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お礼の品

 ナメクジ騒動から数日後、俺はクロに相談して用意したお礼の品を前に首を傾げていた。


「ねえ、クロ。本当にお礼の品ってこういうのでいいの?」


 テーブルの上にあるのはまず二通の封筒。


 目黒さんと目黒さんの友人宛のお礼状だ。内容はほぼクロが調べてくれた定型文。一応、直筆だ。


 ただ、目黒さん宛の方だけ、今回のご助力のお礼に、何か困った際は一度だけ、できる範囲でお手伝いすると、一文が付け加えてある。


 クロに言われるがままに付け加えたのだが、何となくお礼状に書くにはふさわしくなさそうな内容なのが、気になっていた。


 ──まるで子供が発行するお手伝い券、みたいだよな。


 その横に並べてあるのは四枚の押し花のしおりだ。

 簡単に俺でも作れて、貰っても邪魔にならないだろうとクロに言われて、作ってみた。

 庭に咲いていた花を本に挟んで押し花にして、牛乳パックだった厚紙にアイロンで貼りつけてある。


 押し花にした花はたぶん、カラスノエンドウだ。庭に咲いていた中で、比較的押し花にしやすそうだったのだ。


 クロが花言葉も無難だろうと言っていたので、問題ないはず。

 俺はそれらをまとめると、お隣へと向かった。


 ◇◆


「これは、大丈夫なやつか」

「全然、全く、大丈夫じゃないです」


 加藤が目黒に確認する。返事はある意味、そうだろうなと思った通りだ。

 ようやくダンジョン公社本社地下でのお勤めが終わって出てきたばかりの加藤。そして目黒の二人しか今ダンジョン公社支部にいなかったのだ。

 ユウトが訪ねてきたのが目黒宛だったので、そういう意味ではちょうどよかったと言える。


 ちなみに緑川は回収した黒1ダンジョン産のナメクジの死骸の対応で、ここ数日、関係各所を駆けずり回っているところだ。


「で、目黒の目だと、この手紙とこのしおり。どっちがヤバい?」

「手紙です。特にこの一文、直筆で書かれているお手伝いの部分。これ、扱いを間違うと、とんでもないことになるです……」


 手紙としおりを見つめ続ける目黒からは、だらだらと汗が垂れ流しになっている。

 拭く余裕すらないようだ。


「とりあえずしおり、一枚は加藤先輩にどうぞってユウト君が言っていましたです」

「これ、手に取ったらまた本社地下に逆戻り、とかないよな」

「……」


 無言の目黒。

 その可能性は、目黒にも否定しきれなかったのだ。

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― 新着の感想 ―
持ってるだけでリジェネがかかるとか、毒無効とかな
[一言] 比較的まし扱いのしおり。 比較対象が悪すぎなだけかなw
[一言] 知らない方が幸せ それならユウトの様にのほほんとしていられたのにね 胃が痛くて顔に出すと、さらに悩みの種が送られて来かねない
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