第106話 ながらスマホ
むう、聖の奴め……
聖はかなり顔が良い。
そのためか、女の姿になったらびっくりするほど美少女だった。
だからなんだって話ではあるが、どこまで行っても顔が良い奴が顔が良いままなんだと思うと、ちょっとジェラってしまう。
まあそんな事より今は――
「私の相棒が魔物を暫く引き付けますので、まずは皆さんの状態を万全にしてください」
Sランクボスとの戦いは、長丁場になる可能性が高い。
なにせ、本来は4パーティーでの討伐だった訳だからな。
俺と勇気が大量のバフ効果を受けている事を考慮しても、短期決戦は難しい筈。
だから今に至るまでに消耗しているだろう聖達には、このタイミングでアイテム類で回復して貰う。
長丁場に備える為に。
「奴を倒すのはそれからです」
「分かりました。各自、消耗に合わせて回復を」
大城恵さんが、アイテム類を取り出し聖達に配った。
俺のミステリアスホールと同じ、インベントリ系のスキルだ。
本来ヒーラーにそんなスキルはないが、スキルブックで習得していたのだろう。
「怪盗Gさん!私達を助けに来てくれてありがとうございます!」
ショートカットの凄く可愛い女の子——美少女と言って差し障りない。後、胸が大きい――が、俺に向かって綺麗に垂直に腰を折る形で頭を下げた。
「私、大城光って言います。クラスはダンサーです」
ダンサーは希少かつ、集団戦においては相当優秀なクラスになっている。
ヒーロークラスではないが、世間一般的な評価で言うなら大当たりだ。
「君のバフには期待しているよ」
「任せてください!私のユニークスキル演舞刃はスッゴクダンサーと相性がいいんで、ガンガンバフを賭けていきますから!」
さっきデスウォーリアを叩いている時、大城光の周囲には無数の光の刃が浮かび、彼女の動きに合わせてそれが魔物を攻撃していたのを俺は見ている。
ダンサーは攻撃時一定確率(若干低め)で累積していくバフをかけるクラスなので、それと相性がいいという事は、その刃での攻撃でもバフは発動するって事だろう。
因みに、ダンサーのバフはパーティーだけではなく、一定範囲内にいる連合員にもかかる仕様だ。
「それにしても……怪盗さんって凄いんですね。色々な意味で……」
大城光が、勇気の方を見てそう言う。
今現在、Sランクボスであるルーンリッチと、その取り巻きである10体以上いるデスウォーリアを、彼は一身に引き受けてくれていた。
勇気の動きは見事としか言いようがない。
魔物の動きを完璧に読み、最小限の動きで躱し。
時にはスキルを使い、大胆に殺到する敵の中をかき分ける姿。
そして左手に握られたスマートホン。
更に忙しく動く、その左手の親指。
正に達人の……いや、何してんだあいつ?
Sランクボス相手に、ながらスマホって正気かよ。
余裕かましすぎだろ。
それに何をそんなに打ち込んでるんだ?
匿名掲示板で、無限レスバトル篇でもやってんのか?
だいたい、回線はダンジョンでは繋がって……ああそういや、テレパシーつけっぱなしだったな。
まさかあいつ、ボス戦でながらスマホ弄るために俺にスキル使わせてたのか?
うーむ……あいつの考える事だけは本当に分からん。
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