第104話 ノーカン!
「ですから、ここにいる皆さんのおっぱいを揉ませてください」
『いやいやいやいやいや!何言ってんだお前!それじゃただの変質者だろうが!!』
勇気に任せていたら、とんでもない爆弾を放り込みやがった。
目の前の女性——たぶん王城恵さんだったかな?——も、唐突なセクハラ発言に思いっきり固まってしまってるし。
全くこいつは……
『最終的には揉む事になるんですから同じですよ』
確かに最終的には揉むことになる。
それは否定しない。
だが、物事にはステップというものがあるのだ。
すっ飛ばすんじゃねぇ。
「すいません、ちょっと話が突飛すぎましたね。実は……私達にはバフがあるんです。その条件が、相手の胸を揉むという特殊なものでして」
勇気に任せてると碌な事にならないので、俺が代わりに引き継ぐ。
「あ、ああ……なるほど……いやでも、胸を揉む……」
説明したが王城恵は訝しげだ。
まあ聞いた事もないだろうし、俺達の格好は怪しいことこの上なしなので、あっさり信じろという方が無理な話ではある。
とはいえ、ゆっくり信頼を掴んでいる暇はない。
聖はまだ大丈夫そうに見えるが、流石に長々とヒーラーをとっ捕まえて話し込むのは問題だ。
「怪しまれるは分かりますが、人の命のかかっているこんな状況で嘘をついたりはしません。それに、呑気に話している時間もありませんので信じてください。お願いします」
「そ、そうですね……分かりました。貴方方を信じます。ですから、どうかお力をお貸しください」
普段ならこう簡単にはいかないだろうが、状況が状況だからな。
相手もこちらに縋らざるえないので、話は早い。
『マスター。ドロップ交渉もお忘れにならずに』
『分かってる』
「分かりました。ですがその前に一つ」
「あ、ちょっと待ってください……はい、なんでしょう」
王城恵が聖の方に回復を飛ばし、それから再び俺達の方をむく。
この状況でもきちんと仕事を忘れずこなせるあたり、流石大手ギルド所属と言わざるをえない。
「ボス討伐時のレアドロップ系は、此方が全て頂きます。私達にはレアドロップが確定する特殊スキルがありますので。いいですか?」
「レア……確定?そんなとんでもないスキルが……分かりました。今の私達は何より生存を優先ですから。なので、ドロップも含めてすべて差し上げます」
「ありがとうございます」
交渉成立、と。
さあ、聖の奴を助けてやろう。
「そちらのパーティーのリーダーはどなたです?」
勇気が、王城恵にパーティーリーダーが誰かを尋ねた。
「リーダーは私です」
「実は此方には連合専用の強化スキルがあります。ですので、連合をお願いしますね」
「連合スキル……ですか?」
連合スキルと聞き、王城恵が再び訝し気に眉を顰めた。
まあ隠し通路で手に入れた物だからな。
知らないのも無理はない。
俺も知らなかったし。
しかし……手に入れた時はどこで使うんだよって思ってたスキルだけど、まさかこんな所で使う事になるとは夢にも思わなかったな。
「今から連合を送りますので」
俺は王城恵に連合申請を送った。
因みに、やり方は事前に勇気に聞いている。
「ちょっと待ってくださいね。先に一旦切ってから……」
王城恵が少し待ってくれと言って来た。
まあ多分、外にいる奴らと連合中だから――切ってる余裕もなかっただろうし――それを解除しているのだろう。
「受けまし……え?これは……凄い。MPとSP……それに生命力も大幅に上がってます。本当に凄いです。このスキル」
「火力や耐久力、それに魔法の効果も上がるんですよ。凄いでしょ」
勇気がドヤ顔だ。
マスクをしているが、声色からそれがハッキリと分かる。
「他の方々も、私達に気づいたみたいですね」
聖と一瞬目が合う。
いきなり強力なバフがかかったのだ。
必死に戦っているとはいえ、まあそりゃ気づくわな。
『さあそれでは、Sランクボス討伐と行きましょうか。まずは揉み揉みタイムですよ、マスター』
言い方よ。
あと、今から聖を女体化して胸を揉む事になる訳だが……
冷静に考えると、なんというかこう、久しぶりの友との再会がそれってどうよって気がしてならない。
こっち完全に不審者だし。
まあ命がかかってるから、気にしてる場合じゃないんだけどさ。
カッコよくとまではいわないが、出来ればもっと普通に再会したかったところである。
『こちらの正体は分からないわけですし、別にノーカンでいいんじゃないですか』
勇気が俺の心をピンポイントで見透かしてくる。
こいつ、マジで俺の心の中が見えてるんじゃないだろうな?
まあでも、確かにそうだよな。
聖から見たら俺は謎の怪盗、ダブルGであって王道光ではない訳だし。
うん、そうだ。
これはノーカンだ。
ノーカンノーカン。
憂いが消えた俺は雑念を捨て、Sランクボス討伐へと意識を集中させる。
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