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side 緑川 8

「ふぁ、なに、コード、ブラック……!?」


 深夜のダンジョン公社支部に最大級の警報が響く。その音で叩き起こされた緑川が、寝ぼけた頭で呟く。

 上半身をベッドの上で起こすと、疲労で霞のかかった頭を無理やり振るって意識を覚醒させようとする。


 枕元で寝ていたヴァイスが見かねたようにピョンとジャンプして緑川の肩に乗ると、ちろっと緑川の頬を一舐めする。


 それは久しぶりのヴァイスからの癒し。


 緑川の意識が一気に鮮明になる。


 肩のヴァイスをそっと持ち上げて、緑川はベッドへと下ろす。手のひらに感じられるヴァイスの呼気が少し荒くなり始めている。


「ヴァイス、ごめん。ありがとう。少しでも寝ててね」


 その艶やかな真っ白な毛並みをひとなですると緑川は地下の対策室へと走る。


「な、何が起きた! 緑川」


 後方から加藤も走ってくる。


「不明っ! 夕方に物資の補給でユウト君の家を訪ねた際にはいつも通りでした」


 二人よりはやく自分のPCの席についていた目黒がこちらを向く。

 いつもは編み込んでいる髪が、何も手入れする間もなく来たのだろう。爆発したようにボサボサだ。


「未確定情報ですっ。スタンピード、二つ終結しましたですっ!」


 そのボンバーヘッドな目黒から告げられた、言葉が素直に頭に入ってこない。


「っ! どこのダンジョンだ」

「橙3と、緑12です!」

「──どちらも近い。確か緑12は爬虫類系のモンスターばかり出ることで有名なダンジョンよね」

「そうです。そして、どちらも投棄県です」

「目黒、その単語は使用を許されていないわ」

「あ、失礼しましたです。防衛対象外の県、です」

「この警報の出所は?」


 自分のPCの前に座り込むと目黒に問いかける加藤。


「某掲示板の書き込みです。ネットの書き込み情報を抽出していた監視AIが検知しましたです。URL、共有しましたです」


 緑川もディスプレイに表示されたその書き込みに目を通す。


「どういうことだ! クロからはなんの連絡もないのか?」

「DMも一切、返信ありませんです」

「加藤先輩。本社からは、本件の対応にさくリソースはなしっ」


 ぎゅっと拳を握りしめ、一度言葉を切る緑川。しかしすぐに続ける。


「まずは直接確認するしかありません。私、ユウト君の家に行ってきます」

「──政府要請で本社は首都防衛に専任してるからな。監視の削減が響いちまったな。……わかった、俺もいく。30秒後に玄関だ」

「了解。目黒、ここお願い」


 走りながら目黒に告げると、緑川と加藤は装備を整えに自室へと走る。


 ◇◆


「チャイムの応答はなしだ」

「玄関の鍵はしまってます」


 ユウト君の家の前に佇む加藤と緑川。

 そのままぐるりと家の周りを移動する。


 ベランダが見えてくる。

 そこで霊草をクロからお裾分けされていたので、二人とも作りはよく把握していた。


「加藤先輩、窓が開いています」

「ああ。慎重に踏み込むぞ。声掛けを忘れるなよ。よき隣人としてな」

「ええ、もちろん」


 ベランダから窓を通って室内へと侵入する二人。


「ユウト君ー。こんばんはー。緑川です」

「ユウトー。大丈夫かー?」


 家の中から返事は無い。


「クロさんも出てこない、わ。やっぱり」

「予断は禁物だ。いこう」


 室内をゆっくりと進む。

 やがてユウトの部屋が見えてくる。ドアが開けっ放しだ。


「ユウト君?」

「いや、あれは──」


 そこには床に土下座したままのクロのホログラムがあった。




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― 新着の感想 ―
[良い点] クロさんずっと土下座!?
[良い点] 最初は単に主人公と周りのギャップ、勘違いを楽しむコメディタッチの作品かと思って楽しんで読んでいましたが、新章に入ってからはシリアスな奥深さが出てきて、作品に入り込んでしまいます。
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