神業だけどその7!!
「モカ姐さん、どうしたのですか桜木の下で黄昏て」
白昼夢みたいな千日紅・オミナエシモード・師匠との密談後、他の皆様に倣って私も夜逃げの支度をしていたのですが、庭園の隅に座り込むプライベートモカ・獣人従者モード・姐さんをお見かけしてこうしてお声かけしているわけですね!
「この桜、我輩が植えたのだぞよ。まだまだ、尾長は衰えず、むしろますます栄えていくのだと」
青々と葉をつけた桜の木を見上げながら、モカ姐さんが嘆いています。大きな木ですね。他所から植え替えたのなら、人手も専門家も大勢動かしたのでしょう。財力と権力の誇示にうってつけの派手な事業だったのでしょうね。
……植え替えの魔法、後で聞き出さないといけませんね。薄い本内の図鑑埋めが捗りそうです。
「どうしてこうなったんじゃろ。柴犬に千代古殿、馬鹿の笹々に裏切り者の桔梗だって。あの頃は、金はないけど夢でいっぱいだったのに」
「思い出の品だけでも包まないと、時間切れで更地になってしまいますよ。気をしっかり。まだ人生はつづくのですから」
「ははは。そうじゃな。まだ、まだまだつづくさ」
少しは気が紛れたでしょうか?モカ姐さんは、魔法少女サークル御簾の帽額の暗殺者魔法少女夏都シダレモモさんを打ち負かした強力な味方ですので、ベストコンディションで今後も活躍していただきたいのですが。
ゴーン ゴーン
「あ、鐘が鳴りましたよ!時間!茶器が!師匠の茄子色が!モカ姐さんも急いで物色してくださいね!」
皇孫珊瑚蛇さまから言質をとってて手間取りましたね!あの茄子色の名器は師匠に良く似合う。
この梟臭の城に集められた伝来国宝の類いは皆、曰くに血塗られもはや帝室に納められないほど《貶められた》ものばかりらしいのです。お外で梟首になってる元城主柴舟雁金さまが、そんなかつての名物たちを憐れんで収集していたようでした。
師匠の魔法でこのまま土に還すくらいなら、いと徳高き魔法少女の普段使いにしたほうが、旧国宝たちも報われるというもの。これは、浄財。浄財なのです。貶められた龍帝の権威と国宝、両方を偉大な千日紅師匠が浄化してやろうというのです。
ふふふ。薄い本の書架を悪用すれば結構な量の生活用品を収納可能なことはピクシー部啓示板先輩方の叡智で確認済み。
私が、私こそが魔法少女衆千日紅派開祖、五月女乙女です!!




