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side 緑川 3

 ユウトのものらしき魔素に包まれた次の瞬間、緑川は気がつけば真っ白な空間にいた。


「ここは……?」

「ようこそ」

「っ!」


 背後をふりかえると、そこには一人の女性がいた。

 その面立ちは、クロや早川とどこか似ている。


「貴女は、どなたかしら」


 警戒感をできるだけ表に出さないように、穏やかに問いかける緑川。


「私は『進化律』。その写し身の一。許諾を授けるもの。あなたの手にした、その可能性により現れました」


 そういって、『進化律』と名乗った女性は緑川の手を指差す。その指差す先は、ユウトからもらった、しおり。


「さあ、選択を。『万象の書』です。許諾を求める頁に、しおりを」


 そういって両手の平を合わせる『進化律』。すると次の瞬間、緑川の目の前に一冊の本が浮かんでいた。


「これは?」

「あなたが許諾を得られる項が開きます。さあ。時は有限。可能性が消え去る前に」


 警戒をしながらも、急いで目の前に浮かんだ本を手に取る緑川。


 緑川からすれば、その話す内容の真偽も、名乗った名すらも本物かは定かではない。しかし相手が、圧倒的な存在であるのは、間違いない。

 もし害意があるのなら、こんなまどろっこしい事をせずに、すぐにでも自分を殺せる存在なのだとわかってしまう。


 ──であるなら、ここは言うとおりにするのがベスト。『進化律』か。彼女が私に『不運』をくれた存在、なのかしら?


 手にした本をめくろうとしながら、そんなことを考える緑川。


「……二ページしか開くところがないわ」

「それが、あなたの可能性です」

「──いやな可能性ね」


 一つめは武具だ。ハルバードのように見える絵が書かれている。ページに説明は一切なし。ただ緑川は探索者時代もハルバードを使ったことがなかった。


 ──言うことを信じるなら、この武具を選ぶことで、今後、戦いに身を置く可能性が高まる気がする。……それは、果たして良き隣人といえるかしら。


 そしてもう一つのページ。そこには、真っ白な子猫の絵が描かれていた。アメジスト色の瞳が美しい。


 ──ただの猫、とは到底、思えない。でもまあ、こっちの方が良き隣人っぽいわね。


 緑川は手にしたしおりをそのページに挟むと本を閉じる。


「選択されしは、『やみ猫』。その存在はあなたの疲労を吸いとり、肩代わりしてくれる。しかし気をつけなさい。蓄積させ過ぎた疲労は『やみ猫』を病ませ、やがて死なすでしょう。あなたの選択に許諾を」


『進化律』が再び手を合わせる。すると、本から光が溢れだす。

 眩しさにとっさに目を閉じる緑川。


 次の瞬間、緑川は元いた会議の場に戻っていた。

 その腕に、真っ白な子猫を抱いて。

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― 新着の感想 ―
つまり今後はぬこたんが死なないように疲れることすら許されなくなったわけか 殺しにきてるな
新手の拷問かな
[一言] おお、いいものを貰ったね(//▽//) 大事にしないとね
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