立ち食いそば屋にて
本羽香那様「一足先の春の詩歌企画」参加作品。
最後に川柳を添えています。
会社で出店するイベントの設営に駆り出された。
昼に商談があるのだが、午前中のスケジュールが空いており、かつ、商談の場所とイベント会場が近いので断れなかった。
やることはもっぱら搬入作業。要は力仕事だ。
大小さまざまな段ボールや、テーブル、椅子等をひたすら運ぶ。
これは絶対、明日筋肉痛になるやつだ。
作業が終わると、熱い缶コーヒーを1本だけ振舞われ、その場はお開きとなった。
「せっかくだからイベント見て言ったら?」
とも言われたが、大型会場で凄まじい入場者が見込まれる。
申し訳ないが、人混みは苦手なので辞退して外に出た。
開場時間よりまだ少し時間があるのだが、すでに列が出来ている。
抜けて正解とばかりに駅に向かった。
駅もかなりの人混みだ。
(ちょっとこの駅で電車に乗りたくないな・・・)
次の商談まではまだ時間もある。二駅なので歩いてしまおうと思った。
線路に沿って数分歩き、次の駅に辿り着く。この調子ならもう一駅は余裕だ。
私はそのまま歩いた。
(今日は暖かいな)
肉体作業をしていたこともあり、歩いていると汗ばむぐらいだった。
(外で汗をかくなんて久しぶりだ)
周りを見ると、今日は軽装な人が多い。そう言えば天気予報では『昼は3月下旬並みの陽気』って言ってたっけ。
気持ちはまだ正月気分が抜けて無いが、もう節分もバレンタインも終わっている。そろそろ切り替えなきゃな。
目的の駅に着く。たった二駅隣とは思えないぐらい落ち着いている。
時間を見るとまだ少し余裕があった。
ここは何度も商談で来ており、勝手知ったる地。心にも余裕が出来ると腹が減って来た。
蕎麦ぐらいなら食べる時間はある。
やはり、勝手知ったる駅前の立ち食いそば屋に入った。
店内に入ると、むわっとした熱気に襲われる。
歩いてきた身には暖房なんていらない陽気なのだが、空調が噛み合わないのも季節の変わり目あるあるだ。
私は額の汗を軽く拭って券売機に向い、メニューを軽く物色した。
鴨南蛮って気分でもないな・・・
さて・・・
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コート脱ぎ
冷やし掻き揚げ
稲荷2個
ー了ー
最近あった「春っぽいな」と思った光景を書いてみました。
本当はこの前文のような光景を5、7、5だけで浮かばせるのが俳句なんだろうけど、その腕が無いのでこうした次第。。。
しかし、これは俳句になるのだろうか?
季節っぽいワードは入っているけど・・・「コート脱ぎ」は文なので、季『語』ではない気もするし、冷やし掻き揚げ蕎麦も今は年中あるので季語ではない気がする・・・
と言うことで前書きには「川柳」と書いています。