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オトメチカ  作者: 感 嘆詩
第1章 千日紅
9/61

被害者と被害者

「ようこそ先生。よくぞ御曹司の妻子を連れてこられた。ここならば、領主様といえども手出しは出来ません」


「ありがとうおじいちゃん」



 ダンジョンから脱出後、どこからともなく現れた従業員さんに、山奥の別荘、実際には要塞化された館のような、行商のおじいちゃん家に案内された。


 獣人冒険者の四人も、やっと肩の荷をおろして楽にしている。



「ご自身の孫の命を狙っているというのですか?」


「そこが、私も腑に落ちないのです。お弟子殿。元々、理性と公正の御方だった。獣人の国で人質として過ごした経験から、彼の国との貿易で領地を栄えさせた。尊敬する為政者だったのだが。こんなことになるとは」



 乙女ちゃんの疑問に行商のおじいちゃんが嘆く。



「なら恨む理由は充分でしょう。年取って、政治に私情を挟むようになったんだろウサ」



 前歯でサクサクとビスケットケーキをかじって兎獣人ギロチン・ゼラチン。



「住人としては我慢できても、身内に入ることは許さニャかったのね」



 羊のチーズを頬ばりながら猫獣人のキキキが悲しそうに。



「あるいは理性的だからこそ、弾圧しているのかもしまチェん。領主様が過ごした幼少の頃とは違い、我らが故郷はもう国としての体裁を為してない。彼処はもう、諸部族の自警に任せた暴力の世界です。排除した方が、この地の平和のため、なのかも」



 ヒマワリの種を割りつつ鼠獣人猪屠権屠猪(ちょさくけんふりぃ)が故国に想い馳せ、


 ……いや全然楽にしてない。苦悩しとる。



「どんな理由であれ、子供を殺すのは悪い事だろう。問い質そうじゃないか本人に」



 おじいちゃんが手づから淹れた砂糖たっぷりのお茶を飲む。甘い。健康に良いと聞くし、このお砂糖とやら、麦酒に入れたらカンペキなんじゃなかろうか。



「問い質すって、兵隊の数も質も……いえ、あなが居たワンね。正面から大手振って押し通るのね」



 知的な犬獣人、ビッグ・ザ・ワン大神が慎重な意見を言おうとして、直ぐに諦めた。


 失礼な。ちゃんと搦め手を用意しているよ。



「驚かないのか、御曹司の妻が獣人で」



 わいのわいの皆で騒いでいると、上座で居心地悪そうにしていた奥方が、私に話しかけてきた。



「驚いたよ。獣人って男同士でも子どもが作れるんだね」


「千日紅師匠!ハイエナ獣人の方は性差が少ない方たちなのです!」



 え、どういうこと。女の人なの?



「ハハッハハッ。仕方ありまチェん千日紅さん。わたくしも最初、殿方と思っていました」


「マダラ先生はオスっぽいの利用して男装してたからニャー。自業自得だ」



 四獣人たちがきゃんきゃんぴょんぴょん集まって奥方に絡んで巨大な毛玉みたいになった。楽しそうで何より。



「先生なのかい?えーと、マダム・マダラ?」



「ああ、ちょーと前までな。よろしく。チカク先生」



 男前なウインクを食らわされた。むむむ。



「爺さんからダンナ奪い返すの、手伝ってくんね?」



 握手を迫られた。なんなんだこのイケメン。むむむ。

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