神業だけどその4!!
「自分で殺しておいて泣くのかい?」
「御前はまだ子供ゆえわからんだろうがな。敵対してもな、長年の情は消えんよ。師匠なのじゃ」
千日紅師匠なりの慰めなのでしょう。明朝、梟臭城にて梟首獄門にかけた柴舟雁金の前で、泣きじゃくるプライベートモカさんと師匠のやり取りに、私も貰い泣きです。それはそれとして、モカ姐さんが作ってくれたお煎餅、生姜と砂糖が染みてて美味しいです。
「柴犬殿が好きな菓子なのじゃ。弔いにな」
「もしゃもしゃ。首晒しといて。モカ姐、矛盾してるぜ」
「矛盾してて何が悪いか。さあ、皇孫殿下が急ぎ来る。迎え入れる準備をせねばな」
弱小なりとも皇族の振る舞い。獣人の国こと尾長帝国は龍帝の嫡孫が、伝来と思しき御輿にて昼、厳かに入城されました。むむ!その列から逸れて、豪奢な装いの偉丈夫が門前の師匠の元へ近づいて来ます。松明に焼かれし蛾め!それは私の灯りだゾ!
「急に何で切れてるの?飛び出さないで。私や乙女さんを気取られたら遣りづらいの」
一人称我輩を止めての制止に私も我に返りました。
そうでした。現在、私こと五月女乙女とモカ姐さんことプライベートモカさんは獣人の娘に変装中なのでした。
男所帯の城内で、千日紅師匠の世話を仰せつかった端女の演技をしているのです!何故かって?私、そこそこ良いところの出なので、顔バレしてややこしい事になりかねないからです!
え?三途河国では変装とかしてなかったじゃないかって?そうです!千日紅師匠の一人称視点だと全然触れてなかっただけで、ちゃんと向こうでも一悶着ありました!ケモ奈さんたちと武装商人さんの別荘に避難してたときとか、バレたせいで実家並の上等なお仕着せ戴いてましたからね!恥ずかしい!
「それにしても、体臭さえ獣人に変えられるのでしょう?モカ姐さんの魔法、凄いですね!私も再現できる類いのものですか?」
「ん?ああー。召喚モンスターの能力なのじゃ。魔法で再現は、難しいぞよ」
「難しい、ですか?不可能ではなく」
「んふふ。魔法少女の魔法、御前が思っているより奥深いぞよ。呪文、呪具、呪法。この3つが主な」
「流石は千日紅先生。3日を経ず逆襲、一城を落とされたか」
「おじいちゃん。そっちに合流してたんだね」
なんと!遠目で若い偉丈夫と見た馬上の人は、砂糖卸諸類群の武装商人さんでした!山道で襲撃を受けて離散して以降、彼の一団は皇族の軍勢に身を寄せていた様です。流石は国を跨いだ大商人。オーラすら若々しいとは、格が違いますね!
「聞いとる?我輩の話」
「先生、お疲れでしょう。後で庭園の草庵へご案内します。お茶を召し上がれ」
「お茶菓子は?」
「もちろん、運んでおきます。そちらの側つきのお嬢さん方も、是非」
「「「わーい」」」
朝はお菓子、昼もお菓子!何だか悪い子になった気分です!




