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オトメチカ  作者: 感 嘆詩
第2章 延胡索
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御鳥巣にて臥す

 魔法少女の頂点にしてかがく(古代文明)の申し子となったモカ姐さん同士が争い、私たちのいる地下空間は目茶苦茶に!

 対角線上にて、大見得を切った大立ち回りで人工珊瑚(コーラルコピー)さん達と押し合い圧し合いしていたヴィタ公シバ公コンビも余波で吹き飛ばされ全員が元々薄着だったため大変な事になっています!

 メカモカ姐さんの両腕が縦横無尽に飛びまわりモカ姐ジオリジンさんを引き裂こうと攻め寄せます。モカ姐ジオリジンさんはいかなる魔法の作用か、分身し、透明化し、水の刃でいなし、とメカモカ腕を躱しました!そのままメカモカ姐さん本体を袈裟斬りに!凄い!流石はベテランの魔法少女です!



「中身が同じなら付け焼き刃の方が負けるのは道理よな、私?」


「半日あればなぁ!」



 ほとんど首だけになり転がるメカモカ姐さん。あの状態では喋れなさそうですが、かがくの体は発声の仕組みが違うのか、大声で喚いています。モカ姐さんらしく元気一杯です!



「さて、ここの秘密を知った以上、生かしては帰しません」



 わあ!凄い魔法少女が凄まじい笑顔で次は私たちに殺意を向けました!珊瑚蛇(コーラルコブラ)殿下もまとめて始末する気ですね!主筋なのに!殿下、本当に蚊帳の外です!



「ああ、なんだこっちもちゃんと狂ってたか。解釈違いだよモカ姐。魔法少女はね、そんな下らないことで人の命を奪わないんだ」


「「え?」」



 あ、肩を寄せあって震えていた私と殿下の声がハモりました!ちゃんと男の子だから声がアルトボイスなんですね殿下!



「健気な女の子にカボチャの馬車をプレゼントするし、旅の無事を祈っておでこにキスをするのさ。私情で囲ったり、声を奪ったり、獣に変えたり、毒リンゴをあげたりなんて、しないんだよ」



 魔女はするんでしょうね!一連の悪行!何かを得るための代償と嘯いて!!



「己の制御が利かないから、育てた子らの顔も曖昧になったから、こうして科学に頼ったのだ」



 喚くのをやめポツリと呟くメカモカ姐さん。まさかのあっちが善玉パターンでしたか!雰囲気に騙されてました!メカモカ姐さんも私たちを始末しようとしてたので、どっこいどっこいですけどね!



「何故あのタイミングで本体が目覚めた。裏切ったのかシダレモモ!」


「ちが、私じゃ」


「わたくしが裏切りましたわ木瓜(モッカ)さま」



 何と!私たちが来た通路から、タタリモッケさんがしたようにひょっこり顔を出したのは、夢の中での山城での団体戦(ぱじゃまぱーてぃー)でも棄権し、現実でのこの梟臭(きょうしゅ)城での一連の戦いでも描写なく終わった至福(マカローン)ロールリエさんではないですか!?



「保険が、仇になったか」


「ああ、木瓜さまのおっしゃる保険とは、賄い方(執事)としての夏都(弟子)や、魔法少女(呪文使い)としての死人花(弟子)魔女(呪印使い)としての巌窟王(弟子)、等々へと縁を辿って呪われないようにするための、わざと繋がりの薄い至福(弟子未満)のことです。誰かが必ず、御家再興に動けるようにと。《呪詛が得意な魔法少女》も世の中にはおりますからね」



 千日紅(ちかく)師匠に目配せする至福(マカローン)さん。なるほど、おそらく《呪詛の魔女》なる方がいるのですね!というか、やり取り的に、至福さんが裏切って着いた陣営はこちら側?



「私の存在理由は御家再興の為に、です。それは14年前、そこのボケた木瓜さま達のどちらでもない、龍帝の遺したこの国を信じていた頃の木瓜さまから仰せつかった大事な使命です。たとえ、木瓜さまの気が変わろが、違おうが、違える事のない神聖な約束なのです」



 私が生まれる前、師匠が生まれたくらいの話です!てっきり、夏都シダレモモさんが最年長だと思っていたのですが、至福さん、かなりお姉さんですか!?



「ダレモちゃんのおしめは私が替えてましたよ」



 かなりお姉さんでした!



「そう。本懐は遂げられないのではなくて?私を眠らせまままにして、あそこのがらくたを皆でボコれば良かったのに」


「それじゃあ、意味がねえ」



 な!今度は死人花ジーパングッドさんが通路からひょっこり顔を出しました。そんな、城門付近でノビてたはずでは!?



「ワタシたちの手で引導を渡さなくては。それが、この乱世の尾長(へび)帝国を生き抜き、龍帝の天下統一を導いた、御簾の帽額(カーテンヴァランス)の教えだから」



 巌窟王ケイブインゴッドホープさんまで!その後ろからも続々魔法少女さんたちがひょっこり顔を出してます。なぜ全員顔だけ!というか一連のやり取り、全部演技だったのですか!?



「やっぱりロートルでローカルなサークルって発想も中世なんだね」



 茶化しちゃだめなシーンですよ千日紅師匠!



「なによ、これ。全部、悪い夢なのかな」



 ああ、唯一知らなかったらしい夏都シダレモモさんが、ちょっと前のアイデンティティ崩壊した珊瑚蛇殿下みたいな表情に!



「そう。なら死になさい。顔も名も知らない、可愛い弟子たちよ」



 スタンバイ、オトメティカ



 第7階級という超常の魔法少女の宣誓。魔法少女同士の決闘のフィールドが地下空間を包み、老淑女が一瞬で若返りました。何だか懐かしい、プライベートモカverのモカ姐さんの姿こそが、魔法少女としての真の姿のようです。

 鮮麗に咲く真っ赤な木瓜(ボケ)の花と、綺麗に割けた黄金の木瓜(きうり)の断面が、獣人仕立ての着物を剥ぎ取り、魔法少女の衣装へと置き換わっていきます。



「衣装の意匠は木瓜(もっか)、花言葉は『早熟』。本の表紙は御簾(みす)帽額(もこう)。ああ、私が私こそがこの国を。尾長(ヘビ)帝国は天魔王(ナーガ)のための筆頭魔法少女、フォーミュラ木瓜(モッカ)、どうぞ」



 クソボケも


 草木瓜(くさぼけ)


 一緒くただね


 初花に


 このみはさいて


 甘くかじつて



「衣装の意匠は月桂樹。花言葉は『裏切り』。

 (スマートホン)表紙(待ち受け)は畳。死ぬ時はお布団の上で死にたいですねぇ。至福(マカローン)ロールリエ、参ります」


 ああこれは なんとも甘美 ゲッケイジュ

 被ってよし

 煮詰めてよし



「衣装の意匠は彼岸花ぁ。花言葉は『独立』。本の表紙は刑場!親父の死に様を忘れねぇ。死人花(しびとばな)ジーパングッド、参る!」


 悲願とは 掛詞だぜ ヒガンバナ

 僻んでるのは

 内緒なんだぜ



「衣装の意匠は天竺葵(ゼラニウム)。花言葉は『真の友情』と『偽り』。本の表紙は村祭り。手品芸(ジャグリング)をまたみたい。巌窟王ケイブオブゴッドホープ、推参」


 紅白の チカチカ映る ゼラニウム

 この手に持つは

 お花か銃か


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