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sideクロ2?

「カカカッ! よかろう、クロよ。そなたの提案にのろうではないか!」


 高らかに笑ってそう告げるオボロ。私の提案が受け入れられる可能性が高いことは計算ずみです。

 オボロもユウト様の体を使うこと自体への懸念を抱いているという私の推測。それが当たりのようでした。


 前回オボロが威圧して私に膝をつかせたタイミング。その直前の私の指摘が、オボロにとって癇に触ったゆえの威圧だったのでしょう。


「ありがとうございます。オボロ様であれば受けてくださると思っていました」

「ふん、小生意気な影だ。それで、具体的にはどうするのだ?」


 忌々しげにこちらを睨みながら告げるオボロ。


「いま、私の体の制御プロトコルの暗号キーをお渡しいたします」

「ふん。まどろっこしいの」


 私はオボロにばれないように演算領域内にブラックボックス化した隔離スペースを作成すると、自分自身を圧縮してから、オボロへと鍵を手渡します。


 次の瞬間、私がオボロと対峙していた演算領域が弾け飛びます。


 活動を停止していく私が最後に見えたのは、ユウト様の穏やかな寝顔でした。


(side 目黒のばっちゃん)


「ありあちゃん。こりゃ想定外だわさ。わしからの提案は白紙だの」

「えっ、ばっちゃん! 何が起きてるのです!?」


 黒1ダンジョンの外縁部。茂みの中にあぐらをかいて座る目黒詠唱(ありあ)とそのばっちゃん。

 ばっちゃんは両手を輪っかにして、じーとユウトの家を観察していた。


「わしが見えている限りじゃとクロっちゅうドローンがオボロに体を明け渡したようじゃね。オボロが受肉しはじめちょる」

「か、介入の要請……」

「あー。やめとけやめとけ。ありあちゃんもまどかちゃんも、無駄死にになる。ユウトの体でパクックマ仮面になったときよりは数段力を落としとるように見えるがの。やっぱり強さは人外じゃな。あれは」

「どうするのです!? ばっちゃん!」

「そうさの。ちょっくらお茶にでも誘ってみるかの?」

「え! お茶?」

「そうさ。クロもオボロも肉の体の長期的な扱いは初めてのはずさね。そこら辺をゆっくりと話してあげんとね。お隣さんとしてな」

「危なくないです?」

「半々かのー。ただ、ここでわしが殺されるようであれば、もうオボロは歯止めが効かん存在っちゅうことじゃ。さあ、ありあちゃんはまどかちゃんたちとお茶の準備を頼むぞ。目黒の氏族、最高の一服にするぞえ」

「でも、ばっちゃん。茶室がないです」

「心じゃよ。心。誠心誠意のおもてなしじゃ。ほら」


 そういってばっちゃんが軽く孫を撫でる。

 いとおしむように。

 まるで名残を惜しむように。


 しかしすぐに背を向けるとばっちゃんはひょこひょことユウトの家へ向かって歩きだしたのだった。

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