第108話 真似は辞めとこう
「私達はボスに取り掛かります。皆さんはこのまま取り巻きの処理をお願いしますね」
デスウォーリアーの数が7匹まで減ったところで、俺達は攻撃ターゲットをボスへと変える。
全部倒してから取り掛からない理由は、魔物が6匹以下になると、召喚時に6匹になる様複数召喚されてしまうからだ。
なので、常に5から6匹抱える形で戦うのが正解である。
連合バフとラッキースケベが入っているので、今の聖のパーティーだけでもその数はキープできるだろうから、俺と勇気はボス本体への攻撃を開始する。
『カウンター攻撃はかなり早いので、魔眼で注視してその発動を見切って躱してください。当たるとしこたま痛いですよ』
Sランクボスの攻撃は強力だ。
下手に喰らうと一撃で悶絶する羽目になりかねない。
きちんと回避しなければ。
『分かった』
因みに聖のパーティーは、聖騎士の守護スキルでダメージを9割肩代わり――ダメージ量は聖騎士が受けた場合のダメージに変換される――して貰える様になっているので、それを生かし、他パーティーの援護を受けつつボスを正面から殴り倒すというスタンスで討伐する予定だった様だ。
ま、裏切られてその戦略はおじゃんになってしまった訳だが。
え?
お前は99%カットがあるから、聖のパーティーより被ダメは小さいんじゃないか?
あるけど、俺は根本的な防御力が低いからな。
それに装備も違う。
向こうは対アンデッド用のガチガチ装備を身に着けてるけど、俺のは回避特化の防具でしかない。
なので攻撃を受けたら、俺の方が遥かに被ダメージは大きくなる。
パーティーにヒーラーがいるかどうかの差もデカいし。
「よっと」
聖達から少し距離を離したところで、俺、勇気の順でルーンリッチにラッキースケベを掛けると、早速カウンター攻撃が飛んで来た。
どうやらデバフの類でも発生する様だ。
カウンター攻撃は、全身から黒い衝撃波を放つ短距離範囲魔法だった。
かなり出の速い攻撃だったが、魔眼のお陰で相手の魔力の流れが見えている俺ならタイミングを見切るのは難しくない。
なので余裕で回避。
バフで速度もかなり上がってるし、この攻撃が当たる心配はないな。
まあでも油断は禁物か。
喰らうと酷い目に合う訳だし。
『それとマスター。ターゲットを取ったら、間合いを無駄に離さない様に気を付けてくださいな』
聖のホーリーオーラのターゲット固定は、ボスには通用しない。
なので殴ってダメージを出し続ければ、いずれ俺の方にターゲットが向く事になる。
勇気の方にはまあ行かないだろう。
火力が俺の方が高いからな。
『なんでだ?』
『聖さんが正面から受けてるせいで分かり辛いですけど、遠距離攻撃魔法はホーミング機能付きなんですよ。タイミングを見切って間合いを離せばいいだけの今の攻撃より、ずっと回避難易度が高いので』
『ああ、それでカードを投げて迎撃してたのか』
先程ターゲットを取っていた時、ルーンリッチの遠距離攻撃を勇気はカード投げの誘爆で対応していた。
どうやらあれは格好つけてた訳ではなく、ホーミング対策だった様だ。
高火力かつホーミングとか、流石Sランクボスって所か。
俺もカードで格好良く対処……は、しない方がいいわな。
失敗する未来がありありと浮かぶから。
天才肌の人間なら兎も角、俺みたいな凡人はぶっつけ本番は絶対避けるべきだ。
勇気が間合いをあけるなって言ったのも、その辺りを考慮してだろうし。
『それと、こいつは遠距離攻撃に対する耐性があります。なのでカードでのダメージの通りは悪いんで、短剣での攻撃に専念してください』
『わかった。他に注意点は?』
『HPが半減すると呼び出す取り巻きが変わります。それと……嫌らしい地形ダメージが発生する様になりますから、その時点で幸運ブーストを使って押し切っちゃいましょう』
取り巻き変更に地形ダメージまで発生するのか。
嫌な感じだな。
まったく。
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