神様だから崇めよソウルメイツ4!
夢の中での柴犬は龍帝の筆頭家老にして直系差し置いての喪主。昼は龍帝の側で額付き、夜は遺影の下に泣きつく。夢の中だから、生死の矛盾にも頓着してない。
「む、貴様、鱗模様が龍帝陛下に似すぎている。不敬だぞ。説教してやる。今晩寝所にくるように」
それぞれがそれぞれなりに陛下のことを引き摺っていた。現実でも柴犬は小姓や御伽衆を、賜姓された庶流から引っ張ってきていた。日が翳る金枝玉葉への、ささやかな奉公だったのだろう。
「もう、柴犬はボクより全然オトナなのに、甘えん坊さんだな。ほら、入ってきて良いよ。あ、お布団の中、までだよ?」
「くぅーん、似すぎ似すぎ、くぅーんくぅーん」
……これ、夢の中だからだよな?現実でもやってないよね?
「千代古殿。お世継ぎもずいぶん大きくなられたようで」
かつての、種族身分を越えた親友、七尾持つ
狐獣人梅鉢千代古殿の夢は、いつ訪れても穏やかだった。庭に雪が積もり、質素な執務室に小さな火鉢。夢の中で昔のように膝を突き合わせ、米菓子をパクつく。
「うんそうねんてー。ほんでもうちのアンカがやっと三尾め生えて来て痛て痛てどんならんちんいうて、もう四尾のオッサマがだじゃかんやっちゃってぇほんときかん子やわー」
「チョコ殿、その、言葉が」
「ああ、黒龍おったらぁ言葉うつってモートルゲンテ~」
「そ、それは、良く統治されておいででなにより」
あんなにカッコよかった同期が、雪国に閉じ籠り完全に所帯染みて!陛下の覇道はどうした!お前が!御家を引っ張って行くくらいの気概があれば!独立とは聞こえが良いが実際は引きこもっているだけだ!二ヶ国抱えてやることが帳簿管理!賄い方にやらせろ!世界平和はどうした!
「実際見るのは初めてぶひか?ほら、ご覧のとおり、選りすぐりの愚鈍で汚穢な豚獣人が、糞尿と御前とを交互に食う、噂通りの極刑ぶひよ。何と!陛下のご恩情により!今日は陛下の樋箱よりの預かり物と一緒に食べて貰えるぶひよ!ぶひゃひゃひゃひゃ!御前も!御前も!御前も御前も!豚刑に処してやるぶひ!……苦しみ抜いて死ね不忠者ども」
狂った振る舞いでは隠しきれぬ理知の瞳。桔梗姫橘は名前負けする醜い巨躯を揺らし処刑していく。龍帝を殺しておいて、未だに家臣の頃を夢見ている。
なぜお前ほどの男が陛下を裏切ったのだ。
私の可愛いシダレモモが契約したモンスター、《シェイプシフト》のスキルによって他人の夢を介し、床に臥しながらに各地を巡ることが出来ていた。
誰も彼も、志を継ぐ気がない。私がやらなければ。
「呪文の開発者にして呪印の専門家。多才で羨ましいよ。ところで呪印の形、名前が木瓜だから木瓜紋にしたのかい?しかもそれを、御簾やら何やら、ご主人様の持ち物に縫い付け貼りまくって。あの糊で貼り付けるタイプの簡易呪印、《粘着質》と名付けるのはどうかな?ダブルミーニングでさ。御簾の帽額のような、高貴さの些細な担保になりたくて御簾の帽額なんて集会名にしたのかい?浅ましい、おっと、慎ましいことだ」
「うちの民を、拾い上げてくれてありがとう。ヴォイン」
別の夢主が飛び込み、世界が入れ替わる。
姿こそ、《未来視の魔女》All-round &Undergroundだが、中身は女郎花の元領主だな。彼も、人間でさえなければ、天下を託せたものを。
「ハイエナの巫女とお前の混ざりっ子、貰う約束だったじゃないか。何で邪魔をする。もう死んでるくせに」
「今の私は全盛期なんだ。判断を誤ることはないよ。君も老いたなフォーミュラ木瓜。…魔法少女キャンセラーver.2.0」
夢の中で、夢の中だからこそそれを生み出すか!消えていく。契約モンスターの顕現も、魔法少女の魔法も!
「魔法とは素晴らしいなモッカ!これが君の見ていた世界か!だがもう夢を見るのは終わりだよ」
皆、目が覚めてしまう。私も含めて。早く、早く向かわねば!
シダレモモ、梟臭の城へ!古代技術の体を手に入れるのだ!私が、私こそが!




