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レアモンスター?それ、ただの害虫ですよ ~知らぬ間にダンジョン化した自宅での日常生活が配信されてバズったんですが~【コミック三巻発売!】  作者: 御手々ぽんた
第二部 胎動

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久しぶりの学校

「あ、ユウト」

「おはよう早川。どうした?」


 久しぶりの学校。早川がいつもと変わらぬ感じで話しかけてくる。

 俺も努めて何気ない風に返事をする。


 ただ、思わず早川から見えないところで、俺はぎゅっと片手を握りこんでしまう。こちらを見つめる早川の瞳を見つめ返していると、思い出してしまいそうになったのだ。

 指先に感じた、温かく湿った感触を。


「これこれ! 見た? 花鳥風月!」


 そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、スマホの画面を見せてくる早川。

 そこには、黒い袴に上半身に鎧をつけた女性の動画チャンネルが表示されていた。


「──おぼろ?」

「うん? 何か言ったユウト?」

「いや、ごめん。何でもない」


 俺は自分でも何でおぼろなんて呟いたのかわからずに早川に答える。


「この人、花鳥風月さん! すごいよね! 彗星のように現れて、あっという間にヨンナナのスタンピードの主の七割以上を倒したんだって!」


 ずいっと、身を寄せて興奮気味に話している早川。前言撤回だ。それは本当にいつもの早川だった。

 俺は内心、安堵と、どこかほんの少しだけ残念な気持ちを押し隠して応える。


「まあ、落ち着け」


 俺はそう早川をなだめながら、なんとなく教室を見回す。すると、そこかしこで同じような話をしている様子だ。


「というか、何でそんなにユウトは落ち着いてるの!?」


 逆に驚かれて、さらに身を寄せて捲し立てるように、その興奮を伝えてくる早川。いろいろ当たりそうだ。


「あっという間にチャンネル登録者数が百万人を越えて、今、ダンジョン配信者で国内一位なんだよ! 花鳥風月さん!」

「花鳥風月さん、何でもダンジョン公社所属らしいよ! すごいよね。私も将来はダンジョン配信者やりながらダンジョン公社所属の探索者を目指そうかなー」

「めちゃくちゃ格好いいよね。強さも人並み外れているみたいだけど、何より立ち振舞いも話し方も武者って感じがするし。本当に、もう、凛々し過ぎない?!」


 止まらない早川の賛辞の言葉。


「わかったわかったって」


 俺は目の前の早川の両肩に手を置いて、そっとその体を離してから、ささやくように告げる。


「──早川、良かったな」

「えっ……あっ。うん」


 俺が何を言いたかったのかはどうやら伝わったようだ。急にトーンダウンする早川。一度うつむき、しかし顔をあげて俺の方を向いた時は笑顔を浮かべていた。

 俺にはそれは心からのものに、見えた。




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