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オトメチカ  作者: 感 嘆詩
第1章 千日紅
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虐殺者と復讐者

「かぁん…」



 バキン、と、召喚モンスターガムシャラのクチバシが、剣の切っ先をへし折った。本当は領主様の手首を狙ったのだが、剣一本分、間合いをずらされた。凄まじい技量だな領主様。


 現HPが低いほど威力を増すスキル、一目眼(ルガール・ガン)で一矢報いたガムシャラは、存在を保てなくなり完全に消えた。

 同様に、魔法少女キャンセラーver.2.0の効果により崩れ消えてく摩天楼。粉々になる足場から、飛び石を遊んで渡る子供の様に、跳ね降りてく私と領主様。いや、私は子供だけども。



「ふむ?君は、」



 二人して跳ねながら、領主城裏門の外側に着地する。一瞬、日光が影に隠れた。上空で鳥が羽ばたいているのだろう。獣人たちや近習からだいぶ離れたな。



「君はもしかして、」



 領主様は、細かい瓦礫をマントで払いながら接近。剣を振ってきた。切っ先が無い分、だいぶマシか。ガムシャラの居なくなった只の杖で、剣の軌道を反らす。反らす。視えてても、少し誤るだけで杖ごと袈裟斬りに成りかねない。

 何でこんな優秀なのに人って狂うんだろう。この人だって、子供の頃はあんなに(こんなに)純粋だったのに。大人になるって大変な事なんだろうな。私もいずれ、遠くない将来(・・・・・・)にああなるのか。



「ああ、やはり、君、何か(・・)魔法を使えているね?何故」


「魔法少女キャンセラーはね、字のとおり、魔法少女の魔法をキャンセルするアイテムなんだよ」



 何しろ私、あの子には教えてないからね。



「そして魔法少女はね、魔法の存在を心底信じてた少女しかなれないの。つまり、絵本の世界に憧れていた純粋な女の子か」


「存在することを知っていた、最初から魔法が使えた(・・・)女の子か」



 頭が良い。



「私、純粋な女の子だったように見える?」


「レディをネガティブに評するのは、紳士の矜持に悖る、かな」



 むう。それじゃ頷いているのと変わらなくない?



「無級の魔法少女森田千日紅、改めまして、『未来視の魔女』皆殺しのチカちゃんです。どうぞよろしくさようなら」



 頭が良い。こちらに何かされる前に、と領主様が猛ラッシュを仕掛けてきた。

 私は、杖を砕かれながら、シンキローが消えた為に密閉出来なくなった小袋、用意していた搦め手、を取り出し領主様に投げつける。

 警戒し、弾き飛ばすことすらせず小袋から距離を取る領主様。結びがほどけ、中の粉末が散らばる。



「スパイス……いや、抹香?」


「正解だよ。モンスターが大好きなお香なんだ」



 この土地に来るとき、行商のおじいちゃんにお願いして運んでもらった《積み荷(ブツ)》だ。効果が効果なので、厳重に封をして運んでいた為に、金目の物と勘違いした雇われの人が中を開けてしまって、モンスターの襲撃が起きたらしい。



「さて、私の魔女としての魔法《未来視》は、実のところ皆殺しには余り向いてないんだ」



 得体の知れない小袋を警戒し、距離を取ったのは賢明な判断だ。この場合は無意味だが。お香は合図なのだ。彼女には私の臭いを覚えさせている。だから、この場にいる私以外の誰かがターゲットだと、彼女は確信した。


 ォォォ……


「原因まではわからなかったけど、召喚魔法すら使えなくなった所は視えていたからね。別の手段を用意した」


 オォォォ……ッ


「何の音…上!」



 鎖が千切れ飛び、ハーピィ007、と刻印されたタグが宙を舞った。かつて《視た》光景だ。

 剣に、その豊満な胸を貫かれても気にせず。

 白濁した目をかっぴらき。



「オォミナエシィィッ!!」



 特別降下隊ハーピィ007。《使い魔の魔女》の哀れな弟子たちの挺身部隊。その最後の生き残りが、仲間たちの復讐を今、果たした。

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