御鳥巣にて臥す4
「なぜだ!義も礼も弁えぬガキのくせに何故この私に並べる!?」
「わーはははははっ!いっちばん大事な仁で溢れておるからだ!弁えておらんなガキ!」
どちらもガキ、というか魔法少女の姿をした本体のモカ姐さんと本物のモカ姐さんが互角の戦いを繰り広げています!
片や本体の魔法少女モカ姐さん、基本四属性の魔法を、フォーミュラの2つ名にふさわしい応用発展により千変万化させ、水と火が爆発したり、火と気体が爆発したり、水と金属が爆発したり、とにもかくにも爆発すること頻り!
片や本物のモンスター受肉モカ姐さん、シダレモモさんの契約モンスターシェイプシフトさんのスキルによって肉体を部分的に変異させ、爆発を躱し、軌道を逸らし、または自爆で相殺、と軽々対処していきます!
なるほど、魔法少女モカ姐さんとメカモカ姐さんの勝敗の差が各人の肉体の差であったならば、モカ姐さんが夢の中で自在に操作していたシェイプシフトさんの肉体はその差を埋める!
「魔法少女チョップ!」
「ぐっ!ぬぉっシダレモモぉ!!」
「私の名、覚えていただけましたかモッカ様!」
二人の応酬の合間に、暗殺者としてのアビリティで本体モカ姐さんの首を狙う夏都シダレモモさん!もちろん、師匠はタタリモッケさんの影縫いの術で本体モカ姐さんを釘付けに、私は野次でこの戦いに貢献していますとも!
御簾の帽額も、魔法少女の決闘空間に入れないヴィタ公シバ公珊瑚蛇殿下に人工珊瑚たちも、みんな一丸になって本物モカ姐さんを応援しています!流石は尾長帝国の重鎮、圧倒的なカリスマ力ですね!
「グラビティ」
「ほぉ五属性目だ。とっておきだな」
魔法少女モカ姐さんの呪文詠唱と千日紅師匠の感嘆!マホモカ姐さんを除いたみんなに急激な負荷がかかり全員が倒れ伏しました。あ、決闘空間外の皆さんには影響ないみたいです。直立不動の珊瑚蛇殿下が魔法少女のパンツでも見てしまったのかあわてて目を逸らしてます。自分の方がよっぽどあられもない格好してるのに!
「グラビティ返し」
「な、なぜその体でこの魔法を!」
「我輩も私、だからじゃよ私」
何と、マホモカ姐さんだけでなく、モンモカ姐さんまで第五属性魔法を発動させました!流石本物!ですがいったいどうやって?
「GotiscJungeのスキル、眠りのルーンを使いました」
「その前に、オレサマの《剃刀花》で空気を燃やした。皆まとめて酸欠で昏倒させて、そこから巌窟王のモンスターが眠らせたのさ」
死人花さん複雑な技量かつ乱雑なやり口ですね!つまり、今この空間は夢の中、ということですか。だから魔法も自由自在。そして夢と気付かないマホモカ姐さんはその何でもありを上手く活かせない!シダレモモさんを中心とした弟子たちとの協力プレーを、過去の存在であるマホモカ姐さんは知らないから!
「さあ、乙女さん、心苦しいですがご助力を。あのイタズラをはじめちゃってください」
策謀を巡らせるお姉さん、至福ロールリエさんから解禁の指示が!かしこまりました。いきますよ。新メンバー紹介です!
「召還!齎せ 『黄金林檎』!!!」
「女三人集まれば姦しい!それが自分自身なら尚更よなぁ!三位一体の女神のようだな私たちよ!」
「何だそれはっ?機械の体が、モンスター扱いになったとでも言うのか!?」
私は新しい契約モンスター、マルメロさんまたの名をメカモカ姐さんを召喚しました!
一時期首だけだった肉体は元通りどころか、魔法少女との契約によるものかはたまたこの夢の世界の作用なのか、他のモカ姐さん達と同じく見た目は少女、さらに追加パーツが沢山つきまして魔法少女めいた荘厳なデザインへと昇華!言うなればパーフェクトメカモカ姐さんとなりました!
私自身は練度の低い未熟な魔法少女ですが、モンスターさんはそうではありません!丹精込めて魔力を注ぎ込み召喚しましたよ!……あれ、何か忘れている気がします。いえ、今はこの勢いのまま駆け抜けねば!
「獣人重力場発生装置改め、《満月》」
「うおっ!重心どこいった!」
「古代技術がここまでのものとは!?」
見た目少女のお三方がそれぞれわちゃわちゃと空中を溺れるように泳ぎ、魔法や銃弾を撃ち合っています!これだけやって、やっと魔法少女の肉体をもつマホモカ姐さんを追い詰められそうです!流石、恐ろしいスペックですね魔法少女の肉体は!!
「クイック」
「うぅわぁお、六属性目だ。今日は誰かの誕生日なのかな」
珍しい魔法が見れて、千日紅師匠も大興奮です!追い詰めたと思ったマホモカ姐さんがまた私達を突き放していく!強すぎる。流石は竜帝の筆頭魔法少女です!
「スロウ」
「加速装置改め、《不可避》」
モンモカ姐さんメカモカ姐さんも対抗していくぅ!もはや私達一般魔法少女では太刀打ち出来ない領域です!か、勝てるのでしょうか私達?
「勝ったよ乙女ちゃん。これで詰みだ」




