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オトメチカ  作者: 感 嘆詩
第2章 延胡索
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神業だけどその5!!

モカじゃないよ木瓜(もっか)だよ

キュウリじゃないよ木瓜(きうり)だよ

クソボケじゃないよ草木瓜(くさぼけ)だよ

 庭園にポツンと佇む草庵(パビリオン)内の茶室へ招かれ、武装商人さんしか居ないなら獣人の変装を解こう、と思ったら小さいお客さんも一緒に居て、誰何すれば皇孫殿下でした!つるつるぷにぷにして可愛いですね!蛇の獣人のお子さんは!



「無作法、ご容赦あれ。外では人の目がありましたので」


「おじいちゃんにはいつも感謝してるよ。気にしてない。その子は?」


「あいや先生、」


「砂糖市の座頭殿。気遣い無用。名ばかりの正統後継だ。フランクに行こう。余が珊瑚蛇(コーラルコブラ)である」


「お気遣いどうも。(Coroar)(A)(Obra)?立派な名前だね」


「素敵な聞き間違え。ありがと。余への讃歌(コラール)と受け取るよ」



 殿下にさえ尊重される座頭殿こと武装商人さんにさえ下にも置かぬ振る舞いで遇される千日紅(ちかく)師匠さすがです!そして両方に気を揉んでたじたじの武装商人さん旨あじ!



御簾の帽額(カーテンヴァランス)尾長帝国(我が国)出身の魔法少女集団に命を狙われている。千日紅殿、余のボディーガードをしてくれないか」


「ああ、なるほど。承った。今日中にこの城は放棄するよ」


「かしこまりました先生。精鋭だけ集めて、残りは離散させます」


「早いね。余が口を挟んでも、余計なロスが増えるだけかな?」


「そうだね。戦いやすい山とか近場に無い?それは教えて欲しいかな」


「ちょっと待つのじゃ」



 皇孫殿下がお城について1時間もしない内に夜逃げの算段。私も、師匠のお世話に使える小物を城の各所から集める計画を脳内で立てていると、となりに座っていたプライベートモカ(獣人ver)さんが立ち上がり抗議の声を上げました。



「どうしました御付きのレディ。美しい毛並みの君。余も名前の通りのこの珊瑚色が自慢だが、貴女の赤を前にしては霞みますね。冬に咲く木瓜(モッカ)の花のような、鮮やかな赤色だ」



 さすが皇族です。息をするように口説いてます!主君の会話を妨げる無礼に対して、やんわり軌道を反らすお心遣い。貴種の鑑ですね!



「ご、御前(ごぜん)で取り乱しました。しかし、伝統ある梟臭(きょうしゅ)の城を放棄するなぞ、また恩知らずに奪われては権威が落ちます」


「奪わせないよモカ姐。瓦礫にするから」


「な」



 主筋に粗相をしたからかそれとも口説かれたからか、顔を赤らめていたモカ姐さんが瞬時に青ざめました。



「千日紅殿には先々が視えているようだな。権威は既に地に落ちて、実力なぞ地の底だ。座頭殿に千日紅殿、力のあるもの達の言葉に従うよ」


「あの柴舟雁金を討ち取って、この城を取り戻しました!一族発祥の地を!殿下の徳の賜物です」


「ありがとうレディ。しかしその徳で次に相対するは黒龍(クリカーラ)の梅鉢千代古(チョコ)殿か、金華(ギフト)桔梗(ベルフラウ)姫橘(コンコート)になるかな。もしかしたら昔の盟友、女郎花(オミナエシ)の新領主殿が箔付けに獲りにくるかもね。弱小の余ではな」


「その為に無傷で手に入れたのではないですか!城も人も!」


「シュ、シュ、シュ、シュ。おっと失礼。しかしそれは甘い夢というものです。木瓜(モッカ)の花の君よ」


「そんなに誰も言うこと聞かないのかい?龍帝の孫なんだろう」


「龍帝の孫だからさ千日紅殿。独立した彼らは、偉大な龍帝に仕えてきた偉大な家臣団だ。だった。いや、まだ家臣のつもりなんだ。余など、とても後継と認められないのよ」


「我こそは、龍の後継(ドラキュラ)なり」


「そうさ千日紅殿。本物の龍の子(ちちうえ)龍帝(おじいさま)と共に死んだ。みんなみんな、良い歳をして子どもに成り代わりたいんだよ。誉めて貰いたいんだ。偉大(グランド)龍帝(パパ)に」


「じゃあ今は、龍の裔(末っ子)に親の愛を奪われて拗ねているのかな?」


「シュシュシュシュシュ。千日紅殿は男心を把握しておられる。幾つになっても餓鬼なのです。そういう性分なのでしょう。特に我が家の旧臣(余のおっきな兄)たちは」


 

 また、何だか師匠に雑味、いえ、余計な深味が!コーヒーのような!軌道修正せねば、いや烏滸がましい!と葛藤して悶々としていると、隣で座り直したモカ姐さん(獣人ver)の青い顔が視界に入りました。俯き汗を掻き、具合が悪そうです。



「木瓜の花の君。お加減が宜しくないようだ。ご安心ください。ほんの数日の辛抱です」


「……殿下、それは、どういう」


御簾の帽額(カーテンヴァランス)の首魁、龍帝の賄い方だった魔法少女はいま、危篤の身である。あの集団が瓦解してくれれば、余にもやりようがあるのです」


「……ならば、何としても、生きねばなりませんね」


「ええ。精々、生きねばなりません。木瓜の花の君よ」

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