第112話 報酬
その場にいる全員が、突然始まった拷問を唖然と眺めていると――
「配信はちょっと前から止めてるんでご安心ください!」
勇気がそう宣言する。
まあそりゃこんなシーン流せんわな。
「貴方方の罪を、神は許したまわれました」
暫く、杭のような尖った金属で何度も自らの肩や腕を刺し、痛みの増幅と伝播で鬼頭達を拷問していた神崎エデンが唐突に手を止め、そう宣言する。
どうやら拷問は終わりみたいだ。
そう思ったその時——
「さあ、お眠りなさい」
「——っ!?」
―—自らの胸元に、彼女は金属の杭を深々と突き刺した。
その瞬間、鬼頭達の体が大きく跳ね。
そして動かなくなる。
「え?いや?え?胸を刺して動かなくなったけど……」
「全員死んだみたいですね。まあ……やらかした事や人格を考えれば、当然と言えば当然の帰結ではあります」
確かに、ふざけた理由でこっちを殺そうとしていたのだから、逆に殺されてもあいつらは文句を言える立場ではない。
が、いくら何でも動けない相手を拷問してその上殺すってのは流石に……
というか、自分の胸を刺して神崎エデンは大丈夫なのか?
神崎エリスは結構な量の血を口から流がしているが、その表情は仕事をやり切った感のある笑顔だった。
何となく死にそうにはないので、まあ本人は大丈夫だなのだろう。
「あー、すいません。うちのメンバーがやり過ぎちゃったみたいで……でもまあ、この人達を外まで運ぶのもリスクが高いし、外に出ても結局って感じっぽいから……別に構いませんよね?」
天魔輪廻が、俺達や聖達の方に向かってそう問いかける。
まあ確かに、こいつらを生かした状態でダンジョンの外にまで連れ出すのはリスクが高い。
竜崎達がいるとは言え、相手は大人数だからな。
なにをやらかすか分からない以上、ここで始末するのは妥当っちゃ妥当だ。
「生きて彼らをダンジョンから連れ出すのは、おっしゃる通りリスクが高いですから妥当な処置かと。お気になさらずに。それより……助けていただいてありがとうございました。お二人も」
大城恵が問題ないと返し、そして俺達や天魔輪廻達に礼を言う。
「まあ困った時はお互い様だ」
「そうそう。伯父さん、大城さん達に大きな借りがあるみたいだし気にしなくていいよー。あ、でもちゃんと約束の報酬は貰うから」
天魔輪廻がそう言って俺達、正確には勇気の方を見た。
「約束した報酬?」
「ただより高い物はありませんからね。助けて貰うに当たって報酬を用意したんですよ。これです」
勇気が髑髏の意匠のある黒いロッドを、俺に見せた。
それは、ここのボスを倒した時に出たアイテムだ。
たぶんレアアイテムだと思う。
鑑定すると―—
暗黒のロッド。
闇属性攻撃の威力が100%上昇。
スキル【闇の再臨】。
―—とでた。
【闇の再臨】は、使うと直前に使った闇属性魔法をコピーして再度発動できる効果だ。
クールタイムは1時間となっている。
「闇属性限定とはいえ魔法100%アップに、無消費で同じ魔法発動か。かなり強力だな」
「まあ、ドロップ率1万分の1ですからね」
Sランクボスから1万分の1って……
超絶激レアじゃねぇか。
そりゃ強い訳だ。
「渡しても構いませんよね?」
「ま、助けて貰った訳だしな」
どうせ俺達には使えない物だ。
売れば超絶高額になりそうな気もするが、聖達の命と比べたら安いもんである。
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