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◆17 白馬の王子様

 ブルフォード公爵領は、東側に位置しているとても広大で豊かな場所だ。



「あ゙ぁ゙ぁ゙~~~」


「ダンテさま゙ぁ゙ぁ゙~~~!!」



 そして今日、諸事情により領地に向かう事になったのだが……メイド達に泣かれてしまっている。


 おいおい勘弁してくれ、どんだけイケメン好きなんだ。ウチの使用人達は面食いか? 女性はそういう人が多いとも言うが。これはさすがに泣きすぎだろ。



「すぐ戻ってくるから」


「でもっ、領地まで1週間ではありませんかっ!」


「2週間以上もダンテ様とお会いできないなんてぇぇぇ~!!」


「ほら、落ち着いて」


「ダンテ様がお困りですよ」



 だが、パタパタと皆失神して倒れてしまった。微笑んでいたらしい。俺が出かけてしまう事をこんなに寂しく思ってくれている使用人達が嬉しくてついうっかり。やらかしたか? と顔でカーチェスに聞くが、やれやれと呆れていた。やらかしたらしい。とりあえずまだ生きている使用人達に任せ、少し遅めの出発となった。


 首都から領地にある屋敷までおよそ一週間。それだけ長い道のりでも、この最新鋭の乗り心地抜群な馬車ならそんな道のりは苦ではない。初めての領地行きだったから心配事も多々あったが、これなら大丈夫だろう。


 ブルフォード公爵領は、領地内の治安は良い方だ。そして生活水準も高め。それだけルアニスト侯爵はちゃんと領地経営をしていたという事。まぁ、皇帝陛下へ毎年報告をしなければならないから、というのが理由だろうがな。


 ブルフォード家代理人の誓約では、既定の生活水準をクリアしないといけなかった。だから、散々な結果であれば代理人を辞される可能性もあった。その点は感謝しよう。


 さて、今日から一週間移動しっぱなしとなるわけだが……毎夜毎夜貴族の邸宅に泊まらせてもらう事となる。と言っても、一回だけ野営となるが。


 今回は、カーチェスが安全かつ安心して夜を越せそうな貴族の邸宅を何とか探し出した。俺は公爵だが、こっちは泊めさせてもらう側。そのため文句は言えない。



「お久しぶりですね、ご厚意感謝いたします。チレスト子爵、ご夫人」


「ようこそいらっしゃいました、ブルフォード公爵」



 今日泊まらせてもらうのは、チレスト子爵の邸宅。夫婦揃って歓迎してくれた。そして……



「ほら、ご挨拶なさい」


「あ……お、はつに、おめに、かかり、ます」



 あらら、可愛らしいお子さんだ。恥ずかしがり屋なのか夫人のスカートから顔だけ出してる姿がとても可愛らしい。


 俺は、ご令嬢の目の前で目線の高さにまでしゃがんだ。子爵達は俺のこの行動に驚きを隠せず、どうかその様な事はなさらないでくださいと困惑していたが、大丈夫ですよと返し、ご令嬢にお名前を聞いてみた。



「……ミナです」


「はは、可愛らしいお名前ですね。レディにお年を聞くのは無礼ですが、おいくつか教えてくださいませんか?」


「お……」



 ん? お?



「お……おうじさま……!」



 俺を見つめる目がキラキラしている。王子ではなく、悪い大人の間違いだよ、お嬢ちゃん。顔で騙されちゃダメだ。


 申し訳ありません、とご両親は謝罪していたが、大丈夫ですよ、と口元をゆるませ返しておいた。抑えつつの笑顔である。夫人や周りにいるメイド達になにかあれば面倒だ。それにミナ嬢には刺激が強すぎる。


 すぐに、用意してくれていた部屋に案内された。遠くから、こらっ、とミナ嬢を叱る夫人の声が聞こえたが聞かなかった事にしよう。


 このイケメンは幼女をも魅了してしまうみたいだ。覚えておこう。



 食事中も、俺の事をキラキラした目で見つめてきたミナ嬢。因みに5歳だそうだ。



「はくばにのってきたんですか?」


「白馬は屋敷にはいますが、今日は魔法の馬車で来たのですよ」


「ほんと!!」


「こらっ」



 可愛い、本当に可愛い。子供は純粋だから本当にいいな。俺をギラギラした目でロックオンして猫撫で声を聞かせてくるご令嬢達より断然な。この前もえらい目にあったから余計だ。



「これはこの領地で採れたブドウから作られたワインなんです。いかがですか?」


「とてもフルーティーで飲みやすいですね。お酒が苦手な方でも気軽に飲めそうだ」


「えぇ、そのお陰で女性の方に好まれています。最近はあのロゼワインが流行して人気は下がりましたがね。ですが、さすがメドアス伯爵だと思いましたよ」


「私も購入して飲んでみたのですが、あのロゼワインもとても良いワインでした。口当たりも良いですし、料理にもよく合う味です。ですが、これも悪くない。私は気に入りましたよ」


「そうですか! ありがとうございます、公爵」


「折角の機会ですから、こちらで何本か購入させてください」


「いえ、公爵様でしたら年代物をプレゼントいたしますよ」


「これだけ素晴らしいワインなのですから、そのまま貰ってしまうのは少々心苦しい。ですから、きちんと代金を支払わせてください」


「はは、それだけ気に入ってくださるとは。恐縮です」



 この話は本当だ。俺は今までワインをあまり飲まなかったから、憑依後食事中に出てきたワインを飲んだ時味がとても濃くて戸惑った。ダンテ自身がアルコールに強いから酔っぱらいはしなかったが。


 だから、このワインはあまり飲んでこなかった俺の口に合ったのかもしれない。



「それは?」


「これはお酒ですから、ミナ嬢にはまだ早いですよ」



 この国での成人は20歳、お酒も成人してからだ。その点は地球と変わらない。


 俺のその言葉に、ミナ嬢はふくれてしまった。同じものが飲めず不機嫌になってしまったようだ。



「どうしたら、おとなになれますか?」


「そうですね……素敵なレディになれるよう一生懸命お勉強をすれば大人になれますよ」


「ほんと!」


「はい」



 可愛いなぁ、頬が緩みそうだ。だがしっかり持っていないと犠牲者が出るからな、ここを殺人現場にはしたくない。


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