神様だから崇めよソウルメイツ3!
目を覚ます。袖に張り付ていたテントウムシが蹌踉い飛び立つ様を、寝惚けながらみつめる。この虫も眠っていた?ざぁ、と鳴る葉擦れが、まるで木が呼吸を再開した音のように感じました。眠っていた。人も虫も木も。
「おはよう。スキルを切られた。こちらから踏み込んで叩き切ってやろうとしたんだけど、それは嫌らしい。ダメージが現実にも反映されるタイプなのかな」
向かい側に師匠が座る、ここは、幌馬車?砂糖卸の武装商人さんに連れられて、三途河国のオミナエシ領から抜け出した山道に、なぜ今いる?もしや、
「一時間も経っていません!この三日間は全部夢です!」
魔法少女が持つ契約の魔導書、薄い本を開き、日付を確認して驚く。獣人兵に扮した魔法少女たちの襲撃も、山中の一夜城による敵対魔法少女たちとの団体戦も、梟臭城での斬首作戦も、全ては夢だった?師匠の茄子色!!
「流石はプリンセス階級。少なく見積っても、この山から梟臭城まで一帯の生き物全てを眠らせた。とてつもない規模の魔法を使うね」
隊商のメンバーも次々起き出しては状況を把握。武装を整えている最中のようです。
「千日紅先生。しばしお待ちを。荷を棄てて騎馬を組織します」
「そうだね。敵は梟臭の城を獲ってる。今度こそ瓦礫にしてあげよう」
武装商人さんが、幌越しに師匠へ報告に来ました。影を見るに、踊り子風衣装に身を包む皇孫珊瑚蛇さんを伴って後方のこの馬車まで伺いにいらしたようです。
身分が割れている現状でも、師匠に対するこの敬意の表れ様。一番弟子の私が霞んでしまうじゃないですか!
「ふむ。視える範囲……深度?彩度?上がってるな。先達に触発されたのかな」
師匠の独り言。おそらく、私を魔女として弟子にした影響でその《未来視》の魔法の威力が増した事を不思議に思っているのでしょう。気付かれていないようです。私に魔女としての力を授けたのは、師匠の体を一時的に借りた女郎花の元領主の采配でしたので。
「梟臭城、地下に何かあるね?珊瑚蛇は知ってる?」
「守れないなら壊せ、とだけ」
「ああ、だから瓦礫と視たのか」
師匠は珊瑚蛇さんに髪を整えて貰いながら、陣中食と生のキュウリを交互に齧り、地図を目に焼き付け、戦支度を次々済ませていきました。
まだ鼻先で奥ゆかしく香るコーヒーの臭いに顔をしかめつつ、私も地図を薄い本の写真機能で保存。西瓜を小間切れにしたりシャーベットにしたり四苦八苦しながら、お腹を満たしました。
「おや、覚えの早い子だ」
混ざりもの師匠に頭を撫でられる。ぐぅぅ。複雑!




