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オトメチカ  作者: 感 嘆詩
第2章 延胡索
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神の座へと至れよ皇子10!!

迦楼羅(この子)はね、ここではないどこか異界にて、神のごとき力を持った(モンスター)を殺した逸話をもつ神殺し(ジャイアントキリング)の権化なんだ。普段は、というか緊急時だろうと私の階級じゃとてもそんな力は振るえないからいつも出力を落としてるけどね」



 夢の中なら使える、と。師匠は言外に語りました。師匠の契約モンスター、ガムシャラさん改め迦楼羅(ガルーダ)さんは宇宙蛇(ウロボロス)さんが口から放つ光の穿孔を跳ね返すように自身も同じくらい光り、その輝きによって力を拮抗させているようです。



「さて、このまま決着は夢見が悪いからね。ベストは無理でもよりマシにしなくては。乙女ちゃん。打ち合わせどおりに」



 え、あっ!現実でやってたあれですね!疑義を挟む余地もなし!契約で繋がってる私達なら、こんなに離れていても指示は届くはず!



「不和をもたらせ 黄金果実(マルメロ)



 ドゴン、と。宇宙蛇さんの長い胴体の半ばにヒビが入りました。マルメロさん、つまり元メカモカ姐さんが内側で工作してくれていたみたいです!この事態の為に、現実世界にて昨晩のうちから地下施設に潜ませていたのですね!流石は師匠!



「なるほど。桔梗姫橘(ベルフラコンコート)が主君殺しをした理由はお前か」


「フォーミュラ木瓜(モッカ)!なぜお前が!なんだこの破壊力は!あり得ない!なぜ気づけなかった∞!」


「知らないのか?魔法の可能性は無限大なんだ。壊す方法はいくらでもある。加えてこの肉体はお前の中で生まれた。簡単に潜めるよ。さらばじゃ宇宙蛇。我が君と同じ、別の誰かよ。ほらヒビはいれたぞ千日紅(ちかく)!」


「了解モカ姐。復唱しろタタリモッケ 真似っこ(ミミクリー)


『み み く り ー エ ン プ ー サ』



 召喚されたタタリモッケさんが他者の異能を模倣するスキルによって、夏都シダレモモさんの契約モンスターシェイプシフトさんのスキルを発動させました!

 舞台は夢(エンプーサ)、縁深きシェイプシフトさんのそのスキルは、関わった他者を模倣するスキル!それによって現れるのは!



「さあ、珊瑚蛇(コーラルコブラ)、体を取り戻せ」



 タタリモッケさんの姿が瞬時に消え、ほぼ同時に長大な宇宙蛇さんの胴体が半ばから真っ二つに割れました!その衝撃で、更地になった城跡が、更に耕されていきます!現実じゃなくて本当に良かった!



『お祖父様、いえ、更にそれを操るご先祖さま』



 宇宙蛇さんの割れた下半身から、同様の頭が生えてきて二匹、いえ二人に別れました。あっちは珊瑚蛇さんが乗っ取ったのですね!!その名にふさわしいように、珊瑚蛇さん側の肉体は徐々に珊瑚色に変色していきます。



『あなたにとってこの星は仮宿でしかないのでしょうが、故意だろうと事故だろうと僕たちは生まれた。あなたの子孫はこの星で生きているのです。貴種と定められた余は、彼らを慰撫する責任がある』


『責任だと!テラフォ(T)ーミング(F)システム(S)のランダム生成生物の分際で!生きてる意味を価値を!神を見出だすな!朕こそ崇めよ!』



 宇宙蛇さん側の断面からも蛇頭が生え、双頭の蛇に変化しました!片や師匠と拮抗、片や珊瑚蛇さんに対峙、二正面の戦闘を凌ぐだけの余力がまだまだあるということでしょうか!?

 宇宙蛇さんの逆側の頭からも光が走り、珊瑚蛇さんを抉る、瞬間、珊瑚蛇さんの蛇頭が宇宙蛇さんの口を塞ぐように咥えて攻撃を塞ぎました。遠目に見たら再び一匹の蛇に戻った様なシルエットです!巨大なので遠目にみることはできませんがね!



『クラック!?それほど…夢の中とは精神の世界!悠久を生きる朕に、勝てると思うなオスガキがぁ!』


『余の肉体(コーラルコブラ)はあなたの(Coroar)(A)(Obra)なのでしょうご先祖様。ならば精神もそれに準じますよ』



 何やら二人の間に大きな綱引きが起こり、お互いの頭を噛み合い絡み合いながら、元の一匹に戻るようにその蛇身が変化していきます!一つになりながらも、宇宙蛇さんのギンギラな金属色が珊瑚桃色に塗り替えられています。珊瑚蛇さんが押していますよ!



『ぐぐぐぐぐっ……くぅー☆さすが朕の最高傑作!シンギュラリティだよぉぉぉぉ☆彡』



 神のごとき獣人の始祖が、最後には子孫を言祝(ことほ)ぎ、完全に沈黙しました。宇宙蛇さんの全身はすっかり桜色に染まりきり、師匠へぶつけていた光の穿孔も停止。

 そうか。なんと言うことだ。この国を、この世界を、師匠が救ったのですね!

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