと行きましょうか」
「ボス狩り?」
「そ、ルーンリッチ狩り」
天魔輪廻が訳の分からない事を口にし、俺は眉を顰める。
ここはボスエリアで、そしてボスの姿はない。
俺達が倒したのだから当たり前なのだが、まあ要は、ボスが湧いてないでどう考えても討伐は出来ないのだ。
なのにルーンリッチを狩るとか言い出したんだから当然である。
「おいおい、ボスなんて湧いてないだろ。頭おかしいんじゃないか?って、今思ったでしょ?」
「いや、そこまでは……」
「ふふーん。実は私達、ボスを強制的に湧かす方法があるんだよねぇ」
「えっ!?」
ボスを強制的に湧かす。
そんな真似が出来るのか?
天魔輪廻は?
他の誰かが言ったなら与太話と流しただだろう。
だが相手は天才だ。
きっと何か手段があるのだろう。
スキルかな?
それともマジックアイテム?
はたまた魔法だろうか?
「ほ、本当にそんな事が可能なんですか?」
大城恵が天魔輪廻に尋ねる。
「ふふふ……超絶天才のこの天魔輪廻ちゃんは、嘘はつかないよ。なんだったらこれからボス討伐するの見ていく?」
「叶うのなら是非」
大城恵は天魔輪廻達の力に興味津々の様だ。
まあ俺も、正直に気にならないと言えば嘘になる。
天魔輪廻の力がどの程度なのかは、正気に気になる所だ。
一応俺も、戦いに身を置くシーカーだからな……
優秀なシーカーの実力を知りたいと思うのは、自然な事である。
まあ大半は竜崎守が暴れ倒してってなるんだろうけど、それでも天魔輪廻や神崎エデンの力の一旦ぐらいは見れるはず。
「Gっち達も是非見てってよ」
「分かった」
「オーケー。じゃ、初めよっか。あ、皆はここにいていいよ」
エリア外に移動しようとしたら、天魔輪廻に止められる。
「すーぐ終わるからね」
「すぐ……ですか?」
「そ、すぐすぐ」
大城恵の言葉に、輪廻が明るく答える。
まさか、あのルーンリッチを瞬殺するとでも言うのだろうか?
いくら竜崎のいるパーティーとは言え、そんな真似ができるとは思えないんだが……
「まあここで見てってよ。じゃ、魔法発動させるから……エデンっち召喚お願いねー」
「分かりました」
地面に膝をつき、両手の平を顔の前で組んで祈っていた(?)神崎エデンが立ち上がり、ボスエリアの中央へと向かう。
召喚を頼んだって事は、彼女がボスを呼び出すって事だろうか?
「【魔力無消費化】!【二重詠唱】!そして【三重化】!」
天魔輪廻がスキル名を叫び、先ほど手渡した暗闇の杖を天に掲げる。
そしてその先に巨大な黒い球体が――
「黒き六連太陽!!」
―—六つ天魔輪廻の頭上に生まれる。
とんでもないプレッシャー。
あれを一発でも喰らったら、跡形も残らず死ぬ。
それがハッキリと分かる程のエネルギーだ。
それを六発も同時に生み出すとか……
化け物。
そんな単語が脳裏を過った。
天才を名乗るのは伊達じゃないとしか言いようがない。
「準備は万端よ!」
「では――神よ我が祈りに応えたまえ」
神崎エデンが膝をついて祈りを捧げる。
すると彼女の頭上から光が降り注ぎ、そして――
「おおおおおおお!!」
ボスエリアの中心に、巨大な骨の化け物。
ルーンリッチが湧いて来た。
「本当にボスが!?」
「回収したぞ」
ボスが湧くと同時に、竜崎守が神崎エデンを抱きかかえてボスから離脱する。
「じゃあ……とくとご照覧あれ!この天才美少女天魔輪廻の超火力を!!」
輪廻が左手をルーンリッチへと向ける。
「まずは4発!」
彼女の頭上の黒い太陽が4発。
それが現れたルーンリッチへと襲い掛かった。
「——っ!?」
―—大爆発。
凄まじい閃光。
強烈な熱風が、離れている俺達にまで届く。
肌が焼ける様だ。
「たーまやー」
いや、『たーまやー』じゃねぇだろ。
おもっくそ低空爆発してるんだから、これが花火なら完全に大事故だぞ。
拙作をお読みいただきありがとうございます。
『面白い。悪くない』と思われましたら、是非ともブックマークと評価の方をよろしくお願いします。
評価は少し下にスクロールした先にある星マークからになります。




